自民党の高市政調会長が、「事故を起こした福島原発でも死亡者が出ていない」と述べ、反発が高まる中、「被曝で直接亡くなった方はいない」と説明しています。原発事故による避難で体調が悪化して死亡したり、自殺に追い込まれた「震災関連死」の他に、原発事故で立ち入り禁止になった地域での震災救助ができずに亡くなった方もたくさんいます。
「被曝で直接亡くなった方はいない」という発言も、本当にそう言い切れるのでしょうか。
例えば、原発事故以後に、福島と周辺県の心疾患死亡率が目立って増加しているのは、放射能が影響している可能性が高いと思います。
◆福島と周辺県の心疾患死亡率が増加している
(2013年6月11日 風の便り)から抜粋
【2010年度と2011年度、都道府県別の心疾患死亡率】(秋田県発表データ)
原発事故後、福島が8位から1位に、岩手が6位から4位になっている。
【福島と周辺県の心疾患死亡率が増加】
2010年度 2011年度 増加率 増加数
福島 197.6 226.0 14.4% +28.4
宮城 141.3 160.0 13.2% +18.7
茨城 150.1 165.9 10.5% +15.8
岩手 202.6 219.3 8.2% +16.7
全国平均 149.7 154.4 3.1% +4.7
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◆自民・高市政調会長「福島原発事故で死者はいない」
(2013年6月18日 テレ朝ニュース)
自民党の高市政調会長が、「事故を起こした福島原発でも死亡者が出ていない」と述べ、原発の再稼働に理解を求めましたが、避難が続く住民がいるなか、反発を呼びそうです。
自民党・高市政調会長:「悲惨な爆発事故を起こした福島原発も含めて、死亡者が出ている状況にもない。最大限の安全性を確保しながら、(原発を)活用するしかない」
高市氏はさらに、「原子力発電所は廃炉まで考えると莫大なお金がかかるが、稼働している間のコストは安い」と述べて、原発再稼働の必要性を訴えました。安全性のアピールのために福島第一原発の事故で死者が出ていないと説明したことは、被災地を中心に反発を呼びそうです。
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◆原発関連死789人 避難長期化、ストレス 福島県内本紙集計
(2013年3月11日 東京新聞)
東京電力福島第一原発事故に伴う避難やストレスによる体調悪化などで死亡したケースを、本紙が独自に「原発関連死」と定義して、福島県内の市町村に該当者数を取材したところ、少なくとも789人に上ることが分かった。死者・行方不明者1万8549人を出した東日本大震災から11日で2年。被災三県のうち福島では、宮城、岩手よりも多くの人が今も亡くなり続けている。原発事故は、収束していない。(飯田孝幸、宮畑譲)
地震や津波の直接の犠牲者だけでなく、震災や事故後の避難中などに亡くなった人に対し、市町村は「震災関連死」として災害弔慰金(最高五百万円)を給付している。福島では22市町村が計1337人(10日現在)を関連死と認定。20市町村はこのうちの原発事故に伴う避難者数を把握しており、本紙で「原発関連死」として集計したところ789人に上った。南相馬市といわき市は把握していない。
南相馬市の担当者は「事故後、市全域に避難指示を出した。震災関連死と認定した396人の大半は原発避難者とみられる」と話しており、これを合わせると原発関連の死者は千人を超えるとみられる。
254人が原発関連死だった浪江町では、申請用紙の「死亡の状況」欄に「原子力災害による避難中の死亡」という項目がある。町の担当者は「全員がこの項目にチェックしている。自殺した人もいる」と話す。
震災関連死の認定数は、福島より人口が多い宮城で856(8日現在)、岩手が361人(1月末現在)で、福島が突出している。復興庁は「福島は原発事故に伴う避難による影響が大きい」と分析している。
認定数の多さだけではなく、影響が長期に及んでいるのも福島の特徴だ。震災後一年間の震災関連死の認定数は福島が761、宮城636、岩手193。その後の一年の認定数は福島が576、宮城が220、岩手が168。今も申請は続き「収束が見えない」(浪江町)という状況だ。
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◆高市氏発言「実情知らない」…福島から批判の声
(2013年6月18日 産経ニュース)
自民党の高市早苗政調会長が、東京電力福島第1原発事故で死者は出ていないと述べたことについて、福島県では18日「あまりにも原発事故の実情を知らない発言だ」と批判の声が上がった。
震災による避難で体調が悪化して死亡したり、自殺に追い込まれたりした場合、自治体が「震災関連死」と認定し、災害弔慰金を支給している。
福島県によると、県の震災関連死は1415人で、被災県の中で最も多い。県は「原子力災害は収束していない。政府・与党には、福島の実情と県民の思いをあらためて重く受け止めてほしい」とコメントを発表した。
原発事故のため福島県楢葉町からいわき市に避難している男性(54)は「憤りを感じる。父を含め、事故さえなければ生きられた人はたくさんいたはずだ」と強く批判した。
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◆高市氏が「原発事故で死者いない」 与野党から批判
(2013年6月18日 産経ニュース)から抜粋
自民党の高市早苗政調会長が17日の講演で、「福島第1原発も含めて死亡者が出ていない」と発言したことに対し、18日、与野党から批判が相次いだ。高市氏は同日、「誤解されたのならしゃべり方が下手だったかもしれない」と国会内で記者団に釈明した。
高市氏は「被曝(ひばく)で直接亡くなった方はいないが、安全基準は最高レベルを保たないといけないと伝えたかった」と説明。
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◆高市氏が発言撤回、陳謝 県民「謝罪で済まない」
(2013年6月20日 福島民友ニュース)
自民党の高市早苗政調会長は19日、東京電力福島第1原発事故で死者が出ていないとして原発再稼働に意欲を示した自身の発言について「全てを撤回し、おわび申し上げる」と陳謝した。
被災者は厄介者か 謝罪では済まない/県民の声
自民党の高市早苗政調会長が東京電力福島第1原発事故で死者が出ていないと発言した問題で、19日の発言撤回、陳謝を受けてもなお、原発事故の影響に苦しむ県民の憤りは収まらなかった。
郡山市の仮設住宅に避難する双葉町の小川貴永さん(42)は「震災関連死が交通事故より高い確率で相次いでいる現実に対し、あまりに非人道的な発言。国民の安全や命より、経済効率を優先する国の姿勢が見えた」と断じた。その上で「原発事故の原因究明もないまま、国内原発の再稼働を探り、海外に原発を売るため、国にとっては原発事故の被災者がもはや厄介者ということなのか」と政府・与党の対応に疑念を抱いた様子だ。
自宅の避難指示が解けず、仮設住宅で暮らす川内村の小野悦子さん(71)は「自宅を目の前にして今も帰れない人たちもいる。あまりにも配慮に欠けた発言ではなかったか」と話した。
また政治家の資質を問う意見も。いわき市の管野博さん(57)は「政治家の発言の重みを知っているのか。謝れば済む問題ではない」と指摘。会津若松市の仮設住宅に避難する大熊町の高瀬重子さん(65)は「双葉病院の患者は原発事故の避難の中で50人も亡くなった。被災地の苦しい思いを知らない政治家には辞めてもらいたい」と語気を強めた。