◆「経営は楽ではありませんが、福島の子どもたちのために何としても検査を続けます」佐川文彦さん(ひらた中央病院理事長)
(2014年5月15日発行 通販生活2014夏号)
さがわ・ふみひこ●1959年、福島県いわき市生まれ。整形外科や接骨院での研修を経て、88年に佐川整骨院を開設。99年、小野中央クリニック開設。2005年、医療法人誠励会およびひらた中央病院理事長に就任。
おちあい・けいこ●1945年、栃木県生まれ。67年、明治大学文学部英文学科卒業後、文化放送に入社。74年に同社を退社し作家活動に入る。最新刊は『「わたし」は「わたし」になっていく』(東京新聞)。
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落合 佐川さんが理事長を務められている「ひらた中央病院」は、人口約4万人の福島県石川郡で唯一の病院ですね。今年で開業13年。原発事故があった翌年の6月には、病院内に「公益財団法人震災復興支援放射能対策研究所(以下、ひらた中央病院と表記)」を立ち上げられ、甲状腺検査やホールボディカウンター(WBC)による内部被ばく検査などを無料で行なっています。今日は詳しくお聞かせください。
佐川 よろしくお願いします。私たちの活動を紹介していただく機会を設けてくださって感謝しています。
落合 福島県は約36万人の子どもの甲状腺検査をしていて、県内59市町村のうち17市町村でもWBCによる内部被ばく検査を行なっています。民間医療機関のひらた中央病院が、なぜ県や各自治体と同様の検査をするようになったのか、まずはそのいきさつから。
佐川 震災直後、原発から20キロ圏内の富岡町や楢葉町などの病院に入院していた188人の患者さんをひらた中央病院で受け入れました(左頁写真)。そのとき、患者さんたちは手を合わせて「ありがとう、ありがとう」と言ってくださった。患者さんを受け入れたことで私たちは診療報酬を得たのですが、それを原発事故で苦しむ人たちの役に立てたいと思ったんです。
それで、まずWBCを1台購入して11年10月から内部被ばく検査を始めました。当時、県は内部被ばく検査の体制を整えるのが遅く、子どもの健康を心配するお母さんたちから「検査をしてほしい」という声が私たちの病院にたくさん寄せられていたのです。
震災から6日後の3月17日、30台のマイクロバスを連ねて原発近くの病院に取り残された患者を救出に行った佐川さん(左から2人目)。
落合 甲状腺検査も、やはり保護者の方たちからの要望がきっかけで始められたのでしょうか。
佐川 そうです。県は11年10月から甲状腺検査を始めましたが、36万人の子どもを検査するのに2年半もかけると言う。子どもの健康を心配する親からすれば、そんなに待っていられませんよね。順番を待ちきれないお母さんが子どもを福島県内の民間病院に連れていくと、県の検査を実施する福島県立医科大学(以下、県立医大)に遠慮してなのか、検査を受け付けない病院もありました。それで私たちは、12年11月から甲状腺検査を始めたのです。
落合 福島県の甲状腺検査は震災当時18歳以下の子どもが対象ですが、こちらには年齢制限は?
