週刊朝日 談[DAN]
福島第一原発の最高幹部が語る「フクシマの真実」 後編から抜粋
新工程表はデタラメ
この”旧”工程表については、4月の本社発表に先立って、実はフクイチ(福島第一原発)の現場からは「(収束までに)約1年半」というスケジュールを想定したものを出しました。これでも、熟練の作業員をフル動員することを前提にして、ようやく達成できるレベルです。
ところが本社からは、
「こんなのでは遅すぎる。菅総理が納得しない。(5月下旬の)サミットでどう説明するんだ」
と言われました。結局、本社がいろいろと継ぎはぎして「9カ月」の工程を作ったのです。
工程表では3カ月+3?6カ月の「2ステップ」などと謳(うた)っています。ステップ1は何とかなるかもしれないが、問題はステップ2。このスケジュールどおりなんて到底、無理な話ですよ。放射線量の限度を超え、どんどん熟練作業員の人数が減っていく中で、どうすればできるのですか。
無人ロボットが導入されましたが、あんなのが何台あっても最後の最後は「人手」が必要です。その「人手」の作業を阻むのが、建屋の地下にたまった汚染水なのです。
◆1~4号機はどれも危ない◆
工程表には、細かい工事内容も書かれていますが、実際には予定されていたよりも1・5~2倍の時間がかかっている。「循環システム」設置だって、予定の1・5倍の時間がかかりました。本社の作った工程表は、あくまでも理想で、現実性は乏しい。
さらに今後、この暑さの中で作業は困難になります。作業員たちの健康のため、いま工事は朝6時ごろから始め、午後2時ごろには終わらせている。こんな環境の中で、工程表どおりに実現させるのは難しい。それに、1~4号機はそれぞれ状況が違うので、予想できない事態もあり得ます。
19日に発表される新工程表でも、期日の修正はあまりないようです。というのも、期日については政府の意向が強く、政治的な責任問題が発生するとかで、なかなかいじれないらしい。結局、理想論を前提に、結論ありきでスケジュールをはめ込んでいるだけ。現場としては、国民に本当のことを知らせるべきだと思っています。