米、核燃料の再処理を断念 オバマ政権、政策転換(asahi.com/朝日新聞社)
2009年4月21日15時8分
【ワシントン=勝田敏彦】米エネルギー省(DOE)は20日、原子力発電所の使用済み核燃料の商業用再処理施設や高速炉の建設計画を取りやめる方針を明らかにした。計画は、ブッシュ前政権下の06年2月に発表され、米国の「30年ぶりの再処理路線復帰」として注目されていた。米原子力政策の大幅な転換となる。
建設計画は「国際原子力パートナーシップ(GNEP)」で示された米国内の中核部分。核のごみに含まれるプルトニウムが核兵器に転用されるのを防ぐ技術を開発し、そのための再処理施設を新しく建設する。新型高速炉「先進燃焼炉」の開発も含み、米国版の核燃料サイクルを実現させる狙いがあった。
両施設の建設は20年ごろがめどとされ、高速増殖炉「もんじゅ」「常陽」を持つ日本や、ロシアなども協力し、日本では三菱重工業が計画の検討を受注していた。
しかし、DOEの担当者は「短期的な商業的実証施設の計画は、前政権でGNEPの国内部分として重視されていたが、もはや先に進めることはない」と語り、断念する方針を明らかにした。
巨額の開発経費が見込まれるほか、新しい再処理技術を使ったとしても核兵器を作ることは可能で、やはり拡散につながるという見方が強いことも背景とみられている。議会でもGNEP関連予算は大幅に圧縮されている。
米国は今後も、国立研究所を中心に核燃料サイクルの長期的な研究開発を続け、日本などとの協力も続ける見通しだが、当面の「目標」が失われる。途上国などに原発技術を与える「国外部分」は継続されるため、GNEPがなくなるわけではない
米国は77年、再処理で取り出されるプルトニウムが核拡散につながるとして、国内での商業用再処理を凍結。使用済み核燃料をそのまま処分する「直接処分」政策を続けてきた。しかし、原発のごみを地下に埋設処分するネバダ州ヤッカマウンテンの高レベル放射性廃棄物最終処分場計画が遅れ、原発の運転が止まる心配も出てきたことなどからGNEPが浮上した。
オバマ大統領は、ヤッカマウンテン最終処分場について「適地とは思えず、客観的・科学的な分析に基づく解決策が必要」として反対を表明済み。2月発表の10年度予算教書でも、関連経費についてさえ縮小することを明記していた。
再処理施設の建設が断念され、埋設処分も当面は行わないとなると、現在も行われている原発敷地内などでの中間貯蔵が続くことになる。