ベラルーシ科学アカデミーのミハイル・マリコ博士の言葉
「チェルノブイリの防護基準、年間1ミリシーベルトは市民の声で実現されました。核事故の歴史は関係者が事故を小さく見せようと放射線防護を軽視し、悲劇が繰り返された歴史です。チェルノブイリではソ連政府が決め、IAEAとWHOも賛同した緩い防護基準を市民が結束して事故5年後に、平常時の防護基準、年間1ミリシーベルトに見直させました。それでも遅れた分だけ悲劇が深刻になりました。フクシマでも、早急な防護基準の見直しが必要です」
◆<被災者支援法>放置は違法 福島住民ら提訴へ
(2013年8月20日7時1分配信 毎日新聞)
東京電力福島第1原発事故に対応する「子ども・被災者生活支援法」の成立から1年以上過ぎても国が支援の基本方針を策定しないのは違法だとして、福島県の住民や県外への自主避難者らが近く、国に早期策定を求めて東京地裁に提訴することが分かった。同法を所管する復興庁は、支援の対象地域を線引きする根拠となる線量基準を今も定めておらず、住民や自主避難者への支援は大きく遅れている。その不作為の責任が司法の場で問われることになった。
原告は、避難指示区域(年間累積線量20ミリシーベルト超)の外の福島市や郡山市などに暮らす住民や、県外への自主避難者のほか、線量が比較的高い栃木県那須塩原市や宮城県丸森町の住民ら計約20人。
同法の付則は、線量調査に基づき支援対象地域を毎年見直すよう規定している。このため原告側は「付則は1年以内に基本方針を作ることを前提としているのに、1年を超えても作られないのは違法だ」と訴えている。
また原告側は一般人の年間累積線量限度である1ミリシーベルトを基準とし、それを超える地域を支援対象にすべきだと主張。昨年6月の同法成立時の線量に基づき、原告全員が対象に当たるとしている。
だが、基準が決まらないため支援の対象地域も基本方針も定まらず、自主避難した原告への住宅・就労支援、対象地域に暮らす原告の被ばくに対応した健康診断などの支援がなされていないと批判している。
同法を巡っては、担当していた復興庁の当時の参事官が短文投稿サイトのツイッター上で暴言を繰り返していたことが発覚。3月8日には「懸案が一つ解決。白黒つけずに曖昧なままにしておくことに関係者が同意」と、線量基準や基本方針などの検討先送りを示唆したとみられる書き込みをしていた。実際、復興庁は基準や基本方針を決める目標時期すら明らかにしていない。【日野行介、袴田貴行】
◇子ども・被災者生活支援法
東京電力福島第1原発事故に伴う年間累積放射線量が国の避難指示区域解除基準(20ミリシーベルト)を下回るが一定基準以上の地域を支援対象地域とし、住民や子どもに国が医療・生活支援や健康調査を行うことを定めた法律。各人の意思を尊重し、(1)対象地域に居住(2)対象地域外へ避難(3)他地域から対象地域内へ帰還――のいずれの選択をした場合も支援するという理念が特徴。超党派の議員立法で昨年6月に成立した。
・
◆復興庁:被災者支援 先送り密議 暴言ツイート裏付け
(毎日新聞 2013年08月01日)
◇3月時点で「参院選後に」
東京電力福島第1原発事故に伴い、放射線量が一定基準以上の地域住民への支援を定めた「子ども・被災者生活支援法」を巡り、同法を所管する復興庁が3月、具体的な支援策作りの大前提となる「線量基準」の検討をどこが主導するか曖昧にしたまま、7月の参院選後に先送りすることで関係省庁と合意していたことが国の関係者の証言で分かった。昨年6月の同法成立以降、基準は一向に決まらず、被災者らから早急な支援策作りを求める声が上がっているが、これを無視するような申し合わせが秘密裏になされていた。
復興庁の当時の参事官が短文投稿サイト「ツイッター」上で暴言を繰り返していた問題で、元参事官が3月8日に「懸案が一つ解決。白黒つけずに曖昧なままにしておくことに関係者が同意」と書き込んだのは、この合意を指すとみられる。支援の対象範囲をどう線引きしても批判が予想されることなどから、参院選への影響に配慮したとみられる。実際、合意から約5カ月たった現在も線量基準の検討は始まっていない。
