原子力規制委 首相も「ムラ」の住人か (9月6日 中日新聞社説)

原子力規制委 首相も「ムラ」の住人か
(2012年9月6日 中日新聞社説)

 野田佳彦首相が原子力規制委員会の人事に原発推進派を起用する構えを示している。本来は国会の同意が必要なのに、首相権限で強行するという。とんでもない話だ。国会は何をしているのか。

 従来の原子力安全・保安院や原子力安全委員会は原発推進派の強い影響下にあって「規制する側が規制される側(電力会社)のとりこになっていた」(国会事故調査委員会報告)。それでは原発を実質的に規制できず、安全確保もままならな
い。

 新設する原子力規制委員会を国家行政組織法第三条に基づく独立性の高い委員会にしたのは、そんな反省に基づいて原発を推進する電力業界や経済産業省、学会などの影響力を断ち切るためだ。

 ところが政府が示したのは、そんな狙いからまったく外れた人事案だった。委員長候補に原子力委員会委員長代理や日本原子力研究開発機構副理事長などを務めた田中俊一氏、委員候補には日本アイソトープ協会主査の中村佳代子氏、日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究部門副部門長の更田豊志氏らを指名した。

 田中、更田両氏が関係する日本原子力研究開発機構は高速増殖炉もんじゅを設置し、使用済み核燃料の再処理をしている。つまり核燃料サイクルの推進機関だ。中村氏の日本アイソトープ協会は研究・医療系の放射性廃棄物の集荷、貯蔵、処理をする団体である。

 こうした経歴からは三人が原発推進を目指す「原子力ムラ」の住人であるのは明白だ。とくに中村、更田両氏は原発や核燃料再処理に関係する機関に勤める従業員の就任を禁じた規制委員会設置法に違反する疑いすら濃厚である。

 法律上は国会同意がなくても後で同意を得れば、首相の任命は可能だ。ところが原子力緊急事態宣言が出ている間は同意を得る必要がない。現在は宣言発令中なので結局、任命が既成事実化してしまう可能性が高い。これは事実上の国会無視と言っていい。

 本来なら国会事故調が提言したように、独立した第三者委員会が相当数の委員候補を選び、その中から透明で客観的なプロセスを経て委員を選ぶのが望ましい。政府任せではだめだ。

 こうした展開になった背景には国会の怠慢がある。国会は事故調報告を受けていながら、たなざらし同然にした。いまからでも遅くはない。国会が原子力ムラ人事をどう考えるのか。しっかり検証し意志を表明すべきである。


原子力規制当局の独立性を
(9月1日 10時53分 NHK)から抜粋

オーストリアで開かれていた原子力発電の安全性向上を目指す国際会合は、福島での原発事故の教訓を踏まえ、各国が原子力の安全規制を担当する当局の独立性をさらに高めることなど、今後安全強化策を進めていくことで合意しました。

福島の原発事故では、原子力の安全規制を担当する規制する立場である経済産業省の原子力安全・保安院が十分に機能しなかったとして、各国は法律などを整備して規制当局の独立性をさらに高めることで合意しました。


国会同意得ず首相任命へ 原子力規制委人事

(’12/9/5 中国新聞)から抜粋

 野田佳彦首相は5日、原子力の安全規制を一元的に担う新組織「原子力規制委員会」の委員長と委員4人について、国会閉会後の今月中旬にも任命する方針を固めた。国会の同意が必要な人事だが、民主党内に異論があるため今国会の採決を見送り、規制委設置法の例外規定を適用する。国会同意人事で首相の任命権行使は極めて異例。

 政府の人事案通り、初代委員長には田中俊一たなか・しゅんいち前原子力委員会委員長代理を、委員に中村佳代子なかむら・かよこ日本アイソトープ協会主査ら4人をそれぞれ起用する。

 与野党に田中氏らを“原子力ムラ”の出身だとして差し替えを求める声が根強い中、重要な人事を政権が押し切る形になったことに対し、批判が出るのは必至だ。

原子力ムラ発 規制委人事の系譜 「放射能安全」集落 
(2012年8月10日 東京新聞)

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