(7月7日付 西日本新聞 から抜粋)
原発再開 首相 「待った」
玄海原発など定期検査で停止中の原発再開問題で、政府が新たな安全検査「ストレステスト」の実施を打ち出した。「脱原発」をにじませる菅直人首相が早期の運転再開に待ったをかけ、自治体に運転再開を働き掛けてきた海江田経済産業相の「はしご」を外した格好だ。
食い違い
「どういうルールで再稼動を認めるのか、認めないのか。検討をお願いしている」。菅首相は6日の衆院予算委員会の答弁で、まだ停止中の原発を再稼動する条件が整っていないとの認識をにじませた。
これは経産省の認識と食い違う。同省は「原発の安全性は確認されている」と繰り返してきた。経産相は6月18日に「安全宣言」を発信。自治体に運転再開を求め、玄海原発を突破口にしようと佐賀入りした。
会談拒否
新たなテスト実施について同省原子力安全・保安院が指示を受けたのは6日未明。政府内で議論を重ねた形跡はない。政府筋も「急に出てきた」と驚きを隠さない。
玄海原発の再稼動をめぐっては、古川知事が7月中旬にも容認する構えを見せていた。経産相は5日夕、「最後の関門」となる知事と首相の会談実現に向け、官邸に乗り込んだ。ところが、首相との面会を終えた経産相は「そのことは話していない」。首相に断られた可能性が高い。
玄海原発を再開第1号にする経産相のシナリオは崩れた。
自治体の抵抗で再稼動が遅れ、結果的に「脱原発」の流れが強まっても構わないと思っているのではないか。同省内の観測を裏付けるように、再稼動の遅れに直結する「追加処置」が出てきた。
ちぐはぐ
新たなテスト実施は住民の安心感を高める効果を見込める。一方で、再稼動問題の混迷が深まるのは避けられない。
佐賀県を含め、これまで立地自治体は再稼動の判断を迫られてきた。しかし、首相の慎重姿勢が明るみに出たことで政府の「安全宣言」の信ぴょう性が揺らぎ、判断の前提を失うことになる。
自治体の多くはテスト結果の判明まで判断を保留、電力需要がピークを迎える夏場に再稼動が間に合わない事態もあり得る。九州経済界からは「経産相は何をしに佐賀に行ったのか。政府の対応はちぐはぐすぎる」不満が漏れる。
もっとも、再稼動せずに夏場の電力不足を乗り切れば?。「脱原発が現実味を増すかもしれない。首相の狙いはそこにある」。政府内にはそんな憶測が飛び交う。
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「ストレステスト」とは (7月7日 西日本新聞から抜粋)
Q,原発ではどのようなストレステストを実施するのですか。
A,政府は欧州連合(EU)をモデルに、具体的な方法を考えるようです。EUの場合、地震、津波、洪水などによって、原発の電源がすべて失われた場合を想定しています。原子炉や使用済み燃料プールを冷却する対策が準備されているのか検討します。放射性物質を大気中や土壌、海などに拡散させないための対策が十分にとられているかも調べます。
Q,日本も同じですか。
A,EUは東京電力の福島第一原発事故を踏まえ、6月から実施しています。原発の安全規制を担う各国当局が互いに評価結果を検証し合うのが特徴です。日本でもEUと似た内容になるとみられますが、具体的な方法はこれから検討します。
Q,定期検査などで停止している原発の再稼動に与える影響は。
A,原発が立地する自治体はストレステストの結果をみて、運転再開に同意するかどうか考えるでしょう。EUの場合、規制当局による中間報告まで3カ月半、最終報告まで7カ月かかる見込みです。短期間で結論を出すのは難しいようです。