佐川 いえ、何歳の方でもけっこうですし、事故当時、福島県外に住んでいた方でも無料で検査が受けられます。
県の3倍の時間をかけて
甲状腺を丁寧に検査。
落合 ひらた中央病院では甲状腺の超音波(エコー)検査の体制は、どのようになっていますか。
佐川 甲状腺の専門医1人と技師3人がいてエコー検査は技師が担当しています。技師は、甲状腺疾患の治療では国内一と言われる伊藤病院(東京都渋谷区)で研修を受けました。専門医は甲状腺検査を始めるにあたって県外の病院から来ていただきました。技師が検査をした画像をもとに専門医が診断します。
落合 保護者の中には、県の検査方法に不満を持つ方が多くいらっしゃるようですね。エコー検査の時間は5分だという話を保護者の方々からよく聞きます。ひらた中央病院では、どのように検査をされているのでしょうか。
佐川 検査を始める前は県立医大と同様に5分程度のエコー検査でいいと思っていたのですが、伊藤病院では15分もかけて丁寧に検査をしているんですね。それで私たちも同じ時間をかけて、じっくりエコー検査をしています。
落合 こちらではエコー検査だけでなく、血液検査(小学生以上)と尿検査も1次検査の段階から実施していますね。県は血液や尿検査は2次検査からなのに、なぜ最初から検査するのですか。
佐川 尿検査では、日常のヨウ素摂取量を把握し、原発事故当時に放射性ヨウ素を甲状腺に取り込みやすい食生活だったかどうかを推定するために尿中のヨウ素の量を調べています。血液検査では、血液中の甲状腺ホルモンの濃度などから内科的な甲状腺の病気を発見できます。チェルノブイリ原発事故の被害を受けたベラルーシでも尿や血液の検査をしていましたし、保護者からの要望もあったので、エコー検査とセットで行なっています。
血液と尿の検査は結果が出るのに約1週間かかりますので、保護者の方にはお手数ですが再び病院に来ていただいて検査結果を伝えます。エコー検査の画像を見ながら血液や尿検査の結果と合わせて専門医が一人ひとりに直接説明しています。
落合 1次検査の段階からここまで丁寧にしていただくと、保護者も安心するでしょう。県で実施したエコー検査の画像については、以前より手続きが簡易化されたとはいえ、保護者がわざわざ情報公開請求をしないと手に入れられないという異常な状態が今でも続いているそうですね。エコー検査の画像がほしい人には渡しているのですか。
佐川 もちろんお渡ししています。医師から画像を見ながら説明を受けて、その画像を家に持って帰って家族に伝える。そういうことで安心感につながると思います。
約1年半で
5713人を検査。
落合 これまで甲状腺検査は何人の方が受けられたのでしょうか。
佐川 私たちは年齢制限も居住地の区別もなく検査を受けつけていますが、12年11月から今年4月8日までに5713人を検査しました。県の検査と同じく震災当時18歳以下の福島県在住の子どもに限ると3278人です。
落合 3月にはその検査結果の一部を公表されましたね(下表参照)。
佐川 慶應義塾大学SFC研究所と伊藤病院、そしてひらた中央病院との共同で分析した結果を公表しました。県が公表している約25万人に対して私どもが今回発表したのは、12年11月から13年9月までに検査をして結果が確定した1137人。対象者数が大きく違うので単純比較はできませんが、県の検査で「2次検査は必要なし」と診断された子どもが、うちの検査では「要2次検査」となったケースもあります。
落合 ひらた中央病院でも、県と同様にA1、A2、B、Cという判定をしていますが、A1とA2の割合が県の検査結果と大きく違います。県の検査ではA1とA2の割合はほぼ同数ですが、こちらの検査ではA2の割合はA1の約2・8倍です。
佐川 やはり検査方法の違いが大きいかもしれません。先ほど申し上げましたように、県のエコー検査は約5分で、うちは約15分。丁寧に検査をすることで、県の検査では見逃されている嚢胞(のうほう)や結節を見つけている可能性はあります。それから検査を受ける時期も関係してきます。県の検査を受けた子どもがそのときは何もなくてA1判定でも、半年後にうちの検査を受けたときに嚢胞などができていた、ということもあるでしょう。
さらにもう一つ。県は結節や嚢胞の大きさだけで判定しますが、うちは甲状腺の状態によって判定を変えています。エコー検査をすると、甲状腺の状態が粗く見えることがあります。専門医によれば、こういうときは結節や嚢胞がなくても内科的な甲状腺の病気が潜んでいる可能性があるそうです。そのときは、少し注意して様子をみたほうがいいという意味でA2判定としています。予防医療をするには甲状腺の状態をきちんと見ていこうということです。
