もんじゅ廃止、公明党が方針 幹事長代行が明言
(8月24日19時33分 朝日新聞)
公明党の斉藤鉄夫幹事長代行は24日、日本記者クラブで講演し、近くまとめる党独自のエネルギー政策に、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の廃止を盛り込む方針を明らかにした。使用済み核燃料の再処理についても「基礎的研究は続けるが、商業的なものは見直す意見が党内で大勢だ」と述べた。
斉藤氏は「高速増殖炉、再処理といった核燃料サイクルは見直す方向性だ。『もんじゅ』という個別の研究炉は廃止する」と明言した。核燃料サイクルの見直しが進めば、再処理の必要がなくなることから「使用済み核燃料は(再処理することなく)処分する。そのための技術開発に力を入れた方がいい」と述べた。
斉藤氏は「自民党との(連立の)10年間に過渡的エネルギーとして抑制的に(原子力を)使うという精神を少しずつ忘れていった」と強調。公明党が原子力発電を「過渡的エネルギー」と位置づけながら、連立政権下で容認姿勢を取ってきたことを自省した。
公明党の斉藤鉄夫幹事長代行は24日、東京・内幸町の日本記者クラブで記者会見し、運転停止中の日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、廃止を視野に党内で議論していることを明らかにした。
斉藤氏は「『もんじゅ』という個別の原子炉は廃止する。(使用済み核燃料を再利用する)核燃料サイクルは基礎的研究は続けるが、商業的に行う再処理は見直すという議論が大勢を占めている」と語った。ただ、使用済み核燃料の処理に関しては「どうするか問題が生じてくる」と述べるにとどめ、検討が必要との考えも示した。
公明党は原子力発電を「過渡的エネルギー」と位置付け、核燃料サイクルについても事実上容認してきた。斉藤氏の発言は、東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、党の政策を転換する方針を示したものだ。
(2011年8月24日22時07分 読売新聞)
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高速増殖炉研究開発 推進から予算削減対象に /福井
(8月1日 毎日新聞)
◇福島原発事故の影響で
国の原子力政策を担う内閣府原子力委員会は、来年度の原子力関連予算について、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)を含む核燃料サイクルは、「技術基盤の維持などに限るべき」と、従来の推進方針にいったんブレーキをかけた。東京電力福島第1原発事故で、国がエネルギー政策を白紙から見直すためだ。政府が「減原発」を打ち出すなか、これまで国策で進めてきた高速増殖炉の研究開発は、大義名分を失いつつある。【柳楽未来】
「我々としては、もんじゅの中止を求められているものではないと認識している」。もんじゅを管轄する文部科学省の川口悦生・核燃料サイクル室長は27日、敦賀市内で開かれた過酷事故対策の検討委員会の場で、あいさつもそこそこに切り出した。相次ぐトラブル発生でも、核燃料サイクルを推進し続けてきた文科省が、動揺する様子が見えた。
核燃料サイクルの中心は、原発の使用済み燃料に含まれるプルトニウムを使って発電する高速増殖炉の実用化。今年度の高速増殖炉の技術開発の予算は、文科省分で402億円あり、内訳は、もんじゅの運営費に216億円、高速増殖炉の実用化に向けた研究開発に100億円などだった。来年度の概算要求は、高速増殖炉の実用化に向けた研究開発の部分を削る見込みだ。
経済産業省も今年度、高速増殖炉の実用化に向けた研究開発に74億円の予算を確保したが、来年度の概算要求は「これから議論するが、減る方向になると思う」(資源エネルギー庁)という。
◇ ◇
新しい原発の研究開発は、実験炉、原型炉、実証炉、実用炉の段階を踏んでようやく商業ベースに乗る。2段階目のもんじゅは、国が主体となり1兆円近い費用も負担しているが、まだ安定して運転できる状態ではない。もんじゅの次の段階の実証炉は2025年の目標だが、まだ実施主体が国か電気事業者かも決まっていない。
高速増殖炉の実用化に向けては06年、5者協議会(文科省、経産省、電気事業連合会、日本電機工業会、日本原子力研究開発機構)を設立した。昨年7月時点では「官民ともに長期にわたり相当程度の投資を行う必要が生じると見込まれる」と、実証炉の建設費用では、電気事業者・メーカーに応分の負担を検討することになった。
だが福島の事故により、事故対応や原発停止の長期化などで、原発を抱える電力各社は経営状況が悪化。電気事業連合会は高速増殖炉について「将来的なエネルギーの安定供給に寄与するものと考えている」と、表向きは事故前と変わらぬ推進姿勢を示すが、実証炉の建設に向けたハードルは用地選定も含め、格段に上がっている。
原子力資料情報室の西尾漠・共同代表は「高速増殖炉の実用化は現実的ではなく、やめる方向に向かっているということだ」と指摘している。