メキシココーヒー物語 第5話 持続可能な社会への道 トセパン・ティタタニスケ協同組合

メキシコの先住民族たちや生産者たちは、団結すること、組織化することで、不平等・不公正なグローバリゼーションに対して闘い続けてきた。その中で も、ナワット族の有機コーヒー生産者組合「トセパン・ティタタニスケ協同組合」の活動はモデルケースだと言われ、非常に多様で持続可能な活動を行ってい る。

組合のベースにあるのは、ナワット族の考え方、そして文化的背景であり、そこでは常に自然への敬意が払われている。彼らはいつも「母なる大地は、自分たちのプロジェクトの中心である」と表現する。

トセパン組合は、プエブラ州の山岳地方にあるケツァーランという町を拠点としている。組合員数は5,300世帯。ケツァーランを中心に7つの地域66の コミュニティに暮らす。一般的に、コーヒー栽培に適している標高は600?1200メートルだと言われているが、彼らが暮らす地域は、標高200?900 メートルに及ぶ。このうち、コーヒー生産を営む組合員は、標高400?900メートル内に暮らしており、標高200?400メートルではコショウを、 200メートル以下ではトウモロコシやサトウキビを生産する組合員たちが暮らしている。

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組合の本部があるケツァーランの町

トセパン組合がスタートしたのは1977年。食料や生活必需品が不足していたという現状と、コーヒー販売において高い仲介料を取る仲介業者に対抗し、自 分たちの暮らしを守り続けていこうと始めた組合運動が最初だった。これをベースとして1980年、正式にトセパン組合が設立された。環境や社会状況を悪化 させるグローバル化が進む中、自給的な作物と商品作物を栽培することで、安定した経営を目指してきた。

現在トセパンが生産し、販売している作物は、有機コーヒー、オールスパイス(香辛料)、マカダミアナッツ、シナモン、はちみつ、である。この他、コー ヒーの豆を加工する段階で出るコーヒー豆の果肉や皮を利用して堆肥をつくったり、機械用のアルコールを精製したり、資源を捨てることなく循環させて、さま ざまな活動を行っている。また、女性の自立を目指した活動も多く行われている。パン屋、トルティーヤ(とうもろこしからつくる主食)製造、日用品販売、手 工芸品製作と販売などがそれである。この他、近年、図書館、研修施設、パソコンルーム、宿泊施設を含む環境教育センター「カルタイクスペタニロヤン」を設 立。子どもから大人に至るまで、組合全体での環境教育に力を入れている。

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環境教育センター ”カルタイクスペタニロヤン”

各生産活動にはプロジェクトリーダーがそれぞれおり、グループごとのミーティングから始まり、全体総会も定期的に行われ、メンバーたちの意見や知識をシェアする場がきちんとつくられている。

トセパン組合のリーダーは、4年を任期とし、民主主義によって選ばれる。まず、66のコミュニティそれぞれから代表者が選ばれ、この66人の代表者会議 によって組合の代表者が選ばれている。組合の代表に選ばれる者には、ナワット語が話せること、知識と経験が豊富なこと、そして組合員の尊敬を得られるこ と、という3つの条件を満たすことが必要とされている。こうして選ばれたリーダーのもと、多様なプロジェクトが行われるのである。

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組合内での代表者会議

しかし、これだけ多様な活動を行っていくには、資金が必要となる。トセパンの人たちは、資金も外部に頼らず、組合内の活動に必要な予算や、組合員それぞ れが生産のために必要とする資金については、組合内に設けた自らの金融機関「トセパン・トミン」(ナワット語で、「お金はみんなのもの」を意味する)でま かなっている。お互いの信頼関係で成り立っているこの機関では、組合員は担保なしでお金を借りることができるが、だからと言って、ローンの返済が滞ったと いう事例はこれまで一つもない。


トセパントミン

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トセパントミンの報告集会

トセパン組合の活動が素晴らしいのは、環境や組合員一人一人に配慮した持続的な活動を行っているというのはもちろん、ナワット族の文化や伝統を守りなが ら、それを活動の中にしっかりと反映させているというところにある。このように、地域の環境や自らの文化を守りながら、独自の活動に取り組むトパンは、メ キシコ政府から「環境賞」や「フォーレスト賞」などを受賞し、高い評価を得るに至っている。

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