東日本大震災:4カ所の松葉、セシウム上昇―島田市試験焼却後 /静岡
(毎日新聞 5月10日朝刊)
静岡市の主婦らによる市民団体「静岡放射能汚染測定室」(葵区安東)は8日、島田市が2月に行った震災がれきの試験焼却後、同市内5カ所から採取した松葉のうち4カ所で放射性セシウム濃度が上昇したと発表した。
同測定室の馬場利子代表によると、京都大学大学院工学研究科の河野益近・教務職員(原子核工学)の協力で、ごみ処理施設から半径約6キロ以内の松葉を採取し測定。4カ所で試験焼却前の1キロあたり1・0~14・1ベクレルから同1・9~18・3ベクレルに上昇した。
馬場代表は「試験焼却で放射性セシウムが排出された可能性が高い」と述べた。
同市の放射能検査では焼却時の排ガス中から放射性物質は検出されず、灰の放射性セシウム濃度は放射性物質として扱わなくてよいとされる同100ベクレルを下回る同64ベクレルだった。【山本佳孝】
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島田市セシウム濃度3割増えた 瓦礫焼却試験後市民が検査
(5月9日 とある原発の溶融貫通(メルトスルー))から抜粋
SBS TV(静岡放送)
島田市の震災がれき受け入れに反対する市民グループが今年2月の試験焼却で、焼却炉周辺の放射性セシウムの濃度が上がったと発表しました。調査したのは静岡市の主婦でつくる市民グループ「静岡放射能汚染測定室」などで、島田市と静岡市の市街地に植えられた松葉を採取し、試験焼却の前後で放射性セシウムの差を比較しました。
その結果焼却炉から500メートル離れた場所で3割増えるなど、4カ所でいずれも高くなっていたということです。会では震災がれきの広域処理によって放射能が拡散される恐れが強いとして、約1200人の署名と要望書を20日に環境省に提出するということです。
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資料4島田市の試験焼却前後における松葉の放射能調査結果について
(2012/04/29 静岡放射能汚染測定室)
島田市の試験焼却前後おける松葉の放射能調査結果について から抜粋
2012/3/31
京都大学大学院・工学研究科
河野 益近
はじめに
島田市が2012 年2 月16 日、17 日の両日、福島第一原発事故の放射能を含んだ震災瓦礫(主に木材チップ)の試験焼却を行うと発表した。その発表を受けて、放射能の再拡散を懸念する市民グループが、試験焼却前後に焼却場周辺や島田市内(一部隣接市)の6 ヶ所とコントロール(比較対照)として静岡市内1 ヶ所で松葉を採取し、松葉に含まれる放射能の調査を行った。
私は松葉の採取方法のアドバイスと放射能の測定の分野でこの調査に協力させていただいた。ここでは、主として、焼却前後に採取された松葉に含まれる放射能について報告する。
1. 瓦礫の試験焼却の影響を示唆する点について
まず、震災瓦礫の試験焼却の影響が考えられる点について述べる。
№1 の放射能が、試験焼却後により高くなっている。増加の割合は、放射能量で約4.2 Bq/kg、比率で約130%となっている。試験焼却前でも他の採取場所に比べて放射性セシウムの放射能が高いことを考えると、焼却場で日常的に焼却されるゴミに含まれる放射能――静岡のゴミには量は少ないが福島からの放射能が含まれている(図.松葉による静岡県内の放射能測定結果)――が溜まりやすい場所だと考えられる。
№4、5 が焼却後に高くなっているが、同時期に採取された静岡市内の松葉の放射能も少し高くなっている。これは降雨による影響(降雨によって松葉の放射能の一部は洗い流されるが、その洗い流された放射能がより下方の葉に付着したり、また降雨自身に含まれる放射能が松葉に付着したりすることが考えられる)だと思われるが、№5 については焼却後の降雨前に採取した松葉の放射能もわずかであるが高くなっているので、降雨とは無関係に№5 の地点は試験焼却後の放射能が高かった可能性がある。また、比率で見ると静岡市内の増加は放射能量で約1.4 Bq/kg、比率で約120%であるのに対して№4 は約2.8 Bq/kg、180%、№5 は約2.6 Bq/kg、190%(降雨前は約1.5 Bq/kg、150%)となっており、静岡市内に比べて増加した量、割合ともに大きくなっている。
№2 は、放射能は約0.8 Bq/kg と増加した放射能量は少ないが、焼却前後の比は約180%になっている。
以上が震災瓦礫の焼却の影響を示唆する結果である。
結論
