佐賀・玄海原発:4号機再稼働 市民の声を聞け 九電に4団体抗議
(2011年11月2日 毎日新聞)
◇佐賀知事にも批判相次ぐ
トラブルのために停止していた玄海原発(佐賀県玄海町)の4号機を九州電力が再稼働したことを受け、反原発の市民団体が2日、九電佐賀支社や佐賀県庁に抗議行動を展開した。やらせメール問題が決着しない状態での再稼働のため、九電本社には「なぜ再稼働するのか」などの問い合わせが殺到。佐賀県庁にも、再稼働を容認した古川康知事への抗議メールや電話が相次いだ。【竹花周、蒔田備憲、原田哲郎、上入来尚、中山裕司】
九電佐賀支社には午前11時半、県平和運動センターなど4団体が申し入れ書を提出。4団体は10月6日にも4号機の自動停止について徹底した原因解明を求めたことを挙げ「根本的な問題点は未解明のままとなっている」と指摘。「電力事業者と行政に対する不信が強まっている現状を直視すべきだ」と主張。その上で「再稼働に地元同意は必要ない」とした九電側の見解に「県民無視も甚だしい」として、根拠と理由の説明を求め、運転再開の中止を申し入れた。
佐賀県庁には午前11時、玄海原発プルサーマル裁判の会など150市民団体が連名で要請書を提出。「地元住民の反対の声が多い中で、この声を無視してはならない」などの理由を挙げて、4号機の運転再開を停止するよう古川康知事に求めた。同じ内容の要請書を経済産業相や九電、玄海町にも提出する。
県庁には運転再開を九電が発表して以降、2日午前10時までに抗議のメールが80件あった。電話の抗議も1日だけで約40件にのぼった。いずれも「4号機再開に絶対反対」「再稼働容認を撤回しろ」といった内容で、普段のメールの件数は1けた台という。
九電本社(福岡市)にも、再稼働が報じられた31日夜から2日午前10時までに約240件の電話が寄せられた。内容は「再稼働に住民の理解は必要ないのか」「再稼働に反対」という批判のほか、「なぜ再稼働するのか」という疑問がほとんどだったという。
玄海原発から30キロ圏内にある佐賀県伊万里市の主婦(61)は「あまりに一方的で面食らってしまった。うむを言わさずといった感じだ。(大事故が起きたら)風向きによっては伊万里にも被害が及ぶわけだし、周辺住民にもきちんと情報公開してほしい」と語った。
玄海4号機は2日午後に発電を再開し、4日までにはフル稼働状態にあたる通常運転に入る見通し。4号機は1日午後11時に再稼働し、2日午前0時23分に臨界に達した。12月中旬に定期検査のために再び停止する。
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玄海原発4号機再起動 地元了解より経営改善 九電「今回は不要」
(2011/11/02付 西日本新聞朝刊)
運転が自動停止したまま12月中旬の定期検査(定検)に入るとみられていた九州電力玄海原発4号機(佐賀県玄海町)はなぜ今、再稼働するのか。定検後、次々に停止する原発の再稼働は、政府も地元の「理解」を最終的なハードルに挙げていたが、九電は今回、地元の了解は必要な案件ではないと判断。政府の再稼働容認後、速やかに4号機の稼働に動いた。だが、原発の安全性への不安がぬぐえない地元住民には唐突に映る。
「基本的には人為ミスで、比較的軽微な案件」(経済産業省原子力安全・保安院)。政府は玄海4号機のトラブルを重大事故ではないとの認識を示し、再稼働を容認した。枝野幸男経産相も1日の閣議後会見で「最終的に稼働するかどうかは地元と協議した上で事業者が決めること」と述べ、やらせメール問題で九電に厳しい姿勢で臨んでいたのとは異なる、柔軟な発言に終始した。
こうした政府の対応には来夏の電力不足を回避するため、全国の原発の再稼働に向け、既成事実を積み上げたい思惑が透けて見える。
