放影研、内部被曝調査を89年に打ち切り 実態解明20年の遅れ

原発事故による放射線被曝の問題で、最大の問題になっている「内部被曝」についての重要な記事が中国新聞に詳しく掲載されました。

放影研、長崎の内部被曝調査を89年に打ち切り 実態解明20年の遅れ
(’11/11/26 中国新聞)

 日米両政府が運営し、原爆被爆者の健康を調査する「放射線影響研究所」(放影研、広島市・長崎市)が、原爆投下後に高い残留放射線が見つかった長崎市・西山地区の住民から、セシウム検出など内部被ばくの影響を確認し、研究者らが調査継続を主張してきたにもかかわらず、1989年で健康調査を打ち切っていたことが26日、関係者への取材で分かった。

 45年から続く貴重な内部被ばくの継続調査だったが、打ち切りによって健康への影響や実態の解明は20年以上、進んでいない状態。東京電力福島第1原発事故後、福島県は全県民健康調査を進めているが、研究者から「有力な参考データが失われた」との批判が上がっている。

 放影研は調査終了の理由について「健康被害が確認されず、当初の研究目的を達成したため」と説明。住民から提供された血液の一部やデータは保存しており「(国や福島県などから)要請があれば、比較、検討に活用したい」としている。

 西山地区は長崎の爆心地の東2~4キロ。爆心地と金比羅山で隔てられ、直接的な熱線や爆風の影響をほとんど受けなかったが、放射性降下物(黒い雨)が降った。

 調査では、45~47年に住民の白血球が一時的に増加し、69年には原爆の影響を受けていない地区と比較して約2倍のセシウムが体内から検出された。87年には甲状腺に、がんや良性のしこりができる確率が、原爆の影響を受けていない人の4倍以上に達することが確認された。

 放影研は西山地区の地上汚染の最大被ばく線量を200~400ミリシーベルトと推定。体内のセシウムの量から「約40年の累積で男性0・1ミリシーベルト、女性0・08ミリシーベルトと推定され、内部被ばくは健康に影響が出る値ではない」と86年に結論付けていた。

 調査に当たった研究者自身は報告書などで「内部被ばくの健康影響は否定できない」「原発事故が起きた時、汚染の影響の目安になる」などと調査継続の必要性を訴えていた。

 ▽データあるならすぐ研究再開を

 原水爆禁止日本協議会代表理事の沢田昭二名古屋大名誉教授の話
調査の中止は、内部被ばくを軽視する姿勢の表れだ。続けていれば、福島第1原発事故後の対応にも役立った。放射線影響研究所の前身の原爆傷害調査委員会(ABCC)は、直接被爆した人への影響を研究する組織。戦後、原爆投下国の米国が「残留放射線の影響はない」と言い続けてきた意向を今も強く受けている。資料やデータが残っているのだから、可能ならすぐに研究を再開すべきだ。


西日本新聞(11月27日朝刊)の放影研の解説

放射線影響研究所(放影研)
原爆放射線の長期的な影響を調査するため、米海軍長官の建言に基づき、トルーマン米大統領が承認し、1947年に設立された原爆傷害調査委員会(ABCC)が前身。二ール博士が広島で血液学調査に着手、その後、広島、長崎を拠点に約12万人を対象に調査を開始した。ABCCは75年、日米両政府が共同で管理運営する財団法人「放射線影響研究所」に改組。被爆から66年が経過した現在も寿命や成人の健康、被爆者の子供に関する調査を実施している。

放影研、89年に調査中止 内部被ばく実態、20年不明
(2011/11/26 共同通信)

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