この2月に来日するセヴァン・スズキさんが2008年4月に来日したとき、いくつもの会場で、原発と再処理工場について、発言しました。それらをまとめると次のような内容でした。「ヒロシマ・ナガサキでおこった核の記憶を長い間意識してきました。水俣を訪問して、工場排水の中の水銀がひき起こした中毒について学びました。核燃料再処理工場がある青森県の六ヶ所村にも行きました。ここで起きている問題は、日本だけでなく世界の問題です。再処理工場から放出される放射性物質は、空と海に流れ、国境を越えて世界中に流れて行く。それは将来世代の、地球全体の問題です。それが私たちの世代で始まってしまうことを1人1人が話し合わなければなりません。原子力発電や再処理工場が未来に与える影響は、次の世代への究極の犯罪だと思います」と、現代人が未来世代に対して加害者となることを自覚すべきで、加害行為をこのまま続けるのか―と問うています。このことをセヴァンは、別の言い方で「世代間の愛を取り戻す必要がある」とも表現しています。
そして、福島の原発事故が起こる前年に封切られた映画『セヴァンの地球のなおし方』の中では、「原子力発電という悪魔との契約は人類に必要ないと思っています」とも語っています。
◆六ヶ所再処理工場営業運転の危険(3)
ストップ『ロッカショ』トーク あまりにリスキーな放射能
(2008/04/17 JANJAN桐生広人)から抜粋
ストップ『ロッカショ』トーク、春の嵐の悪天候の中、二百数十人の若い参加者で会場はほぼ埋まった。坂本龍一、セヴァン・スズキ、河野太郎、福島瑞穂、中村隆市、スギゾー(SUGIZO)、桑原茂一、シンゴツー(Shing02)、大林ミカの各氏が、リスキーな放射能について、半減期の長いプルトニウムを生産する懸念についてなど、それぞれの思いを語った。
司会の大林ミカさん(市民エネルギー研究所・副所長)は「坂本龍一さんが2006年に立ち上げた、ストップロッカショというウエブサイトの情報などを基にアーティストの方々にメッセージをいただいて作った本なんです。今日のトークは坂本さんの提案で、出版記念をかねて原子炉や再処理だけでなく環境やエネルギーなどについて皆さんと話ができればと思っています」といい、アーティストとの声を参加者とシェアするイベントとなった。
セッション1 左から、SUGIZOさん、中村隆市さん、セヴァン・スズキさん、通訳の方、大林ミカさん
NYの坂本龍一さんからメッセージ
当日参加できなかった坂本さんはニューヨークから「Sugizoくんが中心になってまとめた本、『ロッカショ』も大きく貢献しているのでしょう。六ヶ所村再処理工場のことが次第に世の中に知られるようになってきた気がします。(略)人間には完全ということはありません。必ず失敗をします。それを考えれば、放射能を扱うのはあまりにリスキーではないでしょうか。(略)よりリスクの少ない多様な自然エネルギーに依拠した社会に速やかに移行するより他に選択肢はないように思うのですが、皆さんはどう思いますか?」というメッセージを寄せた。
地球サミットで「伝説のスピーチ」をした『少女』が参加
トークセッション1では、1992年にブラジルのリオ・デジャネイロで行なわれた地球サミットに当時12歳で参加し、のちに「伝説のスピーチ」と呼ばれる演説をしたセバン・スズキさんが参加した。
セヴァンさんは「ヒロシマ・ナガサキでおこった核の記憶を長い間意識し、水俣では排水の中の水銀が起こす中毒について学びました。六ヶ所にも行きました。ここで起きている問題は日本だけでなく世界の問題です。六ヶ所から流される核廃棄物、海に流れるものに国境はありませんから海を越えて私たちの(カナダの)家にだってやってきます。それは将来世代の、地球全体の問題です。それが私たちの世代で始まってしまうことに1人1人が話し合わなければなりません」と話した。
カナダ在住の環境活動家、セバン・スズキさん。お父さんは日系3世
スロービジネススクール校長の中村隆市さんは、いま六ヶ所で大量に作られようとしている(*)プルトニウムについて、「半減期が2万4千年もあります。40年間工場を運転すると12万年、約4千世代たってもプルトニウムが残ってしまいます。私たちは後の世代に大きな影響を残す加害者になろうとしていることが問題です。地元の人々が、核燃施設に依存しなくても生きていける持続可能な社会づくり、エコビレッジを再処理工場の近くに作ろうとしています」という。
