モンゴル産のウラン燃料を原発導入国に輸出し、使用済み核燃料はモンゴルが引き取る「包括的燃料サービス(CFS)」構想の実現に向けた日本、米国、モンゴル3カ国政府の合意文書の原案が18日明らかになった。モンゴル国内に「使用済み燃料の貯蔵施設」を造る方針を明記し、そのために国際原子力機関(IAEA)が技術協力をする可能性にも触れている。
モンゴルを舞台としたCFS構想が実現すれば、核燃料の供給と、使用済み燃料の処分を一貫して担う初の国際的枠組みとなる。福島第1原発事故を受け、当面は構想の実現は難しいとみられるが、民間企業も含め後押しする動きが依然ある。
2011/07/18 17:57 【共同通信】
東芝 モンゴルに核燃処分場構想
2011年7月2日 朝刊
米原子力大手ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)を子会社に持つ東芝の佐々木則夫社長が五月中旬、米政府高官に書簡を送り、使用済み核燃料などの国際的な貯蔵・処分場をモンゴルに建設する計画を盛り込んだ新構想を推進するよう要請、水面下で対米工作を進めていることが一日、分かった。
複数の日本政府関係者や政府の内部文書によると、モンゴルでの核処分場計画は、新興国への原発輸出をにらみ、モンゴルで加工したウラン燃料の供給と使用後の処理を担う「包括的燃料サービス(CFS)」構想の一環。米国とモンゴルが主導し、日本にも参加を呼び掛けた。経済産業省が後押ししてきたが、外務省が慎重姿勢を示すなど政府内に異論もある。
日本のエネルギー政策の見直しが進む中で明るみに出た東芝の働き掛けは、福島第一原発事故後も、原子力業界の原発輸出路線に変化がない実態を示している。
共同通信がコピーを入手した書簡は五月十二日付で、米エネルギー省のパネマン副長官宛て。原子力政策に携わる米政府当局者は、書簡が米政府内で回覧されたことを認めた。
書簡は、日米の一部メディアが四~五月にモンゴルでの処分場計画を報じたため「(モンゴルを巻き込んだ)CFS構想は今や世界的に周知されたと認識しなければならない」と指摘。「反対も予想されるので、進展継続を確かにするため、関係者がより緊密な調整を図ることが極めて重要」としている。
豊富なウラン資源のあるモンゴルで事業を進める意義にも触れ、関係国の国民が「事業の価値を正しく理解する」ための努力が必要と主張。福島の事故で「原子力産業に環境の変化が起きた」としながらも東芝として「CFSへの積極的関与の方針に変化はない」と強調した。
東芝広報室は書簡を送ったことを認め「モンゴルのCFS構想は、国際的な核不拡散体制の構築、および同国の経済発展に寄与できるという点で意義がある」と述べた。
日本政府高官によると、この関連でモンゴル政府関係者が今年二月に来日している。
<包括的燃料サービス(CFS)> 原子力発電用のウラン燃料の供給や使用済み燃料の処分を国際的枠組みで一括して行う構想で、米エネルギー省やモンゴルなどが提唱。「揺りかごから墓場まで燃料サービス(CTG)」とも呼ぶ。新興国の原発導入へ向け、日米やフランスなどがプラント売り込みにしのぎを削る中、新規原発導入国にとって課題となる(1)ウラン燃料の濃縮、加工、調達(2)使用済み燃料など「核のごみ」の処分を一括して解決するのが狙い。ウラン濃縮や使用済み燃料再処理といった核兵器開発に転用可能な技術拡散の防止も想定している。