2011年3月15日1時16分 朝日新聞
【ベルリン=松井健】ドイツのメルケル政権は14日、国内の原子力発電所の運転を延長する政策を3カ月間凍結することを決めた。ドイツは昨秋、世界的な「原子力ルネサンス」の流れの中、シュレーダー前政権の原発全廃方針を転換し、原発延命に転じていたが、福島第一原発の事故で、原発の安全性への不安が噴出していた。今後、すべての原発の点検を進め、福島の事故も参考にしながら安全性を新たに判断していくとしている。稼働年数の長い原発が運転停止になる可能性もある。
メルケル首相とベスターベレ副首相兼外相が14日、会見で明らかにした。メルケル首相は、ドイツでは日本のような巨大地震や津波の可能性は低いとしながら、「安全性の点検にタブーはない」と述べた。ドイツではメルケル政権の「脱・脱原発」政策への反発も強く、政権の支持率低迷の一因にもなっていたところ、今回の福島第一原発の事故で新政策の凍結を余儀なくされた形だ。
メルケル独首相、国内原発の稼働延長を凍結 福島原発事故を受け
【3月15日 AFP】(一部更新)ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相は14日、福島第1原発の事故を受け、同国の原発の稼働年数を2030年代半ばまで延長する計画を3か月間凍結すると発表した。この発表は、1970年代半ばから稼働していた原発の閉鎖を意味するとみられている。
メルケル首相はベルリン(Berlin)で会見し、「日本で起こった出来事は、これまで絶対ないと考えられてきたリスクが絶対ないとは言えないという事実を教えてくれている。たんにこれまで通り、このまま進めることはできない」と述べた。
この発表は、ドイツで1970年代半に稼働開始した原発の閉鎖を意味するとみられている。メルケル首相は15日、関係閣僚と原発がある州の首相らとドイツの原子力政策をめぐる協議を行う。
ドイツ南西部シュツットガルト(Stuttgart)近郊のネッカーヴェストハイム1号機(Neckarwestheim 1)は、前年、メルケル首相が世論の反対を押し切って稼働年数を延長していなければすでに閉鎖されていたはずだった。他にもフランクフルト(Frankfurt)南部のビブリスA号機(Biblis A)やバイエルン(Bavaria)州のイザール1号機(Isar I)なども直ちに閉鎖される可能性がある。
■国民の反対根強い原発
ドイツでは、ゲアハルト・シュレーダー(Gerhard Schroeder)前政権が2002年、国内に17ある原発の運転を2020年までに停止する脱原発法を制定。だが09年に再選されたメルケル首相は2010年、原発の稼働年数を延長する決定を下した。理由については、「グリーンテクノロジーは原子力エネルギー廃止の穴埋めをできるほど発達していない」と説明していた。
環境意識の高いドイツでは、放射性廃棄物の持ち込みに対し抗議デモが頻発するなど、核エネルギーに対する反発は根強い。原発の稼働年数延長についても、各種世論調査では有権者の大多数が反対している。稼働年数の延長は環境よりはエネルギー会社の利益を優先したものだとの意見も多い。
独テレビ局ARDが909人を対象に実施し、15日に発表した調査では、回答者の53%がすべての原発を迅速に閉鎖させるべきだと回答した。また、回答者の70%が、日本で起きた事故と同様の事故がドイツでも起こりえると考え、80%がメルケル首相に稼働年数延長の撤回を求めた。
環境保護活動家らは14日、連邦首相府前などドイツ各地で反核デモを行った。
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