どうしてもこのトークに出たかったという福島瑞穂さん(参院議員・社民党党首)は、「超党派の議員が最近六ヶ所に視察に行きました。活断層が敷地の下まできている可能性を工場側は認めていますが、それでも安全だと言うんです。旧指針で建てられた工場は、新しい指針で耐震設計をし直すべきで、本格稼働などとんでもないことです。再処理費用が19兆円かかることを、反対されると困るとして長い間かくしてきました。工場は豆腐の上に建っているようなもので、本格稼働して事故があっても隠される可能性があります。ストップ・ロッカショ、今が正念場です」と話した。
(*)についての中村のコメント
原発で発電することによって生み出されるプルトニウムは、使用済み核燃料のさやの中に収まっているが、それを再処理することによって、「六ヶ所(再処理工場)から海と空に放出される」その結果、魚介類や海草などにプルトニウムが蓄積することを青森県も認めている。
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◆映画「セヴァンの地球のなおし方」
(2011/07/19 エコロジーの風)から抜粋
友人でもあるセヴァンの映画が上映されています。素晴らしい映画です。
皆さん、ぜひ見て下さい。広島に原爆が落とされた日に トークすることになりました。セヴァンは、東京電力の原発事故が起こる前からこんなふうに言っていました。「原子力発電とそれが未来に与える影響は、次の世代への究極の犯罪だと思います」
◆映画『セヴァンの地球のなおし方』
「原子力発電という悪魔との契約は人類に必要ないと思っています」
「どうやってなおすかわからないものを、壊し続けるのはもうやめてください」。1992年、リオデジャネイロで開催された地球サミットで、12歳の少女、セヴァン・スズキは大人たちに環境破壊を止めるよう訴えかけた。
その伝説のスピーチから、来年で20年。セヴァンは「大切なのは生活の質と健康、そして子供。だから私は自己中心的に、自分たちをどう救うかを考えていきたい」と、未来の子どもたちのために発言を続けている。セヴァンが今、世界に伝えたいこと、そして彼女の声に呼応するかのように、日本とフランスで傷ついた地球と向き合い続ける人々の姿を追ったドキュメンタリー。
2009年に映画『未来の食卓』でフランス、バルジャック村の、学校給食と高齢者の宅配給食をオーガニックに変えるという挑戦をドキュメントしたジャン=ポール・ジョー監督。続編である本作の製作にあたり、ジョー監督は自分の発言に責任を持って行動に移すよう大人たちに変革を求めるセヴァンの姿に感銘を受け、彼女を中心に本作を製作することを決意した。
19年前のセヴァンのスピーチの後、地球を取り巻く状況は変わっていない。しかし29歳となったセヴァンのお腹には新しい生命が宿った。自らが子どもを守る”大人”となった今、セヴァンはカナダのハイダグワイ島で自然と共存する生活を実践し、世界中の人々に再度訴えかける。行動を起こすなら今がその時だ、と。
そして歯止めの効かない環境破壊や相次ぐ原発の事故を受け、多くの人々がこれまでの自らの無関心を省みる中、セヴァンが19年前に抱いた危機感を共有し、行動を起こしてきた人々がいる。ジョー監督は、福岡県で合鴨農法によってオーガニック米を作る古野農場の百姓百作の精神、地域の子どもたちのために161人の農婦が無農薬食材を育てる福井県の池田村、『未来の食卓』の題材にもなったフランス、バルジャック村近くの原子力発電所の問題や村のその後の様子、コルシカ島のワイン農家、アレナ一家がビオワインに込めた島への思い、そして13歳にしてサメの乱獲反対を訴え組織を立ち上げた少女オンディーヌの活動を取材。彼らは地球の悲鳴を肌で感じ、セヴァンと志をひとつにする。
フランス人環境ジャーナリストのニコラ・ウロ、人間性の回復を長年説いてきた農民であり思想家のピエール・ラビ、遺伝子組み換えの危険性をいち早く唱えたエリック・セラリーニ教授もまた、セヴァンの同志であり、経済優先の社会に警鐘を鳴らす。
「私たちが考えるべきことは、現実に起こっているさまざまな環境問題の先にどんな未来が待つのか、ということ。私たちの子どもの未来を守るために、生き方を変えなくては」。セヴァンは私たちに、そして自分自身にそう語りかける。
『セヴァンの地球のなおし方』(2010年/フランス/120分)
監督:ジャン=ポール・ジョー(『未来の食卓』)
プロデューサー:ベアトリス・カミュラ・ジョー
出演:セヴァン・スズキ、ハイダグワイの人びと、古野隆雄、福井県池田町の人びと、バルジャック村の人びと、ポワトゥーシャラントの人びと、コルシカ島の人びと、オンディーヌ・エリオット、ニコラ・ウロ、ピエール・ラビ、他
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