「国際有機コーヒー・フェアトレードデー」に寄せて

5月22日は「国際有機コーヒー・フェアトレードデー」です。
この日はウインドファームにとって、とても重要な日です。

 国際有機コーヒー・フェアトレードデーは、「スロ−カフェ宣言」とともに、ナマケモノ倶楽部が、2002年に呼びかけました。坂本龍一さんは、呼びかけに応えて次のメッセージを送ってくれました。

「国際有機コーヒーデー」「スローカフェ宣言」の趣旨を全面的に支持します。グローバリゼーションは、人から食物の生産現場へのアクセスを絶つことで、「食」を完全支配しようとします。 生産者は、奴隷状態におかれます。 消費者は、「消費の奴隷」と化します。 ですから、消費者と生産者がダイレクトな結びつきをもつことは、大変に重要なことです。

今年の5月22日を私はブラジルで迎えます。その理由をスローカフェの発祥地であるカフェスローの仲間たちに伝えました。


<カフェスロー3周年に寄せて>
5月22日は、皆さんと一緒にカフェスロー3周年を祝う場に参加できなくて、本当に残念です。当日私は、カフェスローで提供されているブラジル有機コーヒーの故郷に行っています。「カルロスさんのコーヒー」を生産するジャカランダ農場は良質コーヒーの生産地として知られるマッシャード市にあります。

5月22日は「国際有機コーヒー・フェアトレードデー」でもあります。これは、カフェスローの生みの親であるナマケモノ倶楽部が勝手に制定しました。なぜ、この日を記念日にしたかというとブラジル初のオーガニックカフェである「テーハベルジ(緑の大地、緑の地球)」とカフェスローのオープンが5月22日だったからです。

その「国際有機コーヒー・フェアトレードデー」に、ブラジルで画期的な宣言が行われます。
それは、世界で初めてマッシャード市が行う「有機コーヒーキャピタル(首都)宣言」です。世界最大のコーヒー生産国であるブラジルで、初めて「有機栽培の首都」を宣言することになります。 

同じ日に、マッシャード市を有機コーヒー栽培の「首都」に育てたカルロス・フランコさんを偲ぶ催しも行われます。私にとっても、すごくうれしい日です。

しかし、手放し喜ぶことができない悲しい事態が、中東などにあります。 

カルロスさんは、世界の子どもたちの幸せをいつも願っている人でした。 
願うだけでなく、ストリートチルドレンや病気の子どもたちの世話を、50年近く続けてきました。

「すべての生命はつながっていて、そのつながりによって私たちは生かされています。分かち合うこと、助け合うことが、私たちにこころからの平和と豊かさをもたらしてくれます。」と言っていたカルロスさんは、環境を汚染する農薬の使用をやめ、土壌を大切にする有機栽培に取り組みはじめます。

カルロスさんが無農薬栽培を始めた1978年には、誰もそれを理解することができませんでした。農薬だけでなく化学肥料も使用しなくなったとき、生産量が激減して、逆に生産コストが上がりました。変人扱いをする人、嘲笑して馬鹿にする人もいました。

しかし、カルロスさんは質素な暮らしを続けながら、昨年亡くなるまで25年間、有機農業を続けました。それは、まわりの人びとにゆっくりと少しずつ影響を与えていきました。

そして、26年後の今日、マッシャードは市をあげて有機農業に取り組むことになったのです。

今、日本のカフェの中で、最もカルロスさんのコーヒーが飲まれ、売れているのが、カフェスローだと思います。カフェスローの運営に関わり、1年目、2年目の苦しい経営状況をつぶさに見てきた者として、3周年を無事に迎えることができたことを本当にうれしく思います。

カフェスローが成長した分だけ、ささやかであっても有機農業が広まっていると言えるでしょう。また、エクアドル・インタグの森を「鉱山開発」という名の破壊から守り、森林を再生していくアグロフォレストリー(森林農業)をフェアトレードによって支援しています。

スローフード、地域通貨、暗闇カフェ、水筒やマイ箸などの使い捨てズーニー運動などなど、カフェスローは「いのちを大切にしたい」と願う多くの人々に希望を与える存在になりつつあります。私個人が聞いているだけでもカフェスローに行ったことで、こんなカフェをやりたいと決断した人が十人近くいます。今月、練馬でオープンするTrees cafeもそうです。

代表の吉岡さんをはじめスタッフの皆さんは、苦しい状況の中をよく辛抱されてきたと思います。まだ、安心できる経営状況には至っていませんが、「石の上の3年」を乗り切ったことを、ブラジルで祝いたいと思います。 

ジャカランダ農場の仲間、そして、「いつかカフェスローに行ってみたい」と言っていたカルロス・フランコさんと共に。

ナマケモノ倶楽部世話人
ウインドファーム代表
中村隆市

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