国の関係者によると、復興庁は2月、被ばく線量の基準を審議する放射線審議会を所管する原子力規制委員会に対し、支援法の線量基準をまとめるよう打診したが、規制委側は「科学的に決める問題ではない」として反発。双方と帰還準備担当の内閣府原子力被災者生活支援チームなどの担当課長・参事官が約1カ月間協議したが、基準作りをどこが引き受けるかは結論が出なかったという。
担当課長・参事官の会議は2月以降、復興庁主導で開かれ、元参事官が所属する「福島班」の担当参事官が毎回出席していた。この会議で線量基準の検討を参院選後に先送りすることが合意されたという。元参事官が「懸案が一つ解決」と書いた3月8日にも会議は開かれていた。その後も除染担当の環境省も加わり、月2回程度開かれている。
国が定める一般人の被ばく限度は年間積算線量1ミリシーベルトだが、政府は事故後、20ミリシーベルトを目安に避難指示区域を設けた。一方、昨年6月21日に成立した支援法は、線量が「一定基準」以上なら避難指示区域ではない地域からの自主避難者も支援の対象に含めるとした。線量基準として、被災者支援の市民団体などは「1ミリシーベルト」を主張するが、対象範囲が広ければ国の財政負担は大きく、基準の検討には政治判断も絡む。検討結果によっては被災者らの強い反発も予想される。
3月7日の原子力災害対策本部で、根本匠復興相は線量基準について「客観的な根拠に基づく国民の理解が必要」と述べ、検討の期限は示さなかった。その上で「線量基準に応じた防護措置の検討」に触れ、避難者の帰還に向けてまとめる被ばく低減策については、同本部で年内をめどに見解を示すとした。
復興庁広報班は毎日新聞の取材に対し「(3月8日のツイートに関わる)当該施策の内容は、回答を差し控えたい。3月7日以降、関係省庁の課長、参事官をはじめ関係者が不定期に打ち合わせをしているが、元参事官は参加していない」としている。【日野行介、袴田貴行】
◇ことば【興庁幹部の暴言ツイッター問題】
復興庁で「子ども・被災者生活支援法」を担当していた参事官が昨年8月の着任以降、同法の推進を求める国会議員や市民団体などを中傷するツイートを繰り返していた。同法は、原発事故の影響で放射線量が一定基準を上回る地域の子どもをはじめとする住民、避難者に対し、国が医療や生活を支援すると定めた理念法。しかし「一定基準」が決まらないため、成立から1年以上たっても基本方針が策定されていない。
・
◆原発被災者、国を提訴へ 支援法1年「具体策なく違法」
(2013年8月20日5時26分 朝日新聞)
【小沢香】東京電力福島第一原発事故の被災者を支援するための「原発事故子ども・被災者支援法」が成立して1年以上経つのに、国が具体的支援策をまとめないのは違法だとして、被災者16世帯19人が国を相手取った訴訟を近く東京地裁に起こす。具体策を示す「基本方針」を定めないのは国の不作為だとして、責任を問う。
提訴するのは、福島県郡山市と福島市など国による避難指示区域以外から避難している12人と、避難せず暮らす7人。原告は、▽基本方針がいまだに策定されていないのは違法である▽自分たちが同法に基づく支援を受ける立場にある――ことの確認を請求。そのうえで、支援を受けられないことによる損害賠償として、1人あたり1円を支払うよう国に求める。
同法は、一定の放射線量の基準を上回る地域について支援対象地域とすると規定し、その基準線量や支援内容などを基本方針として定めることになっている。基本方針策定にあたっては、被災者の意見を反映するとも定めているが、国はこうした手続きを取っていない。
国は今年3月、自主避難者への高速道路料金無料化などの支援を決めた。しかし、原告らは支援法に基づく住宅支援や健康被害防止策などが必要で、基本方針策定のめども示されていないとして、提訴にふみきる。