『朝日』と対がん協会に抗議が集中――山下俊一氏に「朝日がん大賞」
(2011 年 9 月 21 日 6:19 PM 週刊金曜日)
九月二日、鹿児島市で開かれたがん征圧全国大会(日本対がん協会など主催)は、市民による抗議のビラ配りを受けるという異例の幕開けとなった。大会で、山下俊一・福島県立医科大学副学長に「朝日がん大賞」が贈られたからだ。
朝日がん大賞は、日本対がん協会に朝日新聞社が協力し、将来性ある研究者に贈られるもの。山下氏は、長崎で放射線と甲状腺がんの治療と研究に従事してきた研究者だが、福島原発事故後、福島県放射線健康リスク管理アドバイザーに就任。「一〇〇ミリシーベルトまでは大丈夫」など、安全神話を県内で振りまいた。
こうした御仁に、なぜ賞を贈るのか。対がん協会は「業績として評価されたのは主に長崎大学時代のこと。福島での先生の言動への社会的批判は、詳細を承知していない」(事務局)と弁明に躍起だ。
子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク(中手聖一・代表世話人)は三日、「(山下)氏の発言は、多くの方の避難を躊躇させ、また、福島に住み続けることについて安心感を得させ、家族不和まで生んでいる」とする抗議声明を発表した。対がん協会にも「二日夕方までに九四件の抗議や問い合わせ」(事務局)があった。
全国大会会場前のビラ配りに駆けつけた鹿児島市議の小川みさ子さんは、「脱原発を社説で打ち出した朝日新聞社が、なぜなんでしょう。大会は民生委員やPTAなどの動員が目立ち、原発のセレモニーに似た嫌な感じでした」と話す。
朝日新聞社は「朝日がん大賞は、日本対がん協会が選考し、(中略)弊社はご質問にお答えする立場にございません」とした。だが、対がん協会理事長は、武富士裏金(広告費)問題で社長を辞任した箱島信一・朝日新聞社顧問。対がん協会事務局によれば、朝日新聞社は協会に社員を四人出向させ、昨年度は四六七一万円もの寄付をしている。朝日新聞社は今回の授賞を、他人事では済まされまい。
(北健一・ジャーナリスト、9月9日号)