放射能は、細胞分裂の活発な子ども(胎児や幼児など低年齢)ほど大きな被害を受けることが知られているが、この間、原発を推進する傾向が強かった朝日新聞が原発事故の後、こんなことを書いている。
<避難では、子どもを最優先する。チェルノブイリ事故の経験では、幼い子どもは大人に比べ甲状腺がんになる確率が100倍以上も高い。「放射能からまず子どもを守る」を社会で共有したい。>
これまで、原子力委員会の初代委員長で「原子力の父」とも呼ばれる人が社主だった読売新聞や日本テレビだけでなく、多くの新聞社、テレビ局が原発や核燃料再処理工場の問題を本格的に取り上げてこなかった。
これまでの日本は、何よりも「経済成長」を優先し、いのちや自然を大事にしてこなかった。だから、「放射能からまず子どもを守る」といった意識も持ち合わせていなかった。これからは、社会全体が「子どもを守る」「いのちを大切にする」という意志を持って、それが本当に実行される社会をみんなで創っていきたい。
以下朝日新聞の記事
◆最悪の事態に備えを 福島第一原発事故
2011年3月15日 朝日新聞
極めて深刻な放射能放出が始まった。すでに福島第一原発の敷地周辺では高い放射線量が検出されている。事故は今後、1986年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故と比較して語られることになる。
同原発には1ー6号機がある。2号機は格納容器につながる圧力抑制室が損傷して放出を始め、1、3号機も炉心で核燃料が水面から露出して危険な状態が続く。
点検で地震前から原子炉を停止していた4号機でも爆発が起きた。水素を出す原因はプールにある使用済み燃料のようだ。もし水面上に露出していたら極めて強い放射線が作業を妨げるだろう。
今や一列に並んだ4基の原子炉が同時に制御不能な状態に陥りつつある。
最悪事態に備えなければならない。まずは放射能の放出の元を断つことだ。危険を伴う作業だが、人と土地の汚染を最小に食い止めるのは時間との闘いだ。日本がお金と時間をかけて蓄積してきた原子力技術を動員して東京電力を支えなければならない。
被曝(ひばく)回避では初期の行動が重要になる。放射性物質は小さな粒子状になって風で運ばれて拡散する。見えない煙やちりのイメージだ。風向きに注意し、高濃度汚染の襲来を避けることが必要だ。
避難では、子どもを最優先する。チェルノブイリ事故の経験では、幼い子どもは大人に比べ甲状腺がんになる確率が100倍以上も高い。「放射能からまず子どもを守る」を社会で共有したい。
多くの人は信じがたい思いでニュースを見ているだろう。未曽有の地震と津波が原因とはいえ、日本は技術先進国の誇りと、被爆国の慎重さをもって原子力を開発してきたはずではなかったか。
これは戦後、原子力をエネルギー政策の柱に置き、利用を享受してきた日本の歴史の一つの帰結だ。社会全体で受け止めなければならない。
被災地は家も食糧もエネルギーも足りない。家族を失った人も多い。日本社会全体で支えることだ。日本社会の強さが問われる。(編集委員・竹内敬二)