2008年06月19日

インタグコーヒー物語 第13回 インタグコーヒーの作り手たちを訪ねて
〜その5 アンヘル・ゴメスさん

ウインドファームスタッフの後藤が、インタグコーヒーの産地であるエクアドルを訪問した際のレポートをお知らせいたします。

アンヘル・ゴメスさん訪問記

AACRIがあるアプエラの郊外にアンヘル・ゴメスさんの家と農園がある。車を降りてから、大きな川に掛かる一人がやっと通れる程度の吊り橋を歩いて渡り、農園へと向かう。「こんな細い吊り橋、コーヒーはどうやって運ぶのだろう?」と余計な心配をしてしまう。
農園全体は15ヘクタールほどで、酪農もやっており、牧草地や山もあるという。コーヒーは1ヘクタール。もちろん森林農法だ。なるほど、バナナの木やアボガドの木が伸び伸びと育っている中に、コーヒーの木も植わっている。


アンヘル・ゴメスさん

アンヘルさんはウインドファームが買い取る「Aプラス」という質の高い豆を多く出荷する優秀な農家だ。「今年は雨が多くてねぇ。ランチャと言うシミがけっこうコーヒー豆に出てしまったんだよ。水滴が豆に付いた状態で強い太陽光線が当たると急速に蒸発するだろ。そうするとシミになっちゃうんだな。今年は、そんな影響であまり収穫は良くないんだ。でも、10俵は取れたよ。来年はもっと励んで12俵は取りたいね」と。


農園につながる細い吊り橋

どの作業が大変か?どの作業が好きか?と聞くと彼は次のように答えてくれた。「コーヒーを植えることや、収穫することが大変。その時期には人も雇わなければいけないんだ。お金も掛かるしね。果肉を取って、洗う作業も大変だよ。でもね、作業は全部好き。コーヒーや森の育て方に関して、子どもに教えることもとても楽しいんだ。それとね、AACRIや他の生産者から栽培に関して情報交換をしたり、教えてもらうことも楽しいよ。」


「今年は、3000本ぐらいコーヒーの苗木を植えるつもりなんだ。苗は自分で育ててるんだよ。苗を育てるのに使う土も自分たちで作っているんだ。腐葉土と生ゴミを混ぜると、栄養分が豊かな土になるのさ。家族が食べたフルーツや野菜の種も入っているからね、ほら見てごらん、コーヒーと一緒にアヒ(トウガラシ)やツリートマトの苗までできちゃったよ。コリャ一石二鳥だね。ハッハッハ~」


コーヒーの苗木

コーヒー苗に混じって、ツリートマトの苗ができていた。コンポストに入れたゴミの中に種が混じっていたようだ。苗床にも生物多様性がある!

もちろん、コーヒーと共に果樹やさまざまな樹を植えてある。バナナ、アボガド、パパイヤ、オレンジ、ワボなどの食べものが確保される。さらに、落葉した葉が土に還っていくことで、その場で腐葉土となってくれる。「果樹を植えることで、お腹も満ちるし、土も良くなるんだよ。それにね、余ったフルーツはアプエラの街まで持っていって売ることもできるからね。僕のところからなら、運ぶのもそんなに大変ではないからね」と。また、日陰が害虫からコーヒーの樹を守るという作用もあるという。意図的に害虫忌避効果があると言われている「マルコ」という木も植えられていた。


マルコ

「日本のヨモギに何となく形が似ている木だ。匂いの成分が虫を除けるのだろうか?この辺の農家は森の中に植えているという。」

「森林農法をやる」というと、何か気合や気負いのようなものが必要なのかと思ってしまうが、アンヘルさんを見ていると、とても自然体でやっている感じがしてしまう。自然体で森と接し、その森から多様な恵みを受け取る。家族12名で農園を切り盛りしているという。「12人も養えるの?」と聞くと「もちろん!」とすぐに答えが返ってきたのがとても印象的だった。その自信の後には「だって、森がこれだけ豊かなんだよ」という言葉が控えているように思えた。

投稿者 akira : 2008年06月19日 12:36