全原発 国が追加安全検査  EUでは、中間評価までに約3カ月

全原発安全検査へ (東京新聞)

2011年7月6日 13時52分

 海江田万里経済産業相は六日、九州電力玄海原発2、3号機など運転停止中の原発の再稼働問題を受け、経産省原子力安全・保安院が追加の安全対策として安全検査「ストレステスト」を近く実施することを表明した。菅直人首相も「原発の安全性について、従来のルールだけでは不十分だ」と述べ、追加対策を指示したことを明らかにした。

 佐賀県玄海町だけでなく原発を抱えるすべての地域住民らの不安を解消、原発の稼働に理解を求める狙い。対象は、稼働中のものも含めた全原発で、欧州連合(EU)で六月から実施した安全対策を導入する方針。地震や津波、全電源喪失などを想定して解析するが、詳細な内容は今後、原子力安全委員会と協議して決める。実際の解析作業は各電力事業者が行い、国がその結果を評価するという。

 安全検査は、六月下旬に開かれた国際原子力機関(IAEA)閣僚級会合でも、必要性が指摘されていた。経産省側は、安全検査と再稼働は直接関連しないとしているが、地元自治体などは結果が出るまで判断を先送りすることも想定され、運転停止中の原発の再稼働に大きく影響する可能性も出てきた。

 経産相は「玄海原発の安全性は確認されていると思っているが、不安を抱いている住民らに安心してもらうため」と説明している。

 玄海原発をめぐり、地元立地自治体の玄海町長は運転再開に同意しているが、近隣自治体は同意していないほか県議会でも反対の意見が出ており再稼働のめどが立っていない。

 安全検査の実施を受け、夏の需要ピークに向けた電力供給への不安は一層高まりそうだ。ただ、経産相は「電力需給に問題がないよう責任を持つ」と強調した。

 東京電力福島第一原発事故を受け、経産省は三月末、電力各社などに、緊急の安全対策として地震・津波対策の強化を要求。さらに六月、深刻な原発事故(過酷事故)に備えた安全対策を指示。その結果、経産相は六月十八日に「適切に(対策を)実施している」との評価を公表し、地元自治体に原発の再稼働を要請する考えを表明していた。

(東京新聞)


原発のストレステストとは (日本経済新聞)

2011/7/6 12:55

 ▼原発のストレステスト 原発の設備が安全基準で決められた水準をどの程度上回っているかを調べる評価作業。大きな地震や津波などの際の安全性にどの程度余裕があるかが分かる。個々の原発の弱点を明らかにし、補強につなげて安全性を高める狙いもある。東京電力福島第1原発の事故後に実施を決定した欧州連合(EU)では、中間評価までに約3カ月かかるとしている。


全原発で追加安全検査へ 佐賀県知事の懸念、現実に
2011.7.7 02:09

 ■「再稼働要請何だったのか」

 国が全原発に追加安全検査(ストレステスト)を実施すると発表し、菅直人首相が国会で「原発の安全性について、従来のルールだけでは不十分だ」と述べた6日、九州電力玄海原発が立地する佐賀県では、古川康知事が再開判断の延期を表明。庁内では「経産相による原発再稼働要請は何だったのか」と、政府に振り回される状況に憤怒の声が渦巻いた。

 6日の衆議院予算委員会の質疑をテレビで見守った佐賀県原子力安全対策課の今村盛史課長は「寝耳に水だ。毎日毎日状況が変わる」と疲れきった様子。

 県幹部は「知事の懸念が、最も悪い形で出てしまった。8日の県民説明会や県議会での議論にも間違いなく影響する。経産相が訪問したときとは、180度状況が変わってしまった」とため息をついた。

 玄海原発をめぐっては6月29日、海江田万里経産相が佐賀県を訪問し、古川知事は「菅首相は再生エネルギーについて雄弁に語るが、再稼働についての言葉はない」と述べ、再稼働に対する首相の認識をただした。背景には、中部電力浜岡原発の停止要請に代表される菅首相の原発に関する言動への不信感がある。県幹部は「経産相の政治判断に(佐賀県が)応じた後で、菅首相が“脱原発”を打ち出し、国からはしごを外されることを知事は心配している」と説明した。

 知事との会談で海江田経産相は「総理と私の間で、意見・考えの違いはない」と強調。古川知事は会談後に「安全性の問題はクリアされた。後は県議会の議論の動向をみて判断する」と運転再開に前向きな姿勢を示しつつも「首相の説明が重要」と念を押していた。

 古川知事は6日、県庁内で記者団に「何でこの時期になってと驚いている。菅首相の真意や政府としての統一見解がないと最終判断はできない。はしごを登る前にたたいてみてよかった」と話した。

 古川知事は7日に枝野幸男官房長官を訪ね、原発再開や一連の政府の対応について協議する。


全原発、災害時の安全性調査 経産相表明 (日本経済新聞)

2011/7/6 10:59

 海江田万里経済産業相は6日朝、原発が自然災害など最悪の事態に耐えられるかを調べるストレステスト(耐性調査)を全国で実施すると表明した。経産省は耐性調査自体は原発再稼働の条件にはならないとしている。ただ、地元自治体の受け止め次第では、運転停止中の九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)2、3号機の再稼働問題などの判断に影響を与える可能性もある。

 海江田経産相は記者団に、「安全性はすでに確保しているが、地元住民のより一層の安心を得るためにストレステストを実施する」と述べた。稼働中も含めた全原発が対象で、玄海原発など再稼働待ち状態の原発を優先する。

 ストレステストは安全基準に対し設備の余裕がどれだけあるかを調べ、地元自治体や住民に情報提供する。テストにかかる期間や方法、項目などは不明。保安院と原子力安全委員会が共同で詳細を決める。

 国際原子力機関(IAEA)は6月に加盟国の全原発ストレステスト実施で合意。欧州連合(EU)も自然災害時の耐久性能を点検する計画を作っており、海江田経産相は「IAEAやEUの知見も参考にする」と述べた。

 EUは地震や津波などで冷却機能が損なわれる、燃料棒の格納容器が壊れるなど3ケースを想定した対策がとられているかなどを調べる。各国が最終報告をまとめるのに7カ月かかる見通しだ。

 玄海原発の再稼働を巡っては、古川康佐賀県知事が最終判断の時期を7月中旬が一つの節目としてきた。

 東京電力福島第1原発の事故後に経産省原子力安全・保安院は、地震や津波に備える緊急安全対策や炉心損傷などの過酷な事故を想定した対策を指示。電力各社が実施したと確認している。

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