茨城から沖縄に避難した十五歳の高校一年女子生徒が恩師にあてた手紙
(2011-12-17 19:37 木下黄太のブログ)から抜粋
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お元気ですか?私たちは沖縄に移住し、 父、 妹は茨城に残っています。
私は確実に被爆をしています。症状がかなりでています。主に甲状腺が腫れたり、鼻血 じんましん 免疫力低下などです。
自分でもびっくりするくらい体に異常が起きていて、あのまま茨城にいたら、近い将来 死んでいたかもと 沖縄の医師に言われました。
先生方は 公務員ですから、動けないことも、放射能について生徒に教えることができないのもよく分かっています。 様々な情報から真実を知った時、すごく苦しみました。もうすでに何人の人が死んでいるのか、ご存知ですか?私たちの世代が、あと10年後、それよりも早くごっそりいなくなると言われています。
茨城にいる友達が心配で仕方ありません。ネットを通して、みんなに情報を流していますが、 今がよければいい どうせ子供産めないから、うちの親は公務員だから動けないなど将来に対して後ろ向きな考えばかりです。仕方ありません。高校生が事実を知っても、親に言えず、不安な毎日を過ごすばかりです。だから その親に一番 放射能の怖さを伝えられるのは教師だと思いませんか? そのためにリスクはかなりあるかもしれません。それでも子供たちは 大人の宝物ではありませんか?今の子供たちを守れるのは大人しかいません。 残念ながら、国は子供の命より経済をとってしまいました。もし、将来 がんが増えて、国に あの時の放射能が原因だと 訴えても 因果関係なしといわれるでしょう。 原発が爆発したときの「 ただちに影響はない」、 ただちにですよ!将来はどうなのかです。
もし、今までどおり普通に暮らしていれば、将来苦しむことは、はっきりわかっています。 私は今がよければいいなんて絶対に思いません。今 なんてどこでもできます。今いる場所によって将来が大きく変わるのです。私はこちらにきてよかったと本当に思います。 ですが、一番気掛かりは 茨城 関東 東北にいる子供たちの未来。本当に怖いです。誰も悪くありません。誰も責められません。 しいていうなら、国と東電。私たちは皆 被害者です。だからこそ、自分の命は自分で、子供の命は親で 守らなければいけないと思います。
先生 どうか放射能について真実を調べてください。どうかそれを たくさんの人に教えてあげてください。大事な生徒を守ってください。 そこからは、それぞれが決めることです。 茨城での食生活 空気感染に十分お気をつけてください。ありがとうございました。
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茨城県より9月に沖縄に移住した 高校一年の女子生徒さんの手紙です。 4月より自転車通学で水戸へ登校。往復で五キロ以上、 雨が降っても、傘ささないで半年近く通いました。体調不良が多くなり、大量鼻水 や鼻血、鼻血は1日に、二回から三回ふつうに出始め、首が腫れてのどが痛み、顔にむくみ、胸の上と腕に赤い大きな発疹も出ているそうです。
ネットを通して、茨城の同世代のみんなに呼びかけているそうですが、そちらから返ってくる答えが「のどが痛い」「鼻血が突然出る」「体が前より疲れやすくなっていてだるい」という体調不良を訴える友達が多くなっているそうです。漠然とした不安を抱えている女の子たちが多いそうで、あきらめにも似た気持ちを彼女へ吐露してくることも多いといいます。
若い世代の女の子たちの中で、リアルにこうしたやり取りがされていることを知ると、この社会のあり方はどうすべきなのかと思います。
闘っていくしかないと、僕は思っています。
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★「事故収束」を宣言しながら、緊急時の20ミリシーベルトを1ミリシーベルトに戻さない政府。そして、安全な場所での教育を求める子どもたちの願いを 「却下」する裁判所。この国の政治と司法をこのまま放置したら、子どもたちの犠牲がますます拡大する。
今、問われているのは、「日本の大人たちに、本気で子どもを守ろうとする気持ちがあるかどうか」 つまり、愛があるかどうか、ではないだろうか。
子どもの安全な場所での教育を求める
ふくしま集団疎開裁判 「却下」決定に対するコメントから抜粋
(2011年12月16日 ふくしま集団疎開裁判)
1 本日12月16日、福島地方裁判所郡山支部で仮処分申立に対する決定が出されました。
→裁判所の決定(2頁に「判断の理由の要約」 13頁末行から最後までが判断の理由のポイント)
以下その解説を述べるにあたって、一言、弁護団長(柳原敏夫)の感想を述べさせていただきたい。
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「子どもを粗末にするような国は滅びる、そのような国には未来はない」
これが真実であることの確認を求め、混乱と異常事態に陥っている国政の是正を「人権の最後の砦」を本来の任務とする裁判所に求めたのが疎開裁判です。
しかし、本日、裁判所は自らその任務を放棄することを宣言しました。福島第一原発に劣らず、我が国の三権も首をそろえて混乱と異常事態に陥っていることを余すところなく証明しました。それが本日の決定の唯一の意義です。
