シルビオの父ジェラルドは7才のときにジャカランダ農場に移り住んだ。まだ、トラックでコーヒー豆を運べなかった時代、ジェラルドは牛車で運搬した。76歳になった現在も「仕事は好きだから辞めたくない」と言い、他のスタッフと同様、午前7時から午後4時まで働く。現在は1人暮らしだが、食事は息子の家で孫たちと一緒に食べる。
2人1組で行うはずの収穫作業を、1人でしているのは、マリア・アパレシーダだ。彼女は今年で50歳になる。その日、本来ならペアを組むはずの夫アイルトン・ガルシアはマッシャードの街に出かけていなかった。
3メートルから4メートルのコーヒー樹が林立するなか、コーヒーの実を求めて進みゆくと、ときとして傾斜30度位の斜面で立ち往生してしまうことがある。収穫の時期が終わりに近づく頃には、このような場所にコーヒーの実は残っている。
マリア・アパレシーダは、その急斜面で悪戦苦闘していた。両手を地につけなければバランスがとれず、ずるずると身体が下がっていく。
この急斜面での作業を終えると、彼女は実を掻き集める熊手のような道具と、枝葉の振り分けに使うザルを両脇に抱え、文字どおり地を這いながら前進を始めた。爪先を土に埋め込み、踏ん張り、登る。細く締まったふくらはぎは、とても50才のそれとは見えなかった。
坂を抜けたところの木陰で、ネルソン親子が休憩していた。彼女は水を分けてもらい「ふう」と息を付き、しばらく風に包まれていた。
投稿者 akira : 2005年05月09日 13:18