宮城県仙台市の方から以下のメールが届きました。
とても重要な内容なので、ご本人の了承を得て転載します。
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放射性物質に限らず化学物質やアスベストなども大量に含んだ「がれき」を遠くに運んでしかも焼却するのには反対です。しかし、宮城県内で、毎日24時間、燃やされ続けてるのも受け入れがたいことです。
宮城県の津波被災地域各地では、いま、仮設焼却炉が完成し、順次、フル稼働し始めています。仙台は、県内では例外的に、がれきの分別・リサイクルが早く進み、仮設焼却炉も昨年末から稼働しており、仙台のがれき約150万トンを順調に処理しています(リサイクルしていいのかという大きな問題もありますが)。そして、まず、並行して石巻地区のがれき(木屑を中心に)10万トンを受け入れ、早ければ7月から焼却の予定です。このままでは、どんどん宮城県各地のがれきを仙台が処理する流れではないかと思います。
仙台の3ヶ所の仮設焼却炉のうち、最大の処理能力(一日300トン)は、若林区荒浜の焼却炉。私の自宅から10キロ離れていません。がれきの広域処理阻止、ではなく、焼却阻止、を言わないと、自分たちの上に、再び降って来る放射性物質が増えるだけなのです。
地震、津波、原発事故とトリプルで被災した宮城県。私たち自身は、なかなか、がれき処理、ゴミ処理まで声をあげる余裕がありません。
なぜ、「どうやって処理するか」ではなく「どこで処理するか」に焦点がずれてしまったのだろうと思います。どんな施設でどんなふうに燃やされ、灰が処理されているのか。そもそも燃やしていいのか。
一緒に考えて頂けたら嬉しいです。よろしくお願いいたします。
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このブログでも何度か書きましたが、ガレキ焼却は、被災地でも広域でもやめるべきです。焼却しない「がれき処理方法」がいろいろ提案されていて、そのどれもが、今の焼却よりも多くの国民の支持が得られる内容だと思います。
ガレキ焼却は中止して、「処理方法」についての国民的議論が広がることを願っています。
◆災害廃棄物で防波・防潮堤防を!(青山貞一)
(2012年3月22日 独立系メディア E-wave Tokyo)から抜粋
この政策提言は、欧州諸外国における実例をもとに、日本の廃棄物処理法、沿岸法など現行法とも齟齬がない形で構築が可能であり、費用対効果にも優れた方法であると考えている。
しかし、東日本大震災の瓦礫の処理に関連し、日本政府(環境省)は、私たちが30年間批判してきた燃やして埋めるやり方を瓦礫に適用しようとしている。
日本固有の「燃やして埋める方式」は、汚染を大気、水、土に広げるだけで、本質的な問題解決にならないことは間違いない。ましてや低レベルとはいえ放射性物質を含む場合は論外である。これについては諸外国も注目している。
以下に私たちが提案する防波堤型の瓦礫処理の概念図を以下に示す。
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◆震災がれきを活用、東北に「森の防波堤」を 横国大の宮脇氏に聞く
(2012/2/1 日本経済新聞)
東日本大震災で被災した東北地方の海岸線に「森の防波堤」をつくろう。国内外での植樹活動で知られる植物生態学者、宮脇昭・横浜国立大学名誉教授は森づくりの長い経験に基づくユニークな復興計画を提唱する。森を育てる土台には処分に困っているがれきが使えるという。
――震災がれきを活用した「森の防波堤」とは。
「震災で生じたがれきのほとんどは、家屋などに使われていた廃木材やコンクリートだ。これらはもともと自然が生み出したエコロジカルな『地球資源』だ。捨てたり焼いたりしないで有効に活用すべきだ」
「海岸部に穴を掘り、がれきと土を混ぜ、かまぼこ状のほっこりしたマウンド(土塁)を築く。そこに、その土地の本来の樹種である潜在自然植生の木を選んで苗を植えていけば、10~20年で防災・環境保全林が海岸に沿って生まれる。この森では個々の樹木は世代交代しても、森全体として9000年は長持ちする持続可能な生態系になる」
