日赤、被曝線量が1ミリシーベルトを超える恐れがあれば、退避

日赤、原子力災害時に救護指針「累積被曝1ミリまで」
 (2013年6月16日 朝日新聞)から抜粋

 日本赤十字社が、原子力災害時の医療救護の活動指針を作った。住民の立ち入りが制限される警戒区域内には入らず、累積被曝(ひばく)線量が1ミリシーベルトを超えない範囲で活動すると決めた。1ミリは一般住民の平常時の年間限度。これに対し、被曝医療の専門家から「被災者への救護、対応が十分にできない」と見直しを求める声が出ている。

 日赤は法律により、災害時の被災者の救護が業務の一つと定められている。医師1人、看護師3人、運転手1人、事務職員1人が1組の救護班を全国に500組以上、組織している。

 東日本大震災では延べ900組の救護班が被災地に入ったが、当初、原子力災害への備えがなく、東京電力福島第一原発事故直後の福島県内では、救護班がいない「空白期間」が生じた。その反省から、原子力災害の活動指針を作ったという。救護班は線量計や安定ヨウ素剤を携行し、累積被曝線量が1ミリシーベルトを超える恐れがあれば、安全な地域に退避するとした。

【追記】
日本赤十字社 原子力災害における救護活動マニュアル(2016年3月修正版)
説明・要約 から抜粋
日本赤十字社(以下、日赤)は、「原子力災害における救護活動マニュアル」を作成し、警戒区域外で活動する一般の災害救護に携わる救護班に許容される累積被ばく線量を1ミリシーベルトとしました。作成に当たっては、国際放射線防護委員会(ICRP)が一般市民に対する1年間の実効線量限度の勧告に準拠することとしました。

原子力災害における救護活動マニュアル 全文

福島の帰還基準、避難者増を恐れて強化せず 民主政権時
(2013年5月25日 朝日新聞)から抜粋

 福島第一原発の事故で避難した住民が自宅に戻ることができる放射線量「年20ミリシーベルト以下」の帰還基準について、政府が住民の安全をより重視して「年5ミリシーベルト以下」に強化する案を検討したものの、避難者が増えることを懸念して見送っていたことが、朝日新聞が入手した閣僚会合の議事概要や出席者の証言で明らかになった。

 民主党政権が2011年12月、三つの避難区域に再編する方針を決め、安倍政権も継承。再編は今月中に川俣町を除く10市町村で完了し、20ミリ以下の地域で帰還準備が本格化する。避難対象や賠償額を左右する基準が安全面だけでなく避難者数にも配慮して作られていた形で、議論が再燃する可能性がある。

原発避難区域と5ミリシーベルト地帯

 5ミリ案が提起されたのは 11年10月17日、民主党政権の細野原発相、枝野経済産業相、平野達男復興相らが 区域再編を協議した非公式会合。 議事概要によると、事故当初の避難基準 20ミリと 除染目標1ミリの開きが大きいことが議論となり、細野氏が「多くの医者と話をする中でも 5ミリシーベルトの上と下で感触が違う」と5ミリ案を主張した。

 チェルノブイリ事故では 5年後に 5ミリの基準で住民を移住させた。 年換算で 5.2ミリ超の地域は 放射線管理区域に指定され、原発労働者が同量の被曝で白血病の労災認定をされたこともある。 関係閣僚は「5ミリシーベルト辺りで 何らかの基準を設定して区別して取り組めないか検討にチャレンジする」方針で一致した。

 ところが、藤村修官房長官や川端達夫総務相らが加わった10月28日の会合で「住民の不安に応えるため 20ミリシーベルト以外の線引きを考えると、避難区域の設定や自主避難の扱いに影響を及ぼす」と慎重論が相次いだ。 5ミリ案では、福島市や郡山市などの一部が含まれ、避難者が増えることへの懸念が政府内に広がっていたことを示すものだ。

 11月4日の会合で「1ミリシーベルトと20ミリシーベルトの間に明確な線を引くことは困難」として 20ミリ案を内定。出席者は「20ミリ案は甘く、1ミリ案は 県民が全面撤退になるため、5ミリ案を検討したが、避難者が増えるとの議論があり、固まらなかった」と証言し、別の出席者は「賠償額の増加も見送りの背景にある」と語った。