落合 県の甲状腺検査は、ようやく1回目の検査が3月に終わりました。今後は20歳までは2年に1回、20歳を越えたら5年に1回の検査となります。
佐川 うちの病院では1年に2回は検査を受けるよう勧めています。仮に医学的に2年に1回や5年に1回の検査で問題ないとしても、お子さんや保護者の不安を少しでも解消し、早期発見・早期治療のためにもこまめに検査をしたほうがいいと思うんです。
落合 本当にそうですね。5分程度のエコー検査を受けて、「問題なし」と通知され、「次の検査は2年後」というのでは、精神的にもまいってしまいます。ひらた中央病院で1次検査を受けて、もし詳細な検査や手術が必要になった場合は、どのようなフォローをされているのですか。
佐川 結節が見つかった方には3ヵ月に一度もしくは半年に一度は検査を受けるよう勧めます。悪性の疑いがある場合は、ノドに針を刺して細胞を採取する「細胞診」検査をします。ここまではうちの病院でできますが、手術が必要な方には伊藤病院を紹介します。
落合 県立医大や福島県内の病院で手術は受けられないのでしょうか。
佐川 甲状腺検査を開始するにあたって県立医大に「何かあったときは県立医大に患者さんを紹介してもいいですか」と聞きましたが、はっきりとした返事はもらえませんでした。私たちは検査方法や結果の分析などについて伊藤病院の指導を受けております。その信頼関係も含めて、安心して患者さんをお任せできるのが伊藤病院だと考え、お願いしたところ、ご快諾いただけました。もし今後、患者さんのご希望があれば、県内の病院でも連携できるところがあるかどうか探っていきたいと考えています。
落合 今年2月に発表された県の最新検査結果では、甲状腺がんの子どもが33人、その疑いがある子が41人となりました。この結果についてはどう思われますか。県は「放射線の影響とは考えにくい」と言っています。
佐川 現段階では放射線と「関係ない」とも「関係ある」とも言えないでしょう。放射線との因果関係については、われわれが言うべきことではなく、国策として原発を推進した国が、しっかり調査して発表すべきことです。
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ひらた中央病院に関する
とんでもない噂。
落合 ひらた中央病院の活動は本当に素晴らしいものだと思いますが、実は残念なことがひとつあります。こちらで行なっている甲状腺検査や内部被ばく検査のデータが県立医大に流れているという噂があり、「ひらた中央病院は県立医大の手先だ」などという噂も一部流れています。違った意味での、風評被害です。悲しいことですが。
佐川 そんな噂が流れているとは残念です。私たちは小さな病院なので、やれることには限界があります。そのため、当初は県や県立医大とタッグを組んで活動できればと思っていました。 実際、WBC検査を開始した当初は県立医大の医師から指導を受けました。WBC検査を受ける方に向けた説明書にも、検査の判定はひらた中央病院もしくは県立医大で行なうことを明記していました。現在は県立医大とまったく交流はありませんが、そのようなことが噂の原因かもしれません。
ただ、県民の皆さんのためには県と県立医大と民間病院が協力したほうがいいという考えは、今でも変わりません。バラバラでやることのデメリットは大きいですからね。でも、私たちから呼びかけても、県や県立医大からは返事をもらえませんので。
落合 甲状腺検査に関しては、今年度から県は県内の民間病院にも1次検査を委託すると聞いています。昨年、県が民間病院に募集をかけた際、ひらた中央病院は応募されたのですか。
佐川 いいえ。県と同じ方法で検査をすることが条件でしたので、そうすると時間をかけたエコー検査や血液・尿の検査もできなくなります。ならば独自にやったほうがいいと思ったのです。
毎月かかる
1千万円のコスト
落合 お話をうかがうと感心させられることばかりですが、甲状腺検査をはじめ放射能に関する検査をすべて無料で行なうことで、病院の経営は相当大変なのではないでしょうか。
佐川 確かに経営は苦しいです。でも、国策で進めた原発の事故によって苦しんでいる人たちから検査費用をいただくわけにはいきません。
落合 国や県からの資金的な援助はないのですか。当然のものだと考えていますが。