これに対しては、私たちは2世紀以上前のアメリカ独立革命の人権宣言の初心に返って、「子どもを粗末にするような国は廃炉にするしかない。未来は子どもを大切にする国作りの中にしかない」ことを宣言する。
「政府は人民、国家または社会の利益、保護および安全のために樹立される。いかなる政府も、これらの目的に反するか、または不十分であると認められた場合には、社会の多数の者は、その政府を改良し、変改し、または廃止する権利、いわゆる革命権を有する。この権利は、疑う余地のない、人に譲ることのできない、また棄てることもできないものである。」(米国ヴァージニア憲法3条)
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結論となる主文は「本件申立を却下する」というものです。
決定中には「判断理由の要約」として、以下が記載されています。
「放射線による影響を受けやすい児童生徒を集団で避難させることは、政策的見地からみれば、選択肢の一つとなり得るものである。しかし、債務者には、郡山市に居住する他の児童生徒が存在する限り、教育活動を実施する義務があり、教育活動の性質上、債権者らに対する教育活動のみを他の児童生徒に対する教育活動と区別して差し止めることは困難である。
債権者らの申立の趣旨は、事実上、債権者らが通学する小中学校の他の児童生徒に対する教育活動をも含め当該小中学校における教育活動の実施をすべて差し止めること等を求めるものと認められるから、その被保全権利の要件は厳格に解する必要がある。しかるに、債務者による除染活動が進められていることや放射線モニタリングの結果などを考慮すると、現時点において、警戒区域でも計画的避難区域でもない郡山市に居住し債権者らと同じ小中学校に通学する他の児童生徒の意向を問うことなく、一律に当該小中学校における教育活動の実施の差止めをしなければならないほど債権者らの生命身体に対する具体的に切迫した危険性があるとは認められない。また、債権者らに対する損害を避けるためには、債権者らが求めている差止め等が唯一の手段ではなく、区域外通学等の代替手段もある。したがって、本件申立てについては、被保全権利が認められない。」
2 今回の決定の骨子は次のようなものです。
(1)債権者らは、債権者らを避難させることを求めているが、実質的には、各学校における他の児童生徒の教育活動の差止めを求めているから、その被保全権利の要件は厳格に解する必要がある。
(2)現時点で、他の児童生徒の意向を問うことなく、一律に各小中学校の教育活動の実施の差止めをしなければいけないほど、債権者らの生命身体に対する切迫した危険性があるとは認められない。その理由は、(1)空間線量が落ち着いてきている、(2)除染作業によって更に放射線量が減少することが見込まれる、(3)100ミリシーベルト未満の低線量被曝の晩発性障害の発生確率について実証的な裏付けがない、(4)文科省通知では年間20ミリシーベルトが暫定的な目安とされた、(5)区域外通学等の代替手段もあること、等である。
3 裁判所は、まず、被保全権利がないこと、すなわち、子供たちに切迫した健康被害の危険がないことを理由に、申立を却下しようと考えたのだと思います。しかし、その点だけでは決定理由を書けなかった。そこで、他の子供達についても避難させようとしているなどということを持ちだして、「被保全権利の要件を厳重に解する必要がある」などということを言い出したのです。
確かに、私たちは、14人の子どもの避難だけではなく、他の子供達の避難も実現したいと思っていました。しかし、それは、裁判所の決定が出た後の行政交渉で実現できることであって、司法で実現できることではないし、司法判断の対象になるものではないと位置づけていました。個人の権利救済を目的とする民事訴訟手続においては、それは当然のことです。審理の対象は、申立人の子供たちの健康被害を避けるために、申立人の子供たちを避難させる必要があるかどうかだけなのです。他の子供達に対する事実上の影響の問題を司法判断に持ち込み、厳しい要件を課したのは、民事訴訟の原則に違反するものであると考えます。
4 100ミリシーベルト以下での低線量被曝のリスクが証明されたとはされていないことや文科省の20ミリシーベルトの判断を理由に子どもの健康のリスクを否定した内容は、結局、行政の判断に追随しているだけであり、司法の役割を全く果たしていないというしかありません。
チェルノブイリでの避難基準との比較、ベラルーシやウクライナの子供たちの現状、福島の明日は今のベラルーシやウクライナであること、多くの子供達が被害を受ける危険があることを、裁判所はどう考えたのでしょうか。
科学的な証明のためには膨大なデータの収集が必要であり、そのためには長い時間がかかります。児玉龍彦東大教授が言っておられるように、科学的に証明できてから対策をとっても遅いのです。ことは子供たちの生命、健康の問題です。予防原則が徹底されなければなりません。
我が国の政府は、国民に対し、年間20ミリシーベルトまでの被曝をさせる意思です。ウクライナやベラルーシでは、年間5ミリシーベルトを超える地域は強制避難地域とされました。それでも大変な健康被害が生じています。我が国における子供たちの保護が、旧ソ連の各国よりもはるかに劣っていること、そのことを我が国の司法すら安易に追認することに驚きを禁じえません。
5 司法の仕事は、苦しみの中で救済を求めている市民を救うことであって、市民を苦しめる行政の行為にお墨付きを与えることではありません。
今回の裁判所の決定に対し、私たちは十分に検討の上、今後の道を探りたいと考えます。