77万テラベクレル放出、プルトニウム検出等について 小出裕章氏

「77万テラBq放出、テルル132、プルトニウム検出等について」
6月6日MBSラジオ「たね蒔きジャーナル」
京都大学原子炉実験所 小出裕章助教による解説
から抜粋

メインキャスター(以下「MC」):水野晶子さん
コメンテーター:平野幸夫・毎日新聞「ほっと兵庫」編集長

MC:まず、福島第一原発事故で放出されました放射性物質の量について
  伺いたいと思います。
  今日、ニュースでもお伝えしたのですけれども、
  これまでの放射性物質の量を、安全保安院が解析をしまして、
  結果を、今までとは違う数字を出して来ました。
  この数字が、驚くべき事に、倍になっているのですね。
  具体的に言いますと、37万テラBqと言っていたものを、
  77万テラBqに変えたという事です。
  37万テラBqから77万テラBqに変わるという事は、
  これ、どういう意味を持っていますか。

小出氏:もともと安全委員会は、確か63万テラBqと言っていたと思いますし、
  要するに、評価の仕方によってそんな数字はいくらでも
  変わってしまうという事だと思います。

MC:では、私達は何を信じたら良いのですか。

小出氏:解りませんけれども、私はたぶんもっとずっと多いと思います

MC:もっと多いと思われますか!
  それはどうした根拠からでしょう。

小出氏:例えば、海へ流出している放射性物質については、
  ほとんどまだ何も解らないまま流れて行ってしまっている
と思います。

MC:そういったものも、加算されてのこの数字では、
  今の所ないのですね。

小出氏:今回たぶん保安院が出したのは、
  海へ出たものを加算したものだと思いますけれども、
  たぶん保安院のものはまた過小評価だと私は思います

MC:しかしながら、この間出ていました37万テラBqという数字は、
  これをもとにして、この事故は、チェルノブイリと並ぶレベル7だと、
  いうふうに言われた根拠となった数字ではないのですか。

小出氏:チェルノブイリは、もっとずっと多かったです。
  37万よりはたぶん1桁多かったと思います。

MC:放射性物質の量は、チェルノブイリの方がもっと多いのですか。

平野氏:何か10分の1と言っていましたですよね。

小出氏:ですから、チェルノブイリに益々近付いているという事です。

MC:では、チェルノブイリの10分の1にしか過ぎないと思っていたら、
  この数字はこれから変わるやもしれないという事ですね。

小出氏:もちろんです。
  ですから、私は初めから、チェルノブイリは一応収束しているけれども、
福島原発の事故は現在進行中ですので、どんどんチェルノブイリに近付くし、それを超えてしまうかもしれない
、というふうに皆さんにお伝えして来たつもりでした。

平野氏:あと、先生が今おっしゃった、海洋汚染の放射線量というのは、これはまた解らないのですよね、まだ。

小出氏:そうです。

平野氏:これは、当初10日間で4か所を測定しているという発表が、
  今になって解ったのですけれども、
  今は何か政府は、海洋調査ポイントというのは公表しているのですか。

小出氏:私自身が見た事がなくて、散発的にデータは出て来ていますけれども、
  本当にもしやる気であれば、もっと測定ポイントを強化して
  あるいは、これもお伝えしたと思うのですけれども、
  海岸線沿いの海藻の汚染を調べるという事で、
  かなりのデータが取れると思うのですけれども、
  そのデータも、私は未だに見た事がありません。

MC:未だに取るべきデータが取られていないのか、
  取っているけれども出していないのか・・・

小出氏:どちらかだと思います。

MC:どちらでも許せませんけれども。

小出氏:はい。

MC:それから、このデータのひとつで、テルルというものが検出された、
  という話が出て来ました。
  ラジオネーム(省略)という方なのですけれども、
  「小出先生に質問させて下さい」という事でメールを頂いております。
  「放射性物質テルル132というものが検出されたのですが、
  これ、どんなものなんですか」というふうに聞いてらっしゃいます。

小出氏:これは、ヨウ素132という、私達が注目している放射性物質の
  親核種というのですけれども、
  ヨウ素132自身は物凄い寿命が短いのですが、
  テルル132というものが出て来てしまいますと、
  それから常にヨウ素132が生み出されて来てしまうという事で、
  テルル132を見ていないと、ヨウ素132の挙動が解らないという、
  そういう特殊な放射性核種です。

MC:ヨウ素の元みたいなものですか。

小出氏:そうです。

MC:このテルルが、今の話ですと、水素爆発の前にもう検出されていた、という事なのですが、これは何を示しますか

小出氏:要するに、燃料棒の被覆管というものが、
  破れない限りはテルルというものは出て来ないのです。
  ですから、事故の極々初期にもう燃料棒の被覆管が
  破損をしてしまっていた
、という事を示しています。

平野氏:かなり高熱・・・報道を見ると、1000℃を超えていたのではないかと。

小出氏:そうです。
  1000℃と言っても良いですし、私は850℃だと思うのですが、
  ジルコニウムという被覆管の合金が水と反応する温度が850℃、
  あるいは900℃と言われて来ました。
  ですから、もう事故の本当の初期の段階でその温度に達してしまって、
  被覆管がもう壊れてしまったという事を、示しています。

MC:何故その情報が今頃出るのですか。

小出氏:それは、本当に不思議です、私は。

平野氏:保安のいつも(記者会見に)出る西山審議官が、
  情報を整理して公表する発想がなかったと言って、
  今回この修正に当たって、弁明しているのですけれども、
  少し驚くべきコメントですよね。

小出氏:そうですね。

平野氏:もうびっくりしたのですけれども。
  発想がなかったって、保安院はそれは仕事ですよね

小出氏:それこそ、やらなければならない一番の仕事だと思います。

MC:もしこのテルル132が検出されている事を、事故直後に公表していたならば、避難する皆さんに対するいろいろなコメント等も変わった、というふうに思われます?

