【ワシントン=勝田敏彦】米電力大手コンステレーション・エナジーは9日、米国で約30年ぶりとなる原発新設計画を凍結すると発表した。天然ガスの安値や建設費の高騰などで、連邦政府による現在の支援策では採算が取れないと判断した。この計画の炉はフランス製だが、同様の動きが他の計画にも広がると、米国へ原発売り込みを図る日本企業にも影響が出そうだ。
コ社の計画では、メリーランド州のカルバート・クリフス原発に、最新鋭の加圧水型炉(EPR)1基を新設する。炉を製造する仏アレバ社との共同企業体が2007年に建設許可を申請した。資金調達コストを下げる債務保証を連邦政府に申請し、条件面の交渉が続いていた。
コ社は「政府が示した保証内容では、当社は受け入れられないリスクとコストを負うことになる」として、交渉を打ち切る意向を示した。
コ社がエネルギー省に送った書簡によれば、保証を受けるため8億8千万ドル(約720億円)の支払いを求められた。地球温暖化対策法ができれば、温室効果ガス排出が少ない原発の競争力が増すが、成立が見込めないことや、天然ガスの安値、建設費上昇を理由に応じられないとした。
米国では79年のスリーマイル島原発事故以来、原発が新設されていない。海外の石油依存からの脱却を掲げるブッシュ前政権が建設を推進し、オバマ政権も債務保証枠を3倍にした。約30基の新設計画がある。東芝、三菱重工業、日立製作所も受注を狙っており、「原子力ルネサンス」とも言われるが、資金計画次第で建設推進の流れが滞る可能性も指摘されてきた。
(2010年10月10日 朝日新聞)