佐川 一切ありません。国には何度も援助のお願いをしましたが、「そういう話は県としてください」と言われてしまう。県からは「(甲状腺検査や内部被ばく検査など)そんなことをしてくださいって誰かに頼まれたのですか?」と言われてしまいました。あのときは本当に悔しかったですね。
落合 実際、これまでにどれぐらいの経費がかかったのでしょうか。
佐川 甲状腺のエコー検査器2台とWBC2台、乳幼児専用WBC1台、それから食品の放射線測定器2台の購入費などで約2億円。甲状腺の状態をみるための血液・尿検査の外部機関への検査委託料、内部被ばく検査の際に着替えていただく衣服の代金、それから放射能対策専従職員の人件費など、それらすべてを合わせると毎月約1千万円かかります。機器の購入費を含めて、この3年間で約6億円かかりました。できる限り無料検査を続けたいと思いますが……。
落合 一般の方たちからのカンパは受けていただけるのですか。
佐川 ありがたいことに、これまで約150件で約2300万円のカンパをいただきました。
落合 でも、これからも毎月1千万円のコストがかかりますから……。
佐川 これまでは、正しいことをすれば支援の輪が広がると思っていました。支援してもらえそうなところがあれば、国内外のどこへでも行きました。でも、行く先々で言われたのは「なぜ県がやっていることを、一民間医療機関のあなたたちがするのですか」ということ。つまり、私たちがしているのは「余計なこと」なのでおカネは出せない、と。
落合 余計なことだなんて……。ひらた中央病院で甲状腺検査を受けたお子さんや保護者の方たちに行なったアンケートの一部(下コラム参照)を拝見しました。県の検査では拭いきれない保護者や本人の不安を、こちらの病院がしっかりと受け止めておられることが分かりました。
佐川 そう言っていただくとありがたいのですが、実はおカネに関しても根も葉もない噂があるんです。「ひらた中央病院は東京電力や国からたくさんのおカネをもらっているらしい。そうでなければ無料検査を続けられるわけがない」というような噂で(苦笑)。
落合 拝金主義がはびこっていて、よいことをしても「裏側で儲けているはず」と疑われてしまうのでしょう。
佐川 だから我々は、外で食事するときは周りに気を遣いながら食べているんです。何を言われるか分かりませんので(苦笑)。でも、いま無料検査をやめたら県民の皆さんはもちろん、職員も裏切ることになってしまいます。
落合 先ほど病院内を見学させていただきましたが、すれ違う職員の方たちが本当に気持ちのよい挨拶をしてくださいました。マニュアル的ではなく、心のこもった笑顔で。
佐川 震災直後、もともと240人の入院患者さんがいたところに188人の方を新たに受け入れたことで、マンパワーが圧倒的に不足しました。でも、職員は不眠不休で頑張ってくれた。うちの病院では忘年会のときに3・11以降の活動内容などをビデオで上映するんですけど、その映像を見て職員たちが泣くんですよ。こんな純真な気持ちでみんなも頑張っているのだから、無料検査を打ち切るわけにはいきません。
落合 汚染水や除染など何ひとつ解決の目処は立たない状況で、県民の皆さんの不安は一向に解消されません。そんななかで、ひらた中央病院の活動は明日への希望をつくってくださっています。今回の記事を読んだ方たちの間にきっと支援の輪が広がると思います。どうか健康にはお気をつけください。
佐川 歯を食いしばって、何としてもこの活動を続けていきます。
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◆ひらた中央クリニックにて甲状腺外来 勉強会を行いました
(2013年8月7日 医療法人誠励会)
ひらた中央クリニックにて、甲状腺外来に携わる職員を対象に診療の流れや検査内容の勉強会を行いました。
医事課(中田守)、看護師(折内香織)、検査技師(矢内理恵)、栄養科(服部ヒデ子)が各部門の立場から甲状腺診療に関わる発表をし、その後意見交換を行いました。
今後も福島県民の不安払拭のため、より良い甲状腺検査を県民の皆様に提供できるよう、職員一丸となり取り組んでいきたいと思います。
(記事:中田守)
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◆子ども被災者支援法”骨抜きバイアス”の実態
英文の勧告を誤訳、健康調査拡大を先延ばし
(2014年3月25日 東洋経済)から抜粋
意図的に誤訳をして、対策の範囲を狭めようとしたのではないか――そう見られてもおかしくない“疑惑”が判明した。