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これには、原発への世論の風当たりがなお強い中で「4号機は本当に再開していいのか」と漏らしていた九電幹部も意外だった様子。ただ、原発を停止し、経費負担の大きい火力発電所を動かしたことで今期、大幅赤字になる九電にとっては、渡りに船。九電幹部は「運転中だったのを元に戻すだけ。再開の判断は事業者が行う」と、定検後の原発とは一線を画す方針で事態を乗り切る構えだ。
「118万キロワット。出力が大きい原発ですから」。ある九電関係者は、批判承知で4号機の再稼働に踏み切った理由を明かす。
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そもそも、定期検査後の再稼働については、地元了解を事前に得る法的な決まりは今もない。
しかし、福島第1原発事故で原発の安全性が根本的に問われることとなり、九電をはじめ全国の電力会社は地元との信頼関係を維持するため、事前了解を再稼働の条件と明確に位置付けた。
地元との信頼関係の維持する姿勢を貫くのであれば、今回の再稼働でもあるべき地元への丁寧な説明が不十分なために、唐突さがぬぐえない。
1日夜に会見した九電原子力発電本部の豊嶋直幸部長は「地元からもある程度納得してもらっている」と話した。九電は10月21、22の両日、玄海町の全2千戸に原因と対策について冊子を配布した。原子力の防災対策重点地域(EPZ)の30キロ圏拡大の検討が進む中、九電にとっての「地元」はいまだ玄海町だけという。
=2011/11/02付 西日本新聞朝刊=
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「原因分かったので再稼働」に疑問 玄海4号手順ミス
(2011年10月22日更新 佐賀新聞)
復水器の異常で自動停止した玄海原発4号機は「補修作業の手順書の作成ミスがトラブルの原因」と九州電力が発表した21日、立地町の東松浦郡玄海町の岸本英雄町長は「九電はたるんでいる」と激怒。県への報告直後には九電担当者が「原因が分かったので再稼働を」と述べ、市民からは「感覚がずれている」と批判が上がった。
「九電全体の人為ミス。さすがに頭に来た」。岸本町長は激怒し、「やらせ問題」「耐震データ入力ミス」など相次ぐ不祥事に「こういう時期だからこそ気をつけないといけないのに同じことを繰り返す。たるんでいる」と切り捨てた。
12月の定期検査前の運転再開については「期間が短く、住民の理解は得られないだろう。私自身も安全側に強く立つ必要がある」と、再稼働は困難との認識を示した。
県庁には同日午後2時半、九電佐賀支社の担当者が訪れ、報告書を知事宛てに提出。受け取った今村盛史・原子力安全対策課長は「再発防止に万全を期すように」と強い口調で「遺憾の意」を伝えた。
九電担当者はその後の記者会見で「今回は手順書の誤りと原因が分かっている。定期検査まで時間があるので、国や立地自治体の理解が得られたら、少しでも動かしたい」と早期再稼働に言及した。
再稼働の話が会見で出たことを記者から聞いた原子力安全対策課は急きょ、九電に真意を確認。佐賀支社が「担当課長が個人の希望として述べた。社の見解と違う」と“修正”する一幕もあった。
玄海原発プルサーマル裁判の会の石丸初美代表は「もう再稼働話が出るなんて、九電はちょっとしたミスと考えていることの証拠。住民の命に関わる原発を扱う企業なのに、福島の事故以降、私たちが感じている不安感とは感覚がずれまくっている」と批判した。
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玄海4号機運転再開へ 九電、地元同意「必要ない」
(2011年10月31日更新 佐賀新聞)
九州電力玄海原発4号機(東松浦郡玄海町)が人為的ミスによるトラブルで自動停止した問題で、経産省原子力安全・保安院は31日、九電が提出していた原因分析と再発防止を明記した報告書に対して「おおむね妥当」と評価した。これを受け、九電は運転再開の方針を発表。「運転再開は事業者判断」とした保安院の見解を根拠に、立地自治体の首長の同意は「必要ない」として、同日夜から運転操作の準備に入った。地元同意もないままの再稼働には批判が出そうだ。
