島根原発 ずさん定検で運転停止ー検査漏れ123件 記録ないものも

なぜ、原発ではこんなに「違反」や「点検漏れ」が繰り返し続くのだろう?
経済産業省原子力安全・保安院は、何のためにあるのだろう?

島根原発:123カ所で点検漏れ 1号機の運転停止 (毎日新聞)

中国電力(本社・広島市)は30日、島根原発1、2号機(いずれも松江市)で計123カ所の点検漏れがあったと発表した。機器が点検計画通りに交換されていないのに、点検していたことにされていた。同社は1号機の運転を31日から停止、定期検査のために運転停止中の2号機と共に点検する。経済産業省原子力安全・保安院によると、点検漏れを原因とした原発の運転停止は初めて。【細谷拓海、岡崎英遠】

 中国電力は「放射能漏れなど安全面での問題はない」というが、ずさんな安全管理の実態が明らかとなった。

 同社は30日、保安院に報告。保安院は「保守管理が適切にされていないことは遺憾」として、4月30日までに、原因と再発防止策について報告するように指示した。

 報告書によると、点検漏れがあったのは、1号機が、異常時に原子炉内に水を送る高圧注水系のタービンを回すための「蒸気外側隔離弁」など14系統74カ所、2号機が8系統49カ所。うち、法律で定められた検査対象は、38カ所と23カ所あった。

 09年6月の定期検査で、蒸気外側隔離弁のモーターが、06年9月からの定期検査で取り換えるはずだったのに実施されていなかったことが発覚。ポンプのパッキンやボルトなど計123カ所の点検漏れが分かった。機器の中には、1989年以降、点検されていなかったものもあるという。

 中国電力によると、機器のサイズが合わず交換できなかった場合などに、点検部署が点検管理部署にその事実を伝えていないことがあった。管理部署は確認しないまま、点検したものとして処理していたという。
 ◇中国電力「検査したか、分からないものも」

 中国電力は30日午後、島根県庁で記者会見した。清水希茂・島根原子力本部長らが「心配をおかけしたことについて、誠に申し訳なく、深くおわび申し上げます」と謝罪した。点検記録の保存自体がずさんで「検査したかどうか分からないものもある」と説明するなど、無責任な安全管理体制が浮き彫りになった。

 会見では、「安全管理意識が決定的に欠如していないか」といった質問が矢継ぎ早に飛んだが、幹部たちは答えに詰まりながら「全力で安全管理に努めたい」と繰り返すだけだった。「いつからこんな事態になったのか」との質問に対し「点検記録が残っている中で最も古いのは89年の1号機。記録が残っていないものもあり、検査したのか、していないのか、分からないものもある」といった回答まで飛び出した。【岡崎英遠、目野創】
 ◇形骸化する「自主検査」

 原発1基の点検項目は数万件と膨大で、国が逐一検査できないため、電力会社が自ら安全運転に必要な「保安規定」を決めて定期検査し、国が不備を抜き打ち審査する仕組みになっている。09年には、この自主検査体制への信頼性に基づき、国の定期検査を現行の13カ月間隔から最大2年間隔に延ばせる「新検査制度」が導入された。

 今回判明した問題は、こうした自主検査体制の信頼性を損なう恐れがある。中国電力は点検作業とその確認を別の部署で行う体制に改めた。しかし点検部署が発電所内の検討抜きで部品交換を見送った上に、確認部署も連絡がなかったため「交換済み」と記録するという形骸(けいがい)化した体制の一端が明らかになった。【山田大輔】
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毎日新聞 2010年3月31日 東京朝刊

島根原発1,2号機点検漏れ 管理体制に不信感 (読売新聞)

 島根原発1、2号機(松江市鹿島町)の点検漏れが発覚した30日、中国電力島根原子力本部の幹部が県庁で記者会見し、両機で計123件にも及ぶ膨大なミスについて謝罪した。県と松江市は、中国電力に保守管理の徹底を申し入れた。地元住民は原発の管理体制への不信感をあらわにした。

 記者会見には、島根原子力本部の清水希茂本部長らが出席。「多くの皆様に心配をかけ誠に申し訳なく、深くおわびする。今後、再発防止対策に全力で取り組む」と陳謝した。昨年6月の定期検査で、一部の機器で点検漏れがあることを把握していながら、3月に経済産業省原子力安全・保安院の調査を受けるまで報告していなかった。会見では、点検ミスについて、「意図的ではない」と強調した。

 既に定期点検のため原子炉を停止している2号機に加え、再点検のため31日から1号機も停止することを説明。「火力発電主体でまかなえ、今のところ問題はない」と強調したが、運転開始の時期のめどは立っていないという。

 記者会見に先立ち中電から報告を受けた松江市と県は、島根原子力本部の幹部らを呼び出し、安全管理について申し入れを行った。

 松江市役所では、小川正幸副市長が「再発防止策などへの対応に懸念を抱かせ、市民の不信感、不安感につながるため誠に遺憾」などとする松浦正敬市長名の申し入れ書を読み上げ、清水本部長に手渡した。小川副市長が「早急に原因分析を行い全社員が危機管理意識を持つよう努力してほしい」と強調すると、清水本部長は「市民、関係者の皆様におわびする。申し入れに対し、真摯に取り組みたい」と答えた。

