NHKオンデマンドで「使用済み核燃料」関連番組を見ようとしたら、「放送以外の配信の許諾が得られなかったため、一部映像を編集してお伝えします」と書かれていた。なぜ配信の許諾が得られなかったのか? 誰に「許諾」を得るのか?
この番組は、まさに今、日本人みんなで考えなければならない重要な問題を取り上げている。
◆NHKスペシャル “核のゴミ”はどこへ 検証・使用済み核燃料
解説者 : 根元良弘
全国の原子力発電所などに貯蔵される使用済み核燃料は17、000t。福島での原発事故で、その危険性が改めて明らかになった。その中で、トラブルによって操業開始の延期が繰り返されてきた再処理の問題や、最終処分場の問題が、改めてクローズアップされている。原発を動かしても、動かさなくても、もはや避けることができない使用済み核燃料の処理。この重い課題に社会はどう向き合うべきなのかを考える。
2013年放送 この番組についてのご注意
放送以外の配信の許諾が得られなかったため、一部映像を編集してお伝えします。
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◆“核のゴミ”はどこへ ―検証・使用済み核燃料―
(2013年2月10日放送 NHK)
3つの建屋が爆発した、福島第一原子力発電所の事故。原子炉とともに危機的な状況に陥ったのが、莫大な放射能を持つ使用済み核燃料の貯蔵プールだった。原子炉の稼働によって生じる使用済み核燃料は、全国の原発などに貯蔵され、その量は1万7千トンに達している。国が、使用済み核燃料を資源として貯蔵・再利用する、核燃料サイクルを推進してきたためだ。しかし、サイクルの要となる青森県六ヶ所村再処理工場は、トラブルの連続で操業開始を延期し続け、高速増殖炉「もんじゅ」も、1995年の事故以来、ほとんど動いていない。さらに、再処理に伴って生じる高レベル放射性廃棄物を埋設処分する場所も決まっていない。国は、3兆円近い経済効果をうたってきたが、唯一名乗りを挙げた高知県東洋町では、激しい反対運動が起こり挫折。原発事故後、さらに状況は厳しくなっている。こうした中、去年末に誕生した自公・安倍政権は、「前政権下の原発ゼロ政策の見直し」「核燃料サイクルの継続」を表明。使用済み核燃料、高レベル放射性廃棄物が再び大量に増え続ける懸念が出てきている。もはや、使用済み核燃料や廃棄物から目を背けることはできない私たちの社会。重い課題と向き合う、世界各国の事例も交えて伝え、次世代に負担を先送りしない方策を探る。
放送を終えて
原発事故のさなか、自衛隊のヘリコプターが3号機に水を投下する様子を多くの方がご記憶だと思います。当時私は、この放水を特集する緊急報道番組に携わっていましたが、放水の「的」が、使用済み核燃料の貯蔵プールだと聞き、意外な感じを受けたことを覚えています。貯蔵プールが原子炉建屋の中にあることは知識としては知っていましたが、 その潜在的なリスクについて考えたことは、恥ずかしながらありませんでした。
なぜ、使用済み核燃料を建屋内に貯蔵しなければならないのか・・・。このいわば素人の問いの向こう側には、原子力を考える上での本質的な問題が横たわっていました。私たちの社会は、原子力発電で生まれた電力を使ってきましたが、発電の「その後」については、きちんとした対策を打ってこなかったのです。「電力は欲しいけど、面倒なモノは引き受けたくない」―こうした構造の中で、使用済み核燃料は、原発、再処理工場に貯められ、核のゴミは行き場がない、という状況が続いてきたのです。しかし、福島の事故を経験した今、利益だけを得て知らん顔、ということはもう許されないと思いますし、現に存在する使用済み核燃料も核のゴミをどうするかというのは、逃げられない課題です。原発については、賛成・反対に二分されがちですが、問題意識を共有しなければ未来に負担を残すだけになってしまいます。番組が、対話が始まる、小さくともきっかけになればと願っています。
ディレクター 横井秀信
大量の使用済み核燃料と核のゴミをどう処理・処分していくのか。原発が生み出すエネルギーを享受し続けるのか国論が二分される中で、この避けては通れない問題にも目を向ける必要があるのではないか、と取材しました。原発立地地域に住むある女性が、身近に保管されている使用済み核燃料について「もう臭いものにふたはできない」、「国や電力会社だけに任せてはいられない」、としきりに言っていたことが強く印象に残っています。立地地域や過疎の町だけに、使用済み核燃料や核のゴミの問題を任せきりにせず、電気を消費してきた都市などにもこの問題が届き、そして今後のエネルギーのあり方をめぐる国民的な議論の中で、解決の道筋が少しでも見えてくることを願います。
ディレクター 石田彩佳