保安院は、九電が10月21日に提出した報告書について「原因が適切に推定され、対策が取られている。おおむね妥当」と評価した。4号機は定期検査で停止した原発の再稼働条件としている安全評価(1次評価)の「対象外」とし、「運転再開は事業者判断」としている。
九電は国の評価を受け、県と玄海町に12月中旬に予定している定期検査前に、いったん運転を再開する意向を伝えた。10月21、22日には同町内の全戸に原因と再発防止策を記したチラシを配布。「住民への理解活動は進めてきた」として、立地自治体の首長の同意は「必要ない」としている。4号機は高温停止状態で、運転操作開始後、早ければ1日で発電を再開、4、5日で通常運転に復帰する。
4号機は10月4日、誤った補修作業の手順書に沿って復水器を真空状態に保つ蒸気元弁の部品交換を行った結果、空気が入って自動停止した。
岸本英雄玄海町長は「地元の同意事項ではなく、国の判断に異論を挟むのは難しい。ただ、国が大丈夫というからすぐに運転再開というのはいかがなものか」と疑問を呈し、1日にも国に対して「妥当」と判断した理由を確認する考えを示した。
福島第1原発事故を受け、国内の原発54基は定期検査で順次停止し、現在、稼働しているのは玄海1号機など10基となっている。
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玄海4号機再稼働 地元の同意得ぬまま 広がる波紋
(2011年11月01日更新 佐賀新聞)
誤った手順書に沿って作業をしたことが原因で自動停止した九州電力玄海原発4号機(東松浦郡玄海町)について、九電は31日、再稼働する方針を佐賀県や玄海町に伝えた。地元の同意なく再稼働に踏み切ることに反原発団体の関係者は「正気の沙汰とは思えない」と強く反発。古川康佐賀県知事は「国の考えを聞いてみたい」と自らの考えは示さず、岸本英雄玄海町長は「国が認めるなら仕方がない」とし、知事と同様に国に説明を求める考えを示した。
「事故を防ぐ対策について十分な説明もないままの再稼働は許されない」。プルサーマルと佐賀県の100年を考える会の共同世話人の野中宏樹さんは怒り、「九電はもっと謙虚にならなければ自らの手で未来を閉じることになる」と、強く批判した。
4号機は12月に定期点検入りを控えている。運転停止のまま定検に入ることや、定検の前倒し実施を想定する見方も多かった。玄海原発プルサーマル裁判の会の石丸初美代表は「3・11以降、状況は何も変わっていないのに再稼働に猛進するとは。正気の沙汰とは思えない。再稼働阻止を訴えていく」と言明した。
古川知事は宮崎県の九州知事会に出席していた。九電が再稼働方針を発表した午後7時半すぎに県が「自動停止の原因と対策については、国が責任を持って判断されたと認識している」とする知事コメントを発表。懇親会に参加していた古川知事は、出口で待つ報道陣を避け、姿を消した。
佐賀県は午後4時過ぎ、九電佐賀支社からの電話で再稼働方針を知った。原子力安全対策課は「判断理由など詳細な説明はなかった」と、一方的な“通告”に戸惑った様子。県の同意のない再稼働方針について今村盛史課長は「納得できるか、できないかというより、国自身がどういう考えで判断したのか聞きたい」と話した。
岸本町長は夕方、「事業者判断で運転する」と九電から電話を受けた。以前は定検前の運転再開は困難という認識を示していたが「地元の同意が必要な事案ではない。気分はよくないが、国が回しても問題ないと認めるなら異論を挟む余地はない」とした。
ただ「国はやらせ問題はあれだけしつこく言っているのに、すぐOKというのはいかがなものか」とも述べ、「理由を聞きたい」と語った。
九電幹部は「地元との相談なしに本当に再稼働できるのか」と疑問視。一方で「(4号機が動かせないことで)1日3億円の費用増になっている。本当に動かせるのならサプライズ」と語った。