「将来再び巨大な津波が襲来しても、森は津波のエネルギーを吸収する。東北地方の潜在自然植生であるタブノキやカシ、シイ類などは根が真っすぐに深く地下に入る直根性・深根性の木であるため容易に倒れず波砕効果を持つ。背後の市街地の被害を和らげ、引き波に対してはフェンスとなって海に流される人命を救うこともできる」
――タブノキなどは常緑広葉樹ですが、東北地方の海岸で育つのですか。
「人の手が加わらない自然の森を形づくる樹種を潜在自然植生と呼ぶ。岩手県釜石の北までタブノキなどの常緑広葉樹が自生できる環境だ。日本人が農耕生活を始める以前には常緑広葉樹の森があった。私たちの祖先が定住生活を始め耕作地をたくさん必要にするようになったため古来の森を伐採した。また古い森を伐採した後にスギやヒノキなどを植林したりもした」
「しかし賢明であったのは、土地本来の森を全部なくしてしまわずに一部を残してきたことだ。各地に残る鎮守の森こそ日本の潜在自然植生を残した森だ。タブやカシ、シイを主木とし、ヤブツバキやシロダモ、ヤツデなど様々な樹種が混在して育つ多様性の高い森だ。東北の海岸線に南北300~400キロ、幅30~100メートルほどの鎮守の森を再生できれば、緑の防波堤となるだけでなく、鎮魂の場にもなり、後世の人々が緑を満喫できる自然公園にもなる」
――がれきを使うことに問題はないのですか。
「がれきを使うことにこそ意味がある。根が浅いマツなどと違って常緑広葉樹は根が深く地中に入る。根は息をしており,生育には土壌の通気性が大事だ。土とがれきを混ぜることで通気性のよい土になる。木材など有機性の廃棄物はゆっくり分解し樹木の養分となる。木の根はセメントのかたまりなどをしっかり抱いて深く安定した根を張る。毒性のあるものやプラスチックなどは事前に取り除いておく」
「津波で海岸の松林が流された例が多く報告されている。マツは根が浅くひとたまりもない。倒木が流されて家を破壊した。震災後に現地を調べてまわったが、鎮守の森が波を食い止めた例がいくつかある。マツは日当たりのよい場所で早く育つが、自然のままに500年も放置されれば松林はやがて常緑広葉樹の森に変わっていく。白砂青松の松林を愛し利用してきた人間の営みによって、日本の海岸では長年、松林が人為的に維持されてきたが、津波への備えにはならないことがはっきりした」
「がれきを利用した復興の事例はたくさんある。第2次世界大戦後の復興でドイツやオランダでは公園づくりにがれきを利用した。身近な例では横浜の山下公園は関東大震災のがれきを埋め立てて復興のシンボルにした」
――潜在自然植生の森なら、丈夫で長持ちするということですか。
「世界各地で植樹活動をしてきたが、世界は日本をじっと見つめている。大災害からどのように立ち直るのか、日本人の力を見定めようとしている。日本人は6000年にわたって守り続けてきた鎮守の森の知恵を生かし、9000年はもつ本物の命の森をつくり、二度と津波で多くの人命が失われないようにしなければならない。世界にも例がない先見的な試みをやってのけたときに、世界の人たちは『さすが日本人』と言うに違いない」
「現代最高の技術力による備えが自然の力でもろくも崩れることを知った。ギネスブックに載った巨大な防波堤が壊れ、そこを乗り越えた海水が猛烈な勢いで市街地に押し寄せた。地球規模の自然の営みの中で、近代科学の知識はわずかに点と線を押さえているのにすぎない。本物の自然が備える能力を見方につけて、数百年~1000年に1度の自然災害に備えていくことが必要だ」
■取材を終えて
宮脇さんを「4000万本の木を植えた人」と呼ぶ人もいる。日本国内各地や中国、インドネシア、ブラジル、アフリカなどで植樹による森林の回復に力を尽くしてきた。その手法はインタビューの中でも再三言及された「潜在自然植生」という考え方に基づく。本来その土地で持続的に育つ樹種を選び出し多数の樹種を群生させることによって、人の手入れがなくても長期に存続する森を目指す。
国内では三菱商事や新日本製鉄、横浜ゴム、トヨタ自動車などの企業が工場や自社の土地の緑化に「宮脇方式」を採用している。また東日本大震災後は、千葉県浦安市の松崎秀樹市長が宮脇さんを招き、その指導の下で海岸線に「緑の防波堤」づくりを始めている。