小出氏:もちろん、そうです。ごく初期の段階で燃料の破損が始まっているという事が解っている訳ですから、テルルが出て来るという事はヨウ素も出て来ているという事ですので、早急に子供達にはヨード剤を飲まさなければいけないし、住民に対する防護措置というものが本来は為されなければいけなかったと思います。

MC:この発表をしなかったというのは、非常に意味が大きいではないですか。

小出氏:発想がなかったと言われてしまうと、呆れるしかありません。

MC:事故の翌日の3月12日の枝野官房長官の夕方の会見を見直したのですよ、今日。そうしたら、こういうふうにおっしゃっておりました。「放射能はきちっと測定されておりまして、放射性物質の把握に努めて、周囲の皆さんの安全については、万全を期している所でございます」と。

「万全を期して、いざという時のためにヨウ素も用意しています」とおっしゃっているのです。でももう既にこのヨウ素をちゃんと皆さんに体の中に入れてもらっておかなければいけない段階だったのですね

小出氏:本当ならば、そうだったと思います。

MC:情報が遅れるって、こういう事を引き起こすのですね

平野氏:先生、これを時系列から言いますと、3月12日の午前8時半にこの物質(テルル132)を検出して、その日の午後6時半に(避難区域を)20kmに拡大しているのですよね。10時間位あるのですけれども、この間に取るべき措置というのは、いろいろ今先生がおっしゃられたように、考えられる訳ですよね。

これは、もう明らかに政府が解って20kmに拡大したのではないか、と、これを隠したまま、ちょっと考えてしまうのですけれども、そういう意図も考えられますよね。

小出氏:私は、そうだと思います。ずっとお伝えして来ましたけど、日本の今の政府というのは、事故の規模を小さく見せたい、小さく見せたいというふうに行動して来たように私には見えます。でも、本来防災の原則というのは、最悪の事態を考えて対処しなければいけない。ヨード剤は飲ませる時を逃したら全く意味がない訳ですから、もっと迅速にやらなければいけなかったのだと思います。

<プルトニウムについて>

MC:また、プルトニウムが検出されたという話も伝わって来まして、これは原発から1.7km離れた土から出たと、ある研究者の方の発表です。プルトニウムについては、以前にも検出されたという話が出たのですが、その時は文部科学省の調査で、微量検出されているけれども、これは過去の核実験によるものである、というふうにされたのですね。

今回は、その研究者の方が「いや、これは核実験ではなく今回の事故が原因でのプルトニウムではないか」とおっしゃっているのですが、小出先生の見解はいかがですか

小出氏:詳細を私は承知していませんけれども、たぶんそのプルトニウムを検出したとおっしゃっている方は、私の知り合いだと思いますし・・・

MC:山本教授とおっしゃります。

小出氏:日本でのプルトニウム測定の第一人者ですので、山本さんが言うのであれば、私は確かだと思います。

MC:プルトニウムが検出される事の意味を教えて頂けますか。

小出氏:プルトニウムというのは、なかなか核燃料の中からは出にくい放射性物質なのです。ウランもそうですけれども。そういう燃料の中から出にくいものまでが既に環境に出て来る程、事態が悪化しているという事だと思います。

MC:出にくいものと言うと、プルトニウムが出るというのは、余程核燃料が損傷しているという意味ですか。

小出氏:そうです、そういう意味です。

MC:プルトニウムの人体への悪性というものは、どうなのでしょう。

小出氏:人間が遭遇したうちで最も毒性の高い物質だと思って頂いけば良いと思います。

MC:最も毒性の高い物質・・・

小出氏:100万分の1gを吸い込んだら、その人はガンで死ぬという、
  その位です。

MC:100万分の1を吸い込んだら、とおっしゃいました?

小出氏:100万分の1gですね。

MC:100万分の1gを吸い込んだら死亡するという位の恐ろしい物体なのですね。

小出氏:そうです。

MC:これを、国としては、いや、過去の核実験のものだというふうに
  言っているという事について
、どんな感想を持たれますか。

小出氏:過去の大気圏内核実験というのは、大変な犯罪的な事をした訳で、 大量のプルトニウムを大気中にばら撒いたという、そういう時代が60年代であったのです。ですから、それ自身がとてつもない事だった訳で、地球上殆どプルトニウムで既に汚染されています。その上に、今回福島の原発の事故があって、福島原発の周辺が、プルトニウムで更に汚染されたいう事になっている訳です。残念な事だと思います。

MC:今になって、こういう事が、ショッキングな事実が段々と解って来ております。

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