何世代にも続いていける農業へ(1)

昨年、インタビューされた記事がウェブにアップされています。

何世代にも続いていける農業へ(1)
https://www.data-max.co.jp/2010/01/1_229.html
[特別取材]

2010年01月06日 17:01 更新

目先にとらわれず広く・長い視野のすすめ
ウィンドファーム  中村隆市社長

 遠賀郡でコーヒーの卸売りを行なっているウィンドファームは、発展途上国から有機農法で作られたコーヒー豆をフェアトレードで購入し、焙煎して販売している会社である。20年以上前から途上国での活動を始めており、さまざまな媒体で取り上げられるなど全国的に注目を集めている。世界をまたにかけて活動している中村隆市社長に、途上国での苦労話とその信念を伺った。5回に分けて連載する。

きっかけは公害病のドキュメンタリー映画
インタグ生産者の家族と中村社長
 ―事業を始められたきっかけを教えてください。

 中村 10代の終りに映画を作ろうと思い、今村昌平監督の映画塾(現・日本映画学校)に通いました。私はその一期生なのですが、あるとき、友人から誘われて水俣病のドキュメンタリーを見ました。特に胎児性水俣病の話が衝撃でした。母親が妊娠中に有機水銀で汚染された魚を食べて、その水銀が胎児に移行して胎児性水俣病の患者さんが生まれました。患者である子供たちの多くは歩くことができなかったり、自分で食事ができなかったりと重度の障害を持って産まれてきました。子供たちは、自分が水銀を引き受けて障害を持つことでお母さんの命を救ったという側面があるのです。この記録映画を見て大変なショックを受けました。彼らが生まれたのは、ちょうど私が生まれた頃で、しかも私の母は熊本県出身でしたから、私が水俣病を持って生まれてきてもおかしくなかったんです。それを知って、余計にショックを受けました。

 それが環境問題に関心を持つキッカケでした。その頃、有吉佐和子の「複合汚染」という小説が目に留まりました。内容は、小説だけども、私たちの身の回りにあふれている農薬や食品添加物などの化学物質の問題を扱っていて、仮に1つ1つの化学物質が安全だとしても、複合すると非常に危険が高まると書いてありました。それが頭に残っていまして、映画学校を出た後、有機農業に解決策を見出し、自分で有機農業を始めました。
翌年、できのいい野菜を選んで路上で売ってみたんですが売れないんです。なぜ売れないのか聞いてみたら「見た目が悪い」とのこと。大きさや形がバラバラだとか、わずかな虫食いでも商品価値がないというのです。私から見たら非常においしいし、栄養価も高く、食べ物としては大変優れているのですが、見た目が悪いということで評価されなかったのです。そういう体験をして、有機農法はすばらしいけど、今の消費者の意識では広まらないと感じました。

 どうしたらよいかと考え、生活協同組合(生協)に就職しました。7年間、有機農法を広める仕事を担当しました。そのとき、農薬の勉強会と合わせて有機農業を体験する機会をたくさんつくりました。生産者と一緒に体験することで、有機農業にはどれだけの手間暇がかかっているかを知ってもらったり、作物が成長することの喜びを実感してもらいました。そして、生産者と一緒に食事しながら、農業の大変さと素晴らしさを語り合うわけです。そんな体験をすると誰もが有機農産物の有り難さを感じます。そして消費者の意識も変わっていきました。今までは、キャベツ1個が50円で売られていたら「安い、うれしい!」と思っていたのが、有機農業の体験をした人たちは「安すぎる。これでは生産者が生活できない」と思うわけです。どれだけの手間をかけているのか知っている消費者は、生産者の立場になって、有機農業の大変さと素晴らしさをどんどん伝えていくようになり、有機農産物が生協内外に広まっていきました。

*フェアトレードとは安全で安心な作物を継続的に安心して作ってもらうために一定の価格を保障すること。発展途上国では作物が安い値段で買い叩かれている現状があり、生産者の保護が行なわれていないことが多い。

(つづく)

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