米ドミニオンのキウォーニー原発が廃炉へ、天然ガスに押され買い手なく
(2012年10月23日 朝日新聞)
[22日 ロイター] 米電力大手ドミニオン・リソーシズは来年、米ウィスコンシン州にあるキウォーニー原子力発電所を閉鎖する。
米国のシェールガス生産が急増し、価格が下落したことで、石炭火力発電所の閉鎖に続き、原子力業界にも影響が出始めている。より小規模で使用年数がより長いキウォーニー原発が最初の標的となった。
天然ガスとの競争に敗れて閉鎖に追い込まれる原発が今後さらに増えるとの見方が出ている。
キウォーニー原発は1974年に商業運転を開始。2011年4月から売りに出されていたが、2033年までライセンスが更新されたにもかかわらず、買い手は見つからなかった。ドミニオンはこの原発の廃炉に関連し、第3・四半期に税引後費用として2億8100万ドルを計上することを決めた。
同社のトーマス・ファレル社長兼最高経営責任者(CEO)は22日、廃炉決定について「純粋に経済性に基づくもの」と説明した。
電力価格は天然ガス相場を追うように推移し、今年は10年ぶりの安値水準となっている。
米国にある政策研究所(Institute for Policy Studies)のシニア・スカラー、ロバート・アルバレス氏は「安い天然ガスが豊富にあるために、老朽化した原発設備をもつ電力事業者は苦境に立たされている」と指摘。原発の維持・管理コストが天然ガスに対する競争力をそぐケースがある、と付け加えた。
米国では、安価な国内ガスの生産が急増して原発新設計画が中止されていたほか、東日本大震災に伴う福島原子力発電所の事故を受けた安全性への懸念で原子力への国民の期待がそがれた。
原子力は天然ガスよりも安く発電できる一方、原発設備の運転に関連した労務、保安、監督当局による監視などのコストは、老朽化した原発の新しい天然ガス発電所に対する競争力をそぐ恐れがある。
米国の発電に占める天然ガスの割合は、2006年の20%から今年は30%に増えている。原子力の割合は約20%で変わっていない。
米国最大の電力網PJMの今年1─9月の電力価格は、昨年同期を約30%下回り、2002年以来の低水準となっている。
電力会社はすでに、一部の石炭火力発電所について閉鎖か燃料転換を表明している。
アナリストは、既存の原発に予定される設備投資の巨額さが原発閉鎖を促す可能性を指摘する。
米原子力規制委員会(NRC)元委員で、バーモント・ロー・スクールでエネルギー政策と法を教えるピーター・ブラッドフォード教授は「現在のガス価格見通しが正しいことになれば、多くの原発が60年のライセンス期間をまっとうすることなく廃炉となるだろう」と指摘。「大規模な設備投資の決断を迫られる時が(廃炉かどうかの)決め手となる可能性が高い」と述べた。
ドミニオンは、キウォーニー原発廃炉後も電力購入協定を結んだウィスコンシン州の公共事業体に対する義務を果たす方針。
同社は15州、600万の顧客に電力を供給する。同社の株価は22日、1%安で取引を終えた。