【樹を植えましょう】
今回のツアーでは現地の人とメンバーが一緒になって3回の植林を行ないました。これは、コーヒーの売上の一部を産地に還元する活動のひとつでもあります。クエジャヘの町、アンニャさんがプロジェクトを展開しているエル・ミラグロ、通訳兼コーディネーターを務めたワダアヤが住むエル・バタン村の3箇所です。
それぞれの場所で、参加者が思い思いに樹を植えていきます。土にチッソ固定をしてくれるハンの樹、100年以上生きるアボガド、巨木になるというアカシヤ、すらっと背が高くなる柳、美味しい実をつけるレモン、そしてもちろんコーヒーの樹も。
特にエル・バタン村では地域の人や子ども達と一緒にワイワイガヤガヤにぎやかな植樹風景となりました。また訪問した時に、植えた木々がどのように育っているかとてもたのしみです。
【インタグ発の情報発信】
インタグにおける大規模鉱山開発への抵抗運動のひとつに地元からの情報発信があります。今回はインタグ新聞とラジオインタグを訪問。インタグ新聞は8年間ほぼ月刊でインタグの鉱山開発問題について、その問題にどう対処するか、どのような代替案があるのかといったことを示し続けてきました。代表のメアリー・エレンさんはインタグを取り巻く状況を次のように説明してくれました。
「現在、政府が鉱山開発の採掘権を多国籍企業から取り上げた状態になっているけれども、インタグに銅資源がある限り新たな開発の脅威はなくなりません。今の大統領コレアは鉱山開発を推進することを明言しているわ。彼は教育や子どもの医療システムの大部分を政府が負担するアイディアも打ち出しているのだけど、その資金がどこから拠出されるのかを考える必要があるわよね。原油や鉱山といった資源をお金に変えることで成り立つ福祉や教育って何なんでしょう?一方で環境と未来をどんどん破壊していくことになるわね。それよりも、エコツーリズムや小規模水力発電などの持続可能で地域にお金が回る形の経済活動を推進していくべきよ」と。
メアリーさんはインタグに人々が学び育つ教育機関を作りたいと言います。「人々と言葉のセンター」という構想で、インターネット環境も整え人々が自発的に学び合える仕組みを作りたいとのこと。
彼女の下で働く青年達も魅力的でした。文字が読めない段階から働きながら学び、執筆から編集まで任される2児の母でもあるジェニーさん、通信教育でツーリズムを学びながら働く21歳のパブロさん、ドイツから10ヶ月のボランティアプログラムでインタグに来ているサラさんなど多彩。彼ら自身が仕事から学び育っていくプロセスがあるようです。
「パブロ!何であんた髪の毛にそんなにワックス塗ってんのよ!?そんなベタベタの髪の毛を触りたいガールフレンドなんているのかしら?」「ハッハッハ、ほっといてよ!」といった微笑ましいやり取りの絶えない職場でした。「財政的に厳しくて、ほとんど給与も出ないような状態でメアリーはよく働くよ」とのコメントもスタッフから出ていました。
17000人の人口があるインタグにておよそ3000人が聴いているというラジオインタグも訪問。音楽と共に、鉱山開発の問題点や代替案としての森林農法コーヒーの大切さ、AACRIの活動などの情報発信を続けています。
アポなしで訪問すると「ここの設備は全てもらいものです。ちょっと古いけど、ちゃんと動きますよ。中村さん、今からちょっと出演してみませんか?」ということになり、急遽生放送。パーソナリティはAACRI会長のエドムンドさん、ゲストとしてWF代表の中村がAACRIと歩んできた10年について軽く話をする場面も。
その後、訪問した数箇所で「ナカムラさん、ラジオ聴いたよ!」という反応があり地域に根ざしたラジオの存在感を感じることとなりました。
「こういった地道な情報発信がなければ、鉱山開発への抵抗や森林農法のコーヒーの継続はあり得なかったかもしれないなぁ」と中村も語っていました。
【つながりの中のインタグコーヒー】
旅の振り返り時には、インタグコーヒーの消費者でもある参加者からもいろいろな感想が出ました。「森と生活が切り離せないということが分かった。日本の暮らしの中で私にできることをしたい」「実際に森林農法の森を見ることで、コーヒー主体でちょっと果樹があるというのではなく、人々が暮らす森の中にコーヒーがあるのだということが見えてきた」「中村氏が10年かけて蒔いてきた種がいろいろな場所で発芽し、育ち、実を付けているように感じた」「生産者の人柄や顔が見えてきた。一杯のコーヒーがそれらを思い出させてくれることになりそう」「現地の人々と触れ合えたことが良かった、『何もない』けど、それで良いと思った」などなど。
10周年を迎えたAACRIとインタグコーヒーは、豊かなつながりの中で持続してきました。母体でもある環境団体DECOIN、その活動の中心メンバーであり森や水源を守り育てるカルロス・ソリージャ氏、コーヒーの指導員の給与を工面したり国内での販路を作っているトイサンという生産者連合、インタグの豊かさや鉱山開発の問題点などを発信しつづけてきたインタグ新聞と代表のメアリー・エレン氏、WF代表中村を突如出演させてくれたラジオインタグ、子どもから大人まで地域のことを考える人たちが参加可能な民衆議会や識字教育プログラムなどを展開している環境保全郡コタカチとその知事アウキ氏、そして圧倒的な存在感でコーヒーや多様ないのちを育む雲霧林、その森と共に生きる優しい人々。
それぞれの場所と人々を訪ね、交流することを通して、インタグコーヒーとそのフェアトレードが立体的に見えてくる、「つながりは一杯のコーヒーから」という言葉が改めて腑に落ちる、そんな盛りだくさんの旅となりました。
投稿者 akira : 2008年10月30日 14:54