「いじめられている子らが、この石垣を見れば、人間も捨てたもんじゃないと思うよ」・・・人間の凄さ、素晴らしさを感じる石垣です。初めて、この棚田の石垣を見たとき、私は「反原発の砦」のように感じました。
◆反原発の島で棚田を守る老人の姿を写真絵本にまとめた
那須圭子さん(2012年10月27日 西日本新聞)から抜粋
山口県・祝島。瀬戸内海に浮かぶこの小さな島の南端に、巨大な城のような石垣がそびえ立つ。平萬次さん(79)が祖父らと石を積み上げ、30年かけてつくった棚田だ。 「見に行くたびに、すごいと思って撮っていましたが、もともと本にするつもりはなかったんです」。
対岸に計画された上関原発建設に反対する島民の姿を撮影していたある日、中国電力の社員が島民に投げかけた言葉が胸に突き刺さった。
「『農業、漁業の第一次産業だけで、やっていけると本当に思っているのですか?』と言ったんです。『金にならない。海と山さえあれば生きていける』と思っている祝島の人たちをばかにしているようで、悔しくて・・・」
島の「揺るがぬ暮らし」を記録することが、電力会社の言葉に対する答えになると気づき、本腰で撮影を始めた。
棚田は6段、高さは30メートル超。平さんの父は若くして亡くなり、平さんと祖父、飼っていた牛とで、大きな石を一つ一つ運び、積み上げていった。
撮影中、平さんがぽつりと言った。「いじめられている子らが、この石垣を見れば、人間も捨てたもんじゃないと思うよ」。その言葉が心に残り、刊行した「平さんの天空の棚田」(みずのわ出版)は、子どもも読めるよう漢字に総ルビを振り、写真絵本と名付けた。
早稲田大を卒業後、結婚を機に山口県に住み、祝島の反原発運動を20年近く撮影している。「趣味は旅行ですが、上関原発建設計画が白紙撤回されるまでは山口を離れられません」
・・・記事抜粋は以上・・・
以下の写真は「反骨の写真家」福島菊次郎氏が撮影したもの(『瀬戸内・離島物語』/社会評論社)