原発再稼動への声明(東本願寺) 寂聴さん「国民の声を聞いてない」

東本願寺は真宗大谷派で、瀬戸内寂聴さんは天台宗の尼僧ですが、宗教・宗派に関係なく、仏教系であれ、神道系であれ、キリスト教系であれ、「いのちを大切にする」宗教が、原発に反対するのは、当然のことだと思います。

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首相の「責任」軽々しい ◆ 喜ぶのは一部の人
ハンストで反対 瀬戸内寂聴さん「国民の声を聞いてない」

(2012年6月17日 東京新聞)

大飯原発の再稼働に反対し、経済産業相前のハンストに参加した作家の瀬戸内寂聴さん(90)は政府決定を「国民の声を聞いていない」と語った。
(聞き手・北島忠輔)

原発が安全と言い切れないことは、福島の事故が証明しました。その後始末は、進んでいません。将来が見通せず、悩んでいる人への手当てもいい加減なままです。

野田佳彦首相は「私の責任で」と言いました。だけど事故が起きた時、何ができるのでしょうか。仮に命を差し出されたとしても、被災者はうれしくないでしょう。軽々しい発言です。

1988年から4年間、福井県敦賀市の敦賀女子短大(現敦賀短大)の学長を務めました。海岸がきれいなところですが、大飯原発で事故があれば、影響は若狭の海だけでなく、京都や大阪などにも広がります。

私が被災地を訪ねると、たいていの場合、明るく迎えてくれます。ただ福島県飯舘村の時は明らかに雰囲気が違いました。「人の話なんて聞きたくない」という感じで。マッサージをしてあげると、ポツポツと口を開いてくれました。「政府は私たちのことを考えてくれない」と。

津波で町ごと流されてしまった地域は悲惨です。だけど復興への望みがあります。原発事故で放射性物質を浴びた地域は、その望みがない。だから、原発事故は怖いんです。

首相は再稼働は「国民を守るため」と説明しました。しかし、どれだけの国民が再稼働を望んでいるでしょうか。喜ぶのは一部の人だけ。私が接した人たちは、原発を怖がっています。多少は不自由でも、原発はない方がいいと思っています。

電力不足を懸念する声がありますが、昼間から電気をともし、テレビをつけっぱなしにするのはごく最近のこと。昔は違いました。節電はできるし、多くの国民は「原発ゼロ」を受け入れる準備を進めています。

政治家が国民生活の根っこまで下りてこないと、「国民のため」の政策はできません。被災地の実情を直視し、国民の声に耳を傾けているなら、再稼働という判断にはならないはずです。


大飯原子力発電所再稼動に関する声明
(2012.06.12 東本願寺からのお知らせ)

真宗大谷派は、福島第一原子力発電所の事故以来、一貫して「原子力発電に依存しない社会の実現」を目指してきました。

私たちは、福島第一原子力発電所の事故により、ひとたび放射性物質の拡散が起これば、取り返しのつかない事態に陥ることを、改めて思い知らされました。そして、原子力発電の「安全神話」も「必要神話」も、経済を優先するあまり、人間が創り出した闇であったことを認めなくてはなりません。

今なお、福島第一原子力発電所の事故で多数の苦しんでおられる方がある中で、一旦停止した原子力発電所を再稼動する理由に、人のいのちよりも優先すべきことがあったのでしょうか。

ここに、真宗大谷派は、このたびの野田内閣総理大臣の大飯原子力発電所再稼動を表明されたことに対し、強く遺憾の意を表明いたします。あらためて大飯原子力発電所はもとより、他の原子力発電所も決して再稼動することのないように、念願するものであります。

2012年6月12日

真宗大谷派(東本願寺)                 
宗務総長 安 原   晃

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