「行動する仏教(エンゲージド・ブディズム)」の指導者であり、アジアの代表的な環境・平和運動家でもある スラック・シワラックさんが明日、来日します。
来日記念イベント ポスト311を創る しあわせの「開発」学
7月24日(日)京都 26日(火)27日(水)東京で行われます。
3・11後を生きる日本のみなさんへ
スラック・シワラックさんからのメッセージ
3月11日の大自然災害と原子力発電所の事故は、日本にとって広島や長崎を見舞った惨禍以来、最悪のものでした。残念なことに、第2次世界大戦以来、日本の権力者たちは、自らの内なる平和の種を育ててこなかったようです。さらに、悪いことには、日露戦争でのロシアに対する勝利以来、日本社会は科学技術においては西洋に負けないという思いを、いまだに抜け出られずにいました。
しかし、本当に学ぶべきことは、「西洋の成功は同時に失敗でもある」、ということなのです。なぜなら、西洋にとっての成功とは、他者――人間ばかりではなく、生きとし生けるもの――を支配することを意味していたからです。西洋の主流科学者たちは自然を人間の管理下においてコントロールできると考えました。しかし、その自然は、人間の支配力や想像力が到底それに及ばないことを繰り返し示してきました。日本での今回の災害もそのひとつであり、これが天災なるものの最初でも、最後でもありません。そして原子力発電所の破綻が示しているのは、科学者や権力にある者たちが、チェルノブイリやボパールのような過去の大事故から何一つ学んでこなかったということです。だが、それは我々のほとんどが、死を、老いを、そして様々な人生の苦しみを、他人事として、自分の身には起こらないものと考えるのと同じことです。
傲慢な心に替わる謙遜の精神を私たちは学ばなければなりません。すべてが関係し合っているつながりの中に自分がある、と感じられる心を養うのです。私たちは、他者にうち勝つために競争しているバラバラの自我として生きているのではなく、実は、他者に依存し、そのおかげで生きているのです。他者とは、人間ばかりではなく、私たちの周りにある樹木や大地や水や空気です。それらはみな、私たちにとって父であり、母のような存在です。他者への敬意と感謝の念をもち、目先の政治的・経済的な利得のために他者を利用し、搾取することをやめなければなりません。そうすれば、私たちはもっと謙虚になることができ、他の人間たちとも、人間以外の存在とも、これまでよりずっとうまくやっていけるでしょう。その時、母なる地球はきっと私たちの面倒をみてくれるでしょうし、自然界は、人類がはるかな未来にわたって意義ある生をまっとうできるよう保証してくれるにちがいありません。
日本のみなさん、GNP(国民総生産)より、GNH(国民総幸福)を
大切にしようではありませんか。
2011年4月15日 スラック・シワラック