朝日新聞と西日本新聞に掲載された読者からの投稿
6月20日、朝日新聞「声」から転載
首相の再稼働論こそ精神論
無職 御手洗 稔(愛知県今治市 75)
野田佳彦首相は、関西電力大飯原発の再稼働表明で、再稼働に反対する意見を一括りに「精神論」と片づけた。「再稼働しなければ電力不足で住民や企業が困る。それを回避し国民を守る現実論こそが再稼動だ」という論法のようだ。
そうだろうか。野田首相は「福島を襲ったような地震・津波が起きても事故を防止できる対策と体制は整っている」と説明したが、明確な根拠もないまま「対策も体制も整った」と信じることこそ「精神論」ではないだろうか。
そういえば、野田首相は昨年12月、「福島第一原発の冷温停止状態を確認した」として「事故の収束」を唐突に宣言した。現実にはリスクと不安は残ったままだ。これも「一刻も早く収束を海外にアピールしたい」という「精神論」から出たことではなかったか。首相には怒りを通り越し、あきれるばかりだ。
歴史を振り返れば、明治時代の足尾銅山鉱毒事件や戦後の水俣公害問題にしても、目先の利益を優先した「現実論」にこだわったため、結果的には問題を拡大させてしまったのではないだろうか。
原発稼動に傾斜する野田政権には、もはや未来を託す気にはなれない。
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6月20日、西日本新聞「こだま」から転載
原因究明ない 再稼働に反対
小浜 隆=55
政府は、関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を決め、7月のフル出力を目指し関電は再稼働の準備を始めた。野田首相は記者会見で「国民生活を守るため、再稼働すべきだ」と述べた。
私は原発再稼働を強く懸念する。首相は「国民の生活を守る」「福島のような事故は決して起こさない」と言っているが、いまだ福島原発事故の原因も追究されていないし、安全対策も計画だけで、実施されていない。
安全性も確認できない原発を稼働させるのは無謀だ。電力が最も不足するのは、真夏の数時間だけ。私は食堂を営んでいるが、微力ながらエアコンなどの節電に努めようと思う。再稼働の前に、政府は国民にじっくり節電に取り組むよう訴えるべきだ。
私の母、おばは長崎で原爆に遭い、おばは被爆の影響で長年苦しみ、7年前に亡くなった。私は被爆2世として、福島原事故での放射能汚染の怖さをあらためて知った。環境や命と暮らしを守るためにも、個人の尊厳を破壊する原発再稼働に反対である。
(長崎市・自営業)