以下の2つの記事を読んで、安心してはいけない。被ばく労働者は100ミリどころか、5ミリでガンになり、労災の認定を受けている。「原発労働者のガン 5ミリシーベルトで労災認定」 メディアは、多くの専門家が批判している「がんのリスクが高まるとされる100ミリシーベルト」という言い方を未だに多用している。このことこそ問題にしなければならない。最後に掲載する記事「安全な被曝量というものはない 「社会的責任を果たすための医師団」ノーベル平和賞団体 創設者」を多くの人に読んでほしい。
・
甲状腺被ばく最大42ミリSv 放医研、福島子ども推計
(2012/07/11 12:26 福島民報)
東京電力福島第1原発事故による原発周辺の子どもの甲状腺被ばく線量は、最大で42ミリシーベルト、平均で12ミリシーベルトとする推計結果を、放射線医学総合研究所(放医研)の研究チームがまとめたことが11日分かった。甲状腺がんを防ぐための安定ヨウ素剤の服用基準は国際的に50ミリシーベルトとされ、今回の推計はこれを下回った。
放医研の鈴木敏和緊急被ばく医療研究センター室長らのチームは、政府が事故直後の昨年3月下旬に福島県いわき市と川俣町、飯舘村で、0~15歳の子どもを対象に実施した甲状腺被ばくの検査結果のうち、信頼性の高い1080人分を分析。
・
短期滞在者も内部被ばく 福島第1原発事故
(2012/07/10 23:59 共同通信)
東京電力福島第1原発事故による内部被ばくについて議論する国際シンポジウムが10日、千葉市の放射線医学総合研究所(放医研)で開かれ、長崎大の研究グループが、事故後1カ月以内に福島県に滞在した人の26%からセシウム134など3種類の放射性物質が検出されたとする研究結果を報告した。
一生の間に受ける放射線の総量を示す「預託実効線量」が1ミリシーベルトを超えたのは1人だけで、全体で、がんのリスクが高まるとされる100ミリシーベルトを下回った。
長崎大の松田尚樹(まつだ・なおき)教授(放射線科学)らのグループは、事故後、出張や支援活動などで福島県内に滞在した男女173人を対象に、長崎大で ホールボディーカウンターと呼ばれる装置を使って内部被ばく検査を実施した。
対象者の平均年齢は42・2歳で平均滞在期間は4・8日。55人からヨウ素131、67人からセシウム134、56人から同137が検出され、3種類とも検出されたのは45人だった。事故後8日間の滞在者で検出率が高かったという。
松田教授は「吸入による放射性物質の体内への取り込みは、極めて初期の段階で生じていたことを示す結果だ」と話している。
(共同通信)
原発作業員:被ばくでがん 労災10人 (毎日新聞 2011年7月26日)
◇9人は100ミリシーベルト以下
東京電力福島第1原発事故で収束作業にあたる作業員が緊急時の上限250ミリシーベルトを超えて被ばくするケースが相次いだが、過去にがんを発症して労災認定された原発作業員10人のうち9人は累積被ばく線量が100ミリシーベルト以下だった。遺族からは福島第1原発の作業員を案じる声が上がる。
厚生労働省によると、10人は作業中に浴びた放射線を原因として労災認定された。内訳は白血病6人、多発性骨髄腫2人、悪性リンパ腫2人。累積被ばく線量が最も高かった人は129.8ミリシーベルト、残り9人は100ミリシーベルト以下で、最も少ない人は約5ミリシーベルトだった。
◇50ミリの息子白血病死 母の怒り
中部電力浜岡原発の作業員だった嶋橋伸之さんは91年に白血病で亡くなった。29歳だった。神奈川県横須賀市に住む母美智子さん(74)は、体重80キロだった嶋橋さんが50キロにやせ衰え、歯茎からの出血に苦しんでいた姿が忘れられない。
嶋橋さんは下請け会社で原子炉内計測器の保守点検をしており、累積被ばく線量は8年10カ月間で50.63ミリシーベルトだった。
死亡の半年後に戻ってきた放射線管理手帳は、赤字や印鑑で30カ所以上も被ばく線量などが訂正されていた。白血病と診断された後も被ばくの可能性のある作業に従事可能なことを示す印が押され、入院中に安全教育を受けたことになっていた。安全管理のずさんさに怒りがわいた。
「福島の作業員は命を惜しまずやっているのでしょう。でも、国や電力会社は家族の心も考えてほしい。『危ない』と聞いていれば伸之を原発になど行かせなかった」と美智子さん。「何の落ち度もない労働者が亡くなるようなことはあってはならない。上限値はすぐに下げるべきだ」と訴える。
そもそも原発での被ばく労災が表面化することはまれだ。市民団体「福島県双葉地区原発反対同盟」の石丸小四郎代表(68)は震災前、福島第1原発の作業員6人の被ばくによる労災申請を支援し4人が認定されたが、実名を公表したのは2人だけ。「原発の恩恵を受けているとの思いがあり、狭い地域社会の中で補償支給を知られたくない人が多い」と指摘する。
がん以外の場合には認定自体に高いハードルがある。福岡市の元溶接工、梅田隆亮(りゅうすけ)さん(76)は79年2~6月に中国電力島根原発(松江市)と日本原子力発電敦賀原発(福井県敦賀市)で働いた。その後、突然鼻血が出るなどの症状が表れ、慢性的な倦怠(けんたい)感が続いた後、00年に心筋梗塞(こうそく)で倒れた。被ばくが原因ではないかと疑念を深め、08年に労災申請したが、認められなかった。累積被ばく線量は8.6ミリシーベルト。再審査を請求している梅田さんは「原発労働者が事業者の都合にいいように扱われている。このままでは自分のようなケースがどんどん生まれてしまう」と懸念する。
被ばくによる労災認定に明確な基準があるのはがんでは白血病のみ。「年平均5ミリシーベルト以上の被ばく」と「被ばく後1年以上たってから発症」の2点。他のがんは厚労省の検討会が判断する。【池田知広、関谷俊介、袴田貴行、西嶋正信】
(写真)白血病と診断された後にもかかわらず、被ばく可能性のある作業に従事可能な「Y」(イエス)の印が押され、その後「N」(ノー)に訂正された嶋橋伸之さんの放射線管理手帳=池田知広撮影
毎日新聞 2011年7月26日 2時30分(最終更新 7月26日 9時26分)
※原発労働者のガン 累積被ばく線量 5~130ミリシーベルトで労災認定
(共同通信)