「浪江町の染色体検査」と「チェルノブイリ小児病棟~5年目の報告」の記事を合わせて読んでみて下さい。チェルノブイリでは、0.33マイクロシーベルト程度のエリアに住んでいた11歳の少年が白血病で亡くなったこと、少年の妹(7歳)が染色体検査を受けて、染色体異常があったことを1991年にNHKが放送しています。
◆浪江町が「染色体検査」 被ばく線量推定へ自治体初
(2012年12月22日 福島民友ニュース)
東京電力福島第1原発事故で全町が避難指示区域に指定されている浪江町は、震災時0~18歳の子どもを対象に、原発事故直後からの被ばく放射線量を推定できる細胞の染色体検査を含む血液検査に乗り出す。染色体検査を行うのは県内自治体で初めて。初期被ばく線量を把握して健康管理に役立て、健康不安解消につなげるのが狙いで、来年1月下旬から受検者の採血を行う。
検査は、浪江町民の健康管理などで連携協定を結んでいる弘前大(青森県)の被ばく医療総合研究所が協力する。
同研究所によると、血液中の細胞の染色体異常の形や数などの変化を調べることで、初期被ばく線量を詳細に推定することができるという。また、内部・外部被ばく線量を合わせた身体全体の被ばく線量も推定する。検査結果が判明するまでは半年ほどかかる見通し。
同研究所の吉田光明教授(病態解析科学分野)は染色体異常について「加齢や生活状況、投薬による影響などで、(線量が)通常の場合でも染色体に若干の構造変化が起きる」とし、「検査はあくまでも健康不安を取り除き、安心につなげるのが目的」と話している。
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◆チェルノブイリ小児病棟〜5年目の報告
(1991年8月4日 NHK放送)書き起こし抜粋
【小児血液病科 シュミーヒナ・タチアナ部長】「放射能との関係ははっきりしませんが、推測することは可能です。具体的には、今年の3月に亡くなったビクトル君の例をお話しましょう。」
「この子はホイニキという町で育ちましたが、そこはかなり放射能汚染が激しい地域です。(1~5ミリシーベルト/年と5ミリシーベルト以上/年が混在している地域) ビクトル君の白血病は病状の悪化が驚くほど速くて、しかも、肝臓も脾臓もリンパ節も急激に腫れていきました。その上、中枢神経にもがん細胞が入り込んでいました。」
「こうした白血病はめったに見られないタイプのものです。やはり放射能の影響があったのではないかと、私は考えています。」
ビクトル君が急性白血病で死亡したのは今年の3月、11歳でした。2月中旬、ビクトル君は突然胃の痛みを訴えました。地元ホイニキの病院でみてもらったところ、白血球の数は正常で軽い貧血症と診断されました。8日後、突然高熱が出て、ゴメリ州立病院で検査が行われました。この時はじめて白血球が増加していることがわかりました。すぐに抗がん剤が投与されましたが効果はなく、わずか2週間で白血球は健康な人の10倍になりました。
白血病の進行とともに、肝臓、腎臓、脾臓などが腫れ、ビクトル君は3月3日、肺出血が原因で死亡しました。発病からわずか20日後のことでした。
広島の医師達は、ビクトル君が育ったホイニキを訪ねました。
佐藤教授はビクトル君が暮らしていたアパートの周辺の放射線量の測定を行いました。「あ、0.32になった。0.33。0.33(マイクロシーベルト)っていうと・・・広島の5、6倍」
小熊助教授はビクトル君の家を訪ねました。ビクトル君は両親、そして4つ年下の妹とともにこのアパートで暮らしていました。
【ユーリアちゃん(7)】
小熊助教授は妹のユーリアちゃんの健康を心配しています。ビクトル君の白血病が放射能の影響だとすれば、同じ環境で暮らしてきた妹にも影響が出ていると考えられるからです。
小熊助教授は両親の許可を得て、ユーリアちゃんの血液を採取しました。持ち帰って染色体の検査をするためです。
広島に帰った小熊助教授は早速血液の染色体検査にとりかかりました。持ち帰ったのはビクトル君の妹ユーリアちゃんと、集団検診の時に採取した8人の血液です。血液から白血球をとりだし、細胞の標本を作ります。細胞の核の中には遺伝を司る46本の染色体があります。
染色体は放射線によって傷つきやすいことがわかっています。その一本一本について、傷があるかどうかを調べていきます。染色体検査の結果8人のうち3人から異常がみつかりました。
これはビクトル君の妹、ユーリアちゃんの染色体です。ユーリアちゃんからも異常がみつかりました。
3番の染色体の一部分が欠けています。これが3番からちぎれた染色体です。
この子供は10番の染色体が切れていました。この子の妹は現在白血病で入院しています。
いずれの場合も今すぐ障害が出ることはありませんが、将来なんらかの要因が加わってがんなどを引き起こす可能性があります。
(動画)