つながり実感
~コーヒー、森、ひとびと~
9月24日~10月4日まで、エクアドル・オルタナティブツアーという設定で9名+αのメンバーがインタグコーヒーの産地10泊11日間の旅をしてきました。主な目的はウインドファーム(WF)のフェアトレード・パートナーである生産者団体AACRI(インタグ有機コーヒー生産者組合)の10周年を一緒にお祝いすることでした。
AACRIは、世界有数の生物多様性を誇るインタグの森林の中で質の良いコーヒーを育てている生産者の組織です。豊かな森を破壊する大規模鉱山開発への代替案として森林農法によるコーヒー栽培を展開してきました。設立とほぼ並行してWFとのフェアトレードを開始して丸10年。弊社代表中村隆市は「10年間インタグコーヒーのフェアトレードが続いたこと、AACRIも潰れずに存続し続けていることが素直に嬉しい」と語っていました。
10年間のフェアトレードの継続は、美味しいコーヒーを育てる生産者、コーヒーを輸入、焙煎、販売するWF、そして「美味しい」と言って飲んでくださる消費者の方々の存在なしにはもちろん考えられません。今回の旅で改めて感じたことは、生産、販売、消費だけではなく、インタグを取り巻く様々な団体や活動、社会情勢があってインタグコーヒーのフェアトレードが成立しているということでした。
11日間の滞在を通して一杯のコーヒーから広がる豊かなつながりや営み、圧倒的な自然の存在感などを感じることができたツアーとなりました。ツアー自体はエコヴィレッジ計画があるプカラという町の訪問、アンデス先住民のサンダル職人訪問、通訳兼コーディネーターで大活躍してくれたWFエクアドルスタッフのワダアヤが運営するクリキンディ訪問などなど盛りだくさんでした。今回はコーヒーとそれを取り巻く動きを軸にツアーの様子を簡単に報告します。
【多彩な参加者】
参加者もそれぞれとっても個性的でした。子どもと犬が大好きな幼児教育の専門家から来春にスローカフェを山梨で展開したい青年まで、年代も興味も視点も多彩。ツアー一行の周りを同伴した小さな子どもたちが元気に走り回り、場を和ませてくれました。
ビールを片手に参加者同士で夜な夜ないろいろなトピックに関して語り合ったり、ハーモニカや折り紙、ギターの弾き語りなどそれぞれの得意なことを活かして現地の人や子どもと交流したり、それぞれの旅の目的と感想を共有したり。素敵な参加メンバーが旅を一層充実したものにしてくれました。
コタカチ郡知事アウキさんと共にツアーメンバー
【環境保全都市コタカチ郡】
WFがインタグコーヒーのフェアトレードを開始した時から付き合いがあるコタカチ郡知事アウキ・ティトゥアニャさんの計らいで、なんと空港がある首都キトに公用車がお迎えに来てくれました。車に揺られること2時間半ほどでコタカチの町に到着。コタカチでは、先進的な地域作りのモデル事業をいくつか見せてもらいました。
そのひとつは、民衆議会。議長であるドン・レオさんを訪問しました。民衆議会は子どもから大人まで地域を良くしていきたいと考える人たちに開かれた議会で年1回開催されます。アウキさんが郡知事になってから設置されました。「住民が望むことを表現する場として機能し、住民自らがボランティアベースで動きながらいろいろな仕組みや企画を動かしていくのです」とドン・レオさん。
左端がドン・レオさん 民衆議会について丁寧にレクチャーをしてくれました。
例えば、コタカチは革製品が有名で生産のレベルはトップクラスなのですが、売り方があまり上手ではなかった。そこで、どのように売っていくかという戦略を住民と行政が一緒に考えながら「商品展示会」を開催することになったと言います。他にも、国際NGOと連携して市議会議員レベルになれるような人材を育てるリーダーシップ養成講座を継続的に開催するようになったり。現在、8年ほどじっくり調査を積み重ねて、環境教育なども盛り込んだ「1000年の教育プラン」というものを作っているとか。
行政に対して「やってください」という姿勢ではなくて、「自分達住民も積極的に関り一緒にやっていく」という姿勢が尊重されているそうです。自分達の暮らしや森は自分達で守るというインタグコーヒー生産者の人々の姿勢がコタカチ郡の雰囲気と重なって見えてきました。
【アウキ知事との交流】
多用な中、アウキさんとパートナーのアルカマリさんも時間を取ってくれ、自宅で昼食会を開いてくれました。美味しい手作りの食事をいただきながら、アウキさんと政治について、平和について、大切にしている価値観について、いろいろな話をすることが出来ました。「政治とは市民が自分達の住む地域や社会をより良くしていくための道具なのです。そこでは、社会、経済、文化、環境が出会います。その政治の場に自由意志で参加できること、お互いの意見を尊重しつつ納得できるまで話し合いを重ねること、そういったことを通して本当の意味での発展を実現していくのです。そうすることで、「いのち」「平穏」「調和」「幸せ」と同義の平和が訪れるでしょう」とアウキさんは語っていました。
08年5月来日時のアウキさんアルカマリさん
12年間郡政を担ってきたアウキさんのより良い社会を求める想いと強いヴィジョン、その行動力から学ぶことがたくさんありそうです。
アウキさんはとても優しい人で、メンバーが忘れた手帳を直々に届けてくれ、さらには「記念にどうぞ!」と彼が敬愛するチェ・ゲバラのポストカードを数種類みんなにプレゼントしてくれました。
インタグコーヒーの生産者と共に10年前に来日したアウキさんとの親交が続いていることが素直に嬉しいことです。
【AACRI10周年イベント】
土けむりの立ち込めるガタガタ道をバスで2時間以上揺られて到着したインタグ。私たちが飲んでいるインタグコーヒーの生産者の方々、関係者の方々が焙煎工場の広場に集って待ってくれていました。当初は大々的なイベントを考えていたようですが、新しい憲法に対する国民投票の前日に当たってしまい、お酒を飲んでの派手な催し事は禁止。ということで、「家族的な集まり」となりました。それでも総勢60~70名ほどが集まりました。
方々から集まってくれたAACRI会員の生産者の面々。
10年前にスタートした時には国内販売用コーヒーの焙煎が安定せず、豆が黒焦げになってしまったことや試行錯誤を繰り返しながら販路拡大に努めてきたこと、鉱山開発推進のプレッシャーがとても大きかったことなどの思い出話。
苦労を分かち合ってきたAACRIのスタッフ、技術指導員の面々。
生産者と子どもによるコーヒーの歌とナマケモノ倶楽部の世話人でもあるアンニャ・ライトさんによるエクアドルやナマケモノの歌。若者によるちょっとセクシーなダンス。お豆とおイモ中心の山盛りの食事。日本からの参加メンバーによるスペイン語でのスピーチ。笑い声と音楽が絶えないアットホームな雰囲気の中での10周年記念となりました。「次の10年もフェアトレードを続け、またたのしくお祝いをしましょう!」との約束もなされました。
コブシの利いた歌(カンシオン)を披露してくれた少年。
ダンスに誘われ、軽快な(?)ステップを披露する弊社代表中村(右端)
フェアトレードおよびAACRI10周年を歓び合う中村とAACRI会長エドムンドさん。