 県も中電に「安全確保体制が不十分であったと言わざるを得ない。県民に分かりやすい形での情報公開や説明を行うよう強く要請する」などと溝口知事名で申し入れ。県防災センター室で、福田信夫・危機管理監が申し入れ書を清水本部長に手渡した。福田危機管理監は、4月中に松江市と同原発に立ち入り検査する考えを明らかにした。

 市民団体「島根原発増設反対運動」の芦原康江代表は「報告できていないことは、管理ができていないということで、重大な問題」と批判した。
(2010年3月31日 読売新聞)

島根原発で点検不備 123件、1号機は停止へ (中国新聞)

 中国電力は30日、島根原子力発電所(松江市鹿島町)1、2号機で、点検漏れにより同社が定めた期間を超えて機器を使用するケースが、弁の電動機、ヒューズなど計123件あったと発表した。31日に1号機を手動停止して詳細に点検する。18日から定期検査に入っている2号機も点検する。

 経済産業省原子力安全・保安院によると、点検の不備を理由とした原子炉停止は全国初という。中電は、施設の安全性への影響や放射性物質漏れはないと説明。島根原発が2機とも止まるが、電力供給にも問題ないとしている。1号機運転再開の見通しは不明。

 中電によると、1号機の定検中だった昨年6月、最初の点検漏れが判明。原子炉につながる高圧注水系配管に設置された弁の電動機について、点検計画表には「取り換え済み」と記録されていたにもかかわらず、2006年の定検で交換されていなかった。

 その後、1、2号機で「重要度の高い設備」と位置づける計約1万3千カ所を調査した結果、それぞれ73カ所、49カ所で計画表の記載と異なる超過使用が確認された。非常用ディーゼル発電機の弁の一部は1988年から未点検で、交換時期を10年近く過ぎていた。

 中電は、点検をする部署と、計画表を管理する部署の連絡ミスなどが主因と説明。担当者への聞き取りや、計画表に改ざんの跡などが確認できないなどの理由で「意図的ではない」としている。

 中電は同日、保安院に報告、島根県と松江市に連絡した。保安院は同日、原子炉等規制法などに基づき、原因、再発防止策などを4月30日までに報告するよう中電に指示した。(長久豪佑)

ずさん定検で運転停止へ=島根原発、100超点検漏れ?30年以上未点検個所も? (時事通信)
 中国電力島根原発1、2号機(松江市)で、定期検査項目のうち、少なくとも123件で点検漏れがあったとして、同社は30日、運転中の1号機を手動停止し、未点検個所の再点検を行うと発表した。定検中の2号機についても同様に確認する。
 経済産業省原子力安全・保安院によると、点検漏れが原因で稼働中の原発の運転を止めるのは初めて。
 中国電によると、1月下旬に原子炉格納容器内の圧力調整弁を動かす電動機が、点検期間を大幅に超過していたことがメーカーからの連絡で発覚。定検中の2号機を含め、同様の点検漏れを調査したところ、ボルトナットの交換や弁の分解点検など、これまでに計123カ所の未点検個所が判明した。
 島根原発では1号機は28回、2号機は16回の定期検査が行われている。点検を終えたかどうかを確認する際、未点検と確認されたものだけ連絡する体制を取っており、連絡がなければ点検したものとみなしていたため、チェック機能が働いていなかった。
 中には、1974年の運転開始以来チェックの形跡がなく、最悪の場合、30年以上未点検だった可能性も否定できない個所もあるという。(2010/03 /30-23:56)

島根原発、検査漏れ123件 点検・交換記録ないものも (朝日新聞3月31日)

 中国電力は30日、島根原発1号機と2号機(松江市鹿島町)で、定期検査で実施したことになっていた機器の交換や点検について、実際には実施されていなかったものが計123件あったと発表した。1号機では、大事故の際に炉心に水を注入する緊急炉心冷却システムにかかわる機器も含まれていた。同社は31日に1号機を停止する。経済産業省原子力安全・保安院は「保守管理と定期検査が適切に実施されていないことは遺憾」として、同社に対し定期検査中の2号機と合わせて再点検を指示した。

 同社によると、機器の中には1974年の1号機の運転開始以来、点検・交換記録がまったく残っていないものもあった。同社は「意図的なものとは考えておらず、原子炉の安全性にも問題はないことを確認した」としている。

 同社が今年1月に開いたトラブルなどの検討会で、1号機の原子炉格納容器に水を注入する機械の隔離弁を動かすモーターが、2006年9月?07年4月の定期検査で新品に取り換えて検査したことになっていたのに、実際には交換されていなかったことが確認された。

 定期検査の際、交換されるはずだったモーターが交換できず、そのことが作業担当部署から検査計画を管理する部署に連絡されなかったため、「交換された」として記録されたのが点検から漏れた原因という。

 このため、1、2号機について緊急時に使う装置など「重要度の高い設備」(同社)を調べ直し、このモーターに加えて、弁の分解やヒューズの取り換えなど、計123件(1号機74件、2号機49件)の点検が未実施だったことが明らかになった。さらに重要度で四つに分けると、最重要クラスは57件。

 モーター以外の機器については、点検の計画表を作る際、過去の点検日時などを誤って入力するなどしていたという。

 モーターの検査漏れは、昨年6月に担当部署が把握していたが、社内の検討会に報告したのは今年1月だった。同社は「認識に甘さがあった」としている。

 同社は30日、保安院と島根県、松江市に点検の不備を報告。保安院は同社の管理体制と未点検の機器がほかにないかどうか、電気事業法などに基づいて4月末までに報告するよう求めた。(大野正智、小堀龍之)

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