島田市の焼却施設は、ガス化・高温溶融一体型の炉で、燃焼・溶融帯の温度は1,000~1,800 度であり、『ごみ中の灰分、金属、セトモノ、ガラスなどの不燃物が高温で完全に溶融され、有害な重金属類は還元雰囲気の下、後段の排ガス処理にて捕集されるため高品質の溶融物が産出されます。溶融物は急冷後、スラグとメタルに分離され再利用されます。』と島田市HP に説明されている。このような高温で環境に飛散した放射性セシウムを(化学形態がどうあれ)焼却するとガス化して消失すると考えられる。少なくとも松葉を坩堝で燃やすと松葉に含まれる放射性セシウムは消失する。
さまざまな状況(焼却温度や焼却した放射能性セシウムの総量と灰に残っている放射能の総量など)を考えれば、ある割合で放射性セシウムが焼却場から環境へ放出されていると考えることができる。
島田市の焼却場から周辺に放出された放射性セシウムは、卓越風に乗り谷に沿って流れ、№1 の松葉を汚染し、その後島田市内を東の方向(№4, 5)へ向かったと考えることも出来るが、まだ推測の域を出るものではない。焼却が継続されるようであれば、継続した調査を行う必要があると考える。焼却される放射能の総量が多くなれば、環境に放出される放射能量も多くなるので、焼却の影響を明らかにすることができるであろう。
おわりに
環境に放出された放射性物質は、回収しない限り形を変えて何時までも環境に存在し続ける。事故などで放射性物質が環境に拡散すれば、環境から放射性物質を回収するのにエネルギーが必要になる。無駄なエネルギーを使って各地に拡散された放射性物質が環境を汚染すれば、汚染を環境から減らすには更にエネルギーを投入しなければならない。エネルギーの再投入がなければ、時間だけが頼りとなる。
放射線による被曝は、その被曝量に比例して影響があると考えて被曝管理をするのが現代科学の一般的な考え方である。したがって、福島第一原発からの放射性物質が少しでも回収され、あるいは人間の生活圏から遠ざけられない限り、広域への拡散という方法では日本に住む人全体への放射線被曝の影響を低減することはできない。
100 Bq/kg 以下というクリアランス・レベルはもともと原子炉を解体した際に生じるコンクリートや鉄骨などを再利用するために決められたものである。本来は低レベル放射性廃棄物として管理すべきものであるが、原子炉の解体という近未来の現実を考えたとき、その管理すべき低レベル放射性廃棄物の多さに困惑した結果として便宜上出てきた数値である。このクリアランス・レベル以下のコンクリートや鉄材は、そのまま、あるいは放射能の無いものと混ぜて使うことが想定されていたはずである。すなわち、環境に持ち込まれたとしても100 Bq/kg を超えるような放射能の濃縮はおこらない。
しかし、今問題になっている震災瓦礫については、焼却が前提となっており、その結果、濃縮などにより100 Bq/kg を超える放射能が灰などに残留し、最大8,000 Bq/kg のものが、埋め立て処理により大量に各地の環境に持ち込まれようとしている。
また、今回の島田市の松葉の調査結果は、焼却灰の処理だけではなく、震災瓦礫の焼却に伴って焼却場周辺の大気が放射能によって汚染する可能性についても考えなければならないことを示唆している。
放射能を含む瓦礫を、放射性物質を管理できない一般の焼却炉で焼却するという行為は、放射性物質を管理するという点からは、本来絶対に行ってはならないことである。
焼却可能な震災瓦礫(木材チップなど)や放射性物質を含む汚泥などは有機物を多く含むので、バイオ燃料の材料として使うことができる。バイオ燃料を作る過程で分離される放射性物質を回収すれば(そして回収された放射性物質を国が保管管理すれば)、瓦礫・汚泥の焼却によって放射性物質を再び環境に拡散させることはなくなる。現時点でバイオ燃料の製造が割高であっても、放射性物質の回収という観点から考えれば、補助金をだしたとても市民は納得するのではないだろうか。せめて、専用の焼却施設を建設してほしいものである。
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試験焼却後に放射能濃度上昇
(2012-05-09 18:04 みらいの種)から抜粋
今日の東京新聞で昨日の記者会見のことが記事にされました。島田市での瓦礫焼却試験の前と後で松葉のセシウム濃度を測ったら130~190%もセシウム濃度が上がりました。この原因と考えられるのが、島田の焼却試験で漏れた10万ベクレルのセシウムです。セシウムの99.9%が除去できると環境省が豪語していたのに
実際には約40%がどこかにいってしまいました。このデータも一緒に発表したのですが、このことにはどこのメディアも触れることさえありませんでした。瓦礫の広域処理に不利になる情報なので、報道してもらえないようです。