福島県境農家、悩む作付け 基準値超え根強い不安 丸森
(2012年05月10日 河北新報)
福島県境に接する宮城県丸森町筆甫の川平地区の農家が、2012年産米の作付けに戸惑っている。福島第1原発事故の影響により隣接する相馬市玉野地区で、11年産米から国の基準値を超える放射性セシウムが検出され、今春の作付けの見合わせを決めているからだ。「県境はあっても同じ地域。ここで基準値を超えるコメができてしまったら…」と田植えを前に不安を募らせる農家もいる。
「農協も町も作っていいというが、できれば作りたくない。ここは玉野地区と一体。もし基準値を超え(風評被害で)県全体に迷惑を掛けてしまったら」
川平地区の農家佐藤実さん(78)は、代かきをしながらも表情は浮かない。水田は1ヘクタール。山間部にあって10アール当たり平均540キロという高収量が自慢だった。ことしは9農家が10ヘクタールに作付けする予定だが、放射性物質に対する不安が消えない。
隣接する玉野地区では、11年産米で1キログラム当たり最大約190ベクレルの放射性セシウムが検出された。国の基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を超えるため、相馬市は地区内の農家38戸から聞き取りを実施。最終的に全戸約65ヘクタール分の作付けの見送りが決まり、補償を受けるという選択をした。
川平地区に接する玉野地区は相馬市内で最も放射線量の高い地域で、地区内には線量計が多く設置されている。このため「川平でコメを作れば玉野と同じようになるのではないか」と心配する声が、玉野地区の農家らからも上がっている。
11年産米について川平地区の検体からは、放射性セシウムは検出されなかった。しかし地区の線量は町内でも高い。土壌からは1キログラム当たり3600ベクレルが検出されている。国の基準値(5000ベクレル)を下回るものの、宮城県内の最大値だ。対策として町は周辺市町とともに農協を通じ、セシウムの吸収抑制効果があるとされる塩化カリウム肥料を無償配布し、散布を指導している。
町農林課は「玉野地区と最も近い水田は200メートルほどの距離。川平地区の農家が不安になるのは理解できる」としながらも「11年産米の川平地区の検体からは不検出だった。近くても汚染レベルが必ずしも玉野地区と同じとはならない。カリウム肥料の散布など対策も取っている」とし、作付けに問題なしとの見解を示している。
2012年05月10日木曜日