福島原発事故 安倍首相の「健康影響ないと約束」に批判  

◆「影響ないと約束」に批判
健康調査続く福島「知識もないのに無責任」
(2013年9月14日 河北新報)

 安倍晋三首相が東京五輪招致に当たり、東京電力福島第1原発事故による健康への影響について「今までも、現在も、将来も問題ないと約束する」と、ブエノスアイレスでの国際オリンピック委員会(IOC)総会で発言したことに対し、解明に取り組んでいる被ばく医療の専門家や、避難している県民から「知識もないのに無責任」と強い批判が出ている。

 「なぜそんな簡単に断言できるのか。私たちが信頼を得るのにどれだけ苦労しているのか、全然分かっていない」。福島県が全県民約205万人を対象に進めている「県民健康管理調査」の関係者は、いら立ちを隠せないように話した。

 1945年の広島・長崎の原爆による影響は、長年の研究の蓄積があり、被爆状況と病気の相関関係などが解明されている。それでも被爆者の子ども(被爆2世)への遺伝的影響など完全に分かっていないことも多く、68年たった今も放射線影響研究所(広島市、長崎市)など多くの専門機関が研究を続けている。

 原発事故は発生から2年半。原爆とは線量も違い、明確な影響が出た例はないとされているが、調査は福島県立医大に広島、長崎の専門家も加わり始まったばかりだ。

 甲状腺検査では18人が甲状腺がんと診断された。県立医大は「原発事故による影響ではない」との見方を示しているが、断定できているわけではない。

 チェルノブイリ原発事故後に現地で医療支援に携わった医師の菅谷昭・長野県松本市長も「テレビで見て、びっくりした。被ばくの影響は未解明で、約束できる性質のものではない。世界に大きな誤解を招く。この発言で安倍首相に被ばくの知識がないことが露呈した」と話す。

 福島県富岡町から栃木県那須塩原市に避難している女性(57)は「知識がないのか、状況を理解していないのか。いくら五輪が来てほしくても、何の根拠もない発言で首相として恥ずかしい」と非難した。高校2年の次女(17)は福島県の甲状腺検査を受けたが、安心できず、自費で定期的に検査を受けている。「離れた東京では、きっとそんなこと分からないんだろう」と皮肉った。

【安倍首相のIOC総会での発言】

「状況はコントロールされている。私たちは決して東京にダメージを与えるようなことを許したりしない」
(プレゼンテーション)

「汚染水による影響は、福島第1原発の港湾内の0.3km2範囲内の中で完全にブロックされている」
「健康問題については、今までも、現在も、そして将来も全く問題ないということを約束する」
(質疑応答)

安倍首相 「健康影響ないと約束」に批判 河北新報

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