国連人権理事会から任命され、福島第一原発事故による被災者の人権状況を調査した弁護士による英文の勧告を、外務省が誤った日本語に翻訳。しかも同弁護士から求められていた対策について「実施済み」と公文書に記述しているのだが、対策は行われていないことも明らかになった。
独立した立場で原発事故被災者の人権状況を調査したアナンド・グローバー弁護士は、昨年5月に勧告を同理事会に提出。福島原発事故に際して、「多くの人々は政府が設定した『年間被ばく線量20ミリシーベルト』という避難基準のもと、放射線量の高い地域に住み続け、移住・避難のための経済支援も十分な健康対策も図られていない」と日本政府の姿勢を強く批判していた。
日本語では「避難区域の」を追加
この報告書に対し、外務省は次のように対応した。
2013年6月11日付けで「グローバー健康の権利特別報告者訪日報告書・補遺・仮訳」という文書をホームページに掲載。その中で、グローバー氏による勧告内容の記述を「1ミリシーベルト以上の放射線量の避難区域の住民に対して、健康管理調査が提供されるべきであること」と日本語に訳したうえで、対策について「実施済み」と明記した。
ところが、である。今年3月20日に参議院議員会館内で開催されたグローバー氏を招いての「院内勉強会」で、市民グループの一員として出席した河崎健一郎弁護士(福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク)から「原文を意図的に誤訳している」と指摘が持ち上がった。
グローバー氏の勧告の原文が、「1ミリシーベルト以上の放射線量のすべての地域に住む人々に対して、健康管理調査が提供されるべきであること」(The health management survey should be provided to persons residing in all affected areas with radiation exposure higher than 1 mSV/year.)となっていたのに対して、外務省は「1ミリシーベルト以上の放射線量の避難区域の住民に対して、健康管理調査が提供されるべきであること」と翻訳。日本語訳には、原文にはない「避難区域の」を付け加えてあるのだ。「意図的な誤訳だ」と河崎氏は追及した。
2012年6月に衆参両院で全会一致により可決成立した「東京電力原発事故子ども被災者支援法」の第13条では、原発事故による放射線の健康影響調査について、「必要な措置を講じるものとする」と定められている。特に、子どもである間に一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住したことがある住民の健康診断は、「生涯にわたって実施されることとなるよう必要な措置が講じられるものとする」とされている。
しかしながら、原発事故から3年が過ぎた現在ですら、放射線による被ばく影響に関する健康調査が実施されているのは福島県内だけにとどまっている。原発事故直後の放射性物質の飛散によってホットスポットが形成され、追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト以上の「汚染状況重点調査地域」に指定された千葉県柏市などの9市町村からも「健康管理および医療支援策の推進」の要請がされているが、環境省は「有識者会議での議論に委ねる」として、実施の判断を先延ばしにしている。
パブリックコメントが募集されたものの、「支援対象地域は、追加放射線量が年間1ミリシーベルト以上の地域にするなど、広く設定すること」という多く出された意見は取り入れられなかった。
その結果、福島県外の住民は健康調査や医療費支援などを受けることができないままだ。福島県内でも、放射線による健康影響に関する調査は18歳以下の子どもの甲状腺検査のみで、避難指示区域から避難した住民に限って、通常の健康診断の項目に上乗せする形で血液検査が実施されている。
政府は「科学的根拠に乏しい」と一蹴
グローバー氏の勧告では、「子どもの健康調査は甲状腺検査に限らず実施し、血液・尿検査を含むすべての健康影響に関する調査に拡大すること」とされているが、政府は「科学的根拠が乏しい」として、「受け入れることはできない」と回答している。
このままでは、子ども被災者支援法が掲げた「原発事故に係る外部被ばくおよび内部被ばくに伴う被災者の健康上の不安が早期に解消されるよう、最大限の努力がなされるものでなければならない」(第2条)という理念から遠ざかる一方だ。
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