 当時、5ミリシーベルト/年 地帯は、福島県内の13%に当る 1778km2。 地元自治体は、避難区域が拡大して、人口流出や風評被害が広がることを懸念していた。会合に出席していた閣僚の一人は、「5ミリ案では人口が減り、県がやっていけなくなることに加え、避難者が増えて賠償額が膨らむことへの懸念があった」と証言した。

 安倍政権もこの立場を踏襲しており、改めて 説明を迫られそうだ。

安倍政権に変わって、原発輸出や再稼働などの原発推進政策が強まる中で、住民の被ばく対策は後退しており、民主党政権時代に成立した「子ども被災者支援法」は実施されず、内容が骨抜きにされています。


東日本の放射線管理区域 どのように日本が汚れたのか?
(2012年12月22日 小出裕章氏講演録)から抜粋

私は京都大学原子炉実験所という所で、原子炉や放射能を相手に仕事をしています。ただし私は被ばくをしたくありません。出来る限り被ばくをしないように常日頃から気を付けています。普通仕事は、自分の研究室という所で、放射能が全くない、汚染の無いところで仕事をしています。それでも仕事がら放射能を使うという事はあるわけで、そういうときはどうするかというと、放射線管理区域というところに入って仕事をします。みなさんは入ってはいけない場所です。

私のように特殊な人間だけが、特殊な仕事をする時に限って入って良いというのが放射線管理区域です。私が放射線管理区域に入った途端に、私は水を飲むことが許されなくなります。食べ物ももちろん食べられません。そこで寝てもいけない。仕事が終わったらさっさと出て来いというのが放射線管理区域ですが、でも、簡単には出られないのです

私は仕事を終えてなるべく早く管理区域外に出たいと思いますけれども、管理区域の出口に行くと、扉が閉まっていて開かない。出られない。その扉をあけるためには一つの手続きをしなければいけせん。扉の前に放射線汚染の検査装置が置いてあります。「その検査装置でお前の身体が汚れていないかどうかを測れ」ということになっている。しかし、私は放射能を使って仕事をしたわけですから、私の衣服が放射能で汚れているかもしれない。私の手が放射能で汚れているかもしれない。

汚れたまま管理区域の外側に出てしまえば、普通のみなさんが生活をしているわけで、普通のみなさんを被曝させてしまう。それはやってはいけない事だから、ちゃんと測って、衣服、手、足などが汚れていないかどうかを確認しなければドアが開かないという、そういう仕組みになっている

では、その時にドアが開く基準はいくつか?というと、1平方メートル当たり4万ベクレルです。

もし私の実験着が1平方メートルあたり4万ベクレル以上で汚れていれば、私はその実験着を管理区域の中で脱いで放射能で汚れたゴミとして捨ててこなければいけないのです。私の手が1平方メートル当たり4万ベクレルの放射能で汚れていれば、私は出られないのです。管理区域から。

管理区域の中に流しがありますので、そこで手を洗って、手を綺麗にしろ。水で洗って落ちなければお湯で洗って落とせ。お湯で洗って落ちないなら、石鹸を付けて洗って落とせ。それでも洗って落ちなければ、もうしょうがないから手の皮膚が少しぐらい破れても良いから薬品で落とせという、1平方メートル当たり4万ベクレルを下回らない限りは、管理区域の中から外へ出られない。それが基準だったのです。

クリアな関東汚染地図・小出講演

この青のところは、少なくても6万ベクレルを超えて汚れている。その周りのくすんだ緑のところだって、3万ベクレルから6万ベクレル汚れている。私の実験着が汚れている、私の手が汚れているという事とは違うのです。大地がみんな汚れている。

メチャクチャな汚染だと、私は思います。

福島県の東半分、
宮城県の南部と北部、
茨城県の北部と南部、
栃木県・群馬県の北半分、
千葉県の北部、埼玉県・東京都の一部、
あるいは新潟県の一部であるとか、岩手県の一部

そんなところまでが放射線の管理区域にしなければいけない、というほどの汚染を受けているのです。

小出さん・放射線管理区域・日本地図

何度も言いますが、放射線管理区域というのは、私のような特殊な人間が特殊な仕事をする時に限って入って良いという場所なのです。 普通の人は入ってはいけないし、子どもなんていることは、到底許されないという場所がこんなに、広がっている。ということです。

全文

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