<復興予算>法務省が受刑者訓練に2765万円
(毎日新聞 2012年10月9日)
東日本大震災の復興予算が被災地以外の事業に使われている問題では、法務省も昨年度の3次補正予算で、北海道と埼玉県の刑務所で行う職業訓練の経費2765万2000円を計上した。出所した受刑者の再犯防止のため、労働需要の高まっている被災地で働けるよう小型建設機械の運転資格を取らせることを目的としている。ただ、被災地で働くかは出所者次第。期待通り復興に生かされるかは未知数だ。
田中慶秋法相は9日の政務三役会議で「復興予算の流用ではないかとの指摘もある。説明がつくのか点検してほしい」と指示した。
予算の内訳は1台約500万円の小型油圧ショベル4台分の購入費や、訓練を受ける受刑者の受験手数料など。北海道月形町の月形刑務所と埼玉県川越市の川越少年刑務所で既に事業は始まっている。
支出の根拠の一つは政府の復興方針。そこでは「復興に向けた労働需要の高まりに対応した刑務作業・職業指導の実施」と記載されている。ただし「被災地域における再犯防止に向けた取り組みとして」との前置きがあり、被災地や避難先での事業の実施が前提とも読める。
被災地以外の刑務所で実施されている理由について、同省矯正局は「既に小型建設機械の職業訓練をしていたり、スペースや指導者の確保が困難だったりするとの理由で、被災地内で希望する刑務所がなかった。このため、できるだけ被災地に近い地域の施設で実施することにした」と説明している。
しかし、受刑者が出所後、被災地でがれき処理に携わるかどうかは分からない。この点について、同局の説明は「被災地のがれき処理に小型油圧ショベルの運転手が集められていることで、他の地域で有資格者が足りなくなっていることも考えられる。その穴を埋めることも広い意味では復興支援だ」とやや苦しい。
それでも同省の幹部は「がれき処理という被災地の復興のニーズに応えられるだけでなく、被災地や周辺地域における再犯防止も期待できる。一石二鳥の意義ある事業だ」と胸を張っている。
◇公安調査庁は車14台2754万円
一方、法務省の外局である公安調査庁は昨年度の3次補正予算で、過激派や外国のスパイに目を光らせるため、無線配備の車両14台の購入費として2754万9000円を復興予算から計上し、認められた。
同庁によると、被災地で革マル派や中核派が、▽避難している被災者▽支援に訪れたボランティア▽反原発運動に携わる人たち??に対する勧誘を強めており、外国が原発などの重要情報を不正に入手しようとする動きもある。購入した車両は調査官が対象者を追跡するため導入するもので、宿泊施設を確保できない場合の宿代わりにも使用されている。
公安調査庁幹部は「過激派による被災地での活動実態が現実にあり、監視が必要だ。政府が原発などにおけるテロの未然防止対策として『テロ関連情報の収集や分析能力の強化』に努める必要があるとしており、これに基づいている」と説明している。【伊藤一郎】