インサイダー疑惑:経産省への不信 高まるのは必至

経産省では05年にも、TOB(株式の公開買い付け)を公表する前に株取引をし、不正な利益を上げて有罪判決を受けている。再びインサイダー疑惑が浮上したことで管理体制の不備が明白になった。菅直人首相は「事実であれば大変けしからん話だ」としており、正式に事件化すれば、原発事故を受けたエネルギー行政の体制見直しも絡み、同省そのものの改革論議に発展する可能性もある。

インサイダー疑惑:経産省への不信 高まるのは必至 (毎日新聞)

 経済産業省の現職キャリアで資源エネルギー庁の前次長(52)が半導体大手エルピーダメモリの産業再生法適用に絡み、支援計画の公表前に不適切な株取引をした疑いがあるとして、証券取引等監視委員会から金融商品取引法違反(インサイダー取引)の疑いで強制調査を受けたことが7日判明し、国の産業政策や経産省に対する国民の不信が高まるのは確実だ。国の支援が絡む案件で担当部署しか知り得ない事前情報を私的利益に使ったとすれば、産業政策への信頼は根本から崩れる。東京電力福島第1原発の深刻な事故で同省が進めてきた原子力政策への批判が高まる中での新たな不祥事が明確になれば、次官ら同省首脳の責任問題につながる可能性もある。

 関係者によると、前次長は、経営不振に陥ったエルピーダに対する09年の産業再生法適用に絡み、支援計画の公表前に不正な株取引をし、数百万円に上る利益を得た疑いがある。

 このニュースを知った経産省内には「国民の信頼をますます失う」(幹部)とショックが走った。同省は福島第1原発事故後、従来「原発安全神話」を推進してきたことや、不十分な事故対応に対する厳しい批判にさらされている。しかも今回、インサイダー取引疑惑が掛けられている資源エネ庁の前次長は、6月に官房付けに異動するまで、東日本大震災後の日本のエネルギー政策改革を議論する有識者会議を担当。5月には、菅直人首相が「太陽光パネルの1000万戸設置」目標を表明したフランスでの主要8カ国首脳会議(G8サミット)にも同行するなど、エネルギー政策を任された有力キャリアだった。

 経産省では05年にも、情報通信機器課の係長(当時)が事業再編を目的に産業再生法適用を申請した企業について、同社がTOB(株式の公開買い付け)を公表する前に株取引をし、不正な利益を上げて有罪判決を受けている。同省はこの時のインサイダー事件を教訓に全職員に対して株取引の状況を毎年報告するよう義務づけたが、再びインサイダー疑惑が浮上したことで管理体制の不備が明白になった。菅直人首相は7日の参院予算委員会で「事実であれば大変けしからん話だ」としており、正式に事件化すれば、原発事故を受けたエネルギー行政の体制見直しも絡み、同省そのものの改革論議に発展する可能性もある。【野原大輔、和田憲二】

毎日新聞 2011年7月7日 21時41分(最終更新 7月7日 22時51分)


台湾との提携前にも株購入=売却で利益数百万円 経産省幹部インサイダー疑惑

 経済産業省幹部だった前資源エネルギー庁次長(52)によるインサイダー取引疑惑で、半導体大手「エルピーダメモリ」と台湾メーカーとの提携が発表される前の2009年2月にも、前次長がエルピーダ株を購入していたことが7日、関係者の話で分かった。前次長はその後も同社株を購入し、値上がり後に売却して計数百万円の利益を得たとされる。
 前次長は証券取引等監視委員会の調査に、インサイダー取引を否定しているとされ、監視委は一連の株取引の詳しい経緯を調べている。(2011/07/07-22:40)

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