【いざ、コーヒー農園へ】
10周年イベントの翌日はAACRI会長のエドムンド・バレラさんの案内で2つの農場を訪問。ひとつ目はエルビータさんの農園。農園はもちろん森林農法です。コーヒーの樹が、材木用や果樹などの様々な木々の中に育っています。参加メンバーのカドさん(スロー社)は普段販売しているインタグコーヒーが育っている現場にて「すっげ~!!本当にいろいろな木がある中にコーヒーもあるんだねぇ。興奮してきちゃった。感動的だぁ~!」と眼を輝かせていました。
エルビータさんの農園。手前がコーヒー、奥にはバナナが植わっている。
エルビータさんは、「この農園にはコーヒーはもちろん、パパイヤ、レモン、アボガド、ミカン、それに材木用の樹、野菜もユカイモ、数種類の豆、にんじんやトマトなんかも育つようにデザインしてあるのよ。それに、犬、馬、子どもも育つのよ!家には常に何かしらの食べ物があるわ。買う物は米、油、塩などの調味料、クミンなどの香辛料など限られたものだわね。アヒノモトはガンの元って聞いたから買わないけどね」と説明してくれました。
豊かな暮らしを垣間見る一方で、この地域に巨大水力発電所を建設する話があり、そのためのトンネルを掘る計画があるとのこと。そうなるとエルビータさんの農園を横切ることになり農園が台無しになってしまいます。
「私達は大地を信頼して暮らしています。電力会社のお金なんか必要ないのよ。作物を育てる大地と時間、コーヒー、そして人と人とのつながりが大切なの。こないだ来た開発会社の人たちにはそう言って追っ払ってやったわ」とエルビータさん。
エドムンドさんも「AACRIとしても絶対に農園内にトンネルを作ることなどさせない。私達は抵抗する!」と断言。エルビータさんからは「これは農薬も化学肥料も使っていないオーがニックの美味しいお豆だから」とお土産までもらってしまいました。
きれいなコーヒーの花も咲いていました。
ふたつ目の農園はマルタさんの農園。到着が遅れたためマルタさんは不在でしたが息子さんが案内してくれました。この農園は野菜から薬草となるハーブまで44種類もの作物が植わっており、自給率はとても高いとのこと。
家の近くにはよく使う野菜、「ここはこの家の薬屋さんだよ」と薬草やハーブが植わっているところ、コーヒーやバナナが植わっている場所、保護区として森を残している場所などゾーン分けされているのも特徴的でした。傾斜地の土壌流出を防ぐためにサトウキビを植えたりといった工夫も随所に見られました。
食べ物だけではなく、エネルギーの自給にも取り組んでいました。インタグ地域に14あるバイオガスプラントの第一号がありました。飼育しているブタの糞尿が発酵&分解される過程で発生するメタンガスを集めて活用しています。ガスの圧力や勢いが安定しないので、市販のボンベも併用しているとのことですが、毎日食べる豆やイモの煮炊きなどに使っているとのことでした。
バイオガスについて説明してくれるマルタさんの息子さん
実際の森林農法の畑と森を見ることで、インタグコーヒーがどのように育てられているか、どういった人たちが育てているのか、どんな暮らしをしているのかが見えてきます。コーヒーのみならず、暮らしを根底で支える野菜や果樹、その他の恵みを豊かな森が与えてくれています。
マルタさんの農園 中央がコーヒー、周囲には日陰を作るバナナが植わっている。
【雲霧林へ】
鉱山開発や水力発電所建設が実施されると破壊の危機にさらされる雲霧林にも出会いました。08年6月に来日して東京や福岡でトークショーをしてくれたカルロス・ソリージャさんが維持するラ・フロリダを訪問。
食事は毎晩キャンドルナイト!
ソリージャさんの弾き語りもありました!
雲霧林には色とりどりの鳥や昆虫たち、色や形、大きさが多様なランやブロメリアなどの花々、1本の樹に1000近くもある着生植物、森を荘厳な雰囲気にするコケ類などなどとても豊かな生物多様性があります。カルロスさんの解説付きで森を散策したり、バードウォッチングをしたり、ランの鑑賞をしたりと森と共にゆったりとした時間を過ごしました。
「葉っぱの先端の赤い色は、ハチドリを引き寄せるための色なんだ」とカルロスさん。
原生林の巨木にハグ!
「森の中に不要ないのちなどない。全てがつながっていて、補い合っているんだ。例えば、ランは100万もの種を作るけど、それが発芽するためにはマイコリージア(菌根)という菌の働きが必要なんだよ。日本には数100種、エクアドルには4000種のランがあると言われているけど、と~っても小さな菌にその再生産を頼っている。その意味で共生関係にあるんだね。共に頼り合って生きていく。人間もかくありたいものだよ」といった示唆に富むことをカルロスさんはたくさん話してくれました。
カルロスさんの家から森の中を歩いて30分ぐらいのところにあるエル・ミラグロも訪問。アンニャさんが持続可能な暮らしのモデルとして展開するプロジェクトの地です。静けさが漂う森の中に石や土を使った手作りの家、森林農法とパーマカルチャーを組み合わせた農園、シンプルな暮らしがありました。家の窓ガラスがない理由を尋ねると「ガラスをはめようと思っていたけど、この窓から家の中にハチドリが入ってきたのよ。嬉しくなっちゃって、ガラスはなしにしたの」とアンニャさん。
アンニャ、愛娘パチャ、管理人ルイスとメルセデスさん
エル・ミラグロではコーヒーの収穫、植樹、乾燥させたコーヒーの皮取りなどの軽い作業もしました。「コーヒーの収穫ってなんだか面白くて、はまっちゃいました」と黙々とコーヒーの樹に向かう参加者も。
気候、高度、気温、湿度、いろいろな条件が絡まりあって生物多様性を育む雲霧林が存在しています。「森の中でいのちのダイナミックさ、朽ちた木々が次のいのちの栄養になっていく循環、コケの何とも言えぬ存在感を感じた」といった参加者コメントもありました。
森の中で過ごすことで「森を守りたい」「この豊かさを子ども達に残したい」というコーヒー生産者の想いがとてもリアルなものとして感じられます。
珍しい小型のラン。樹の幹にコケと共に着生している。