福島で育児 半数 「不安」 できるなら避難したい 24.6%

原発事故補償に不公平感を覚える 70%
出費が増え、経済的負担を感じる 59%
放射能の健康への不安が大きい 58%
放射線量の低い所に保養に行きたい 55%
福島での子育てに不安を感じる 51%
地元産食材は使わない 28%
できるなら避難したい 25%

福島で育児 半数「不安」 できるなら避難 24%

福島で育児 半数「不安」「できるなら避難」24%
(2015年3月12日 西日本新聞1面)から

東京電力福島第一原発事故を受け、福島県内の避難指示区域外で子育てをしている親の半数以上が地元での育児に不安を感じ、4人に1人が避難を望んでいることが、成元哲中京大教授や牛島佳代福岡大講師らのグループの調査で分かった。事故の影響が今なお深刻なことを浮き彫りにした。調査グループは「事故の影響は続いており、長期的な支援が必要だ」と指摘している。

調査は、原発事故の避難指示区域に近い福島県中通り地方の9市町村で、震災時に1?2歳だった子を育てる母親などの保護者を対象に2013年から毎年、アンケートで健康や生活状態を尋ねてきた。

福島県中通りの育児中の親への調査(2015年1月)

今年1月に配布したアンケートには4日現在、1184人が回答を寄せた。それによると、「放射能の健康影響についての不安が大きい」との質問に「あてはまる」「どちらかと言えばあてはまる」との回答が6割近くを占め、「福島で子どもを育てることに不安を感じる」も5割を超えた。「できることなら避難したい」は24.6%に上った。

情報の信頼性への疑念も強く、「放射能に関してどの情報が正しいのか分からない」が7割、「いじめや差別を受ける不安を感じる」も、5割超に達した。

一方、「地元産の食材は使わない」が3割近くあった。事故直後の約9割から減ったものの、少しでもリスクを回避したいとの思いは根強い。そうした対応は家計の圧迫にもつながっており、6割が「事故後、何かと出費が増え、経済的負担を感じる」と回答した。

調査グループは「地元産以外の食材使用や避難などの対策には費用がかかり、収入が低いほど負担が大きい。リスクへの対処がさらなるストレスにつながっている」と分析する。

成教授は「被災地の親が今も苦しんでいるという事実を社会全体で共有し、実効性のある対策につなげていくべきだ」と強調し、今後も調査を続ける方針だ。

◆国が公表している人口動態統計によれば、甲状腺がんだけでなく、さまざまな病気が増えている。
放射能から子どもを守る企業と市民のネットワーク設立
(2015/01/30 風の便り)から抜粋

 
子どもの甲状腺がん検査

チェルノブイリ原発事故で汚染されたウクライナ、ベラルーシ、ロシアの各共和国では、原発事故から5年後に被ばく線量を減らすための法律 「チェルノブイリ法」を制定しました。年間1ミリシーベルト以上に汚染された地域には「移住の権利」が与えられ、5ミリシーベルト以上は「移住の義務」があり、住むことができません。

チェルノブイリ法の基準

年間1ミリシーベルトを超える地域は補償の対象となり、無料で検診が受けられ、薬代の無料化、公共料金の免除、非汚染食料の配給、学校給食の無料化、症状に合わせた「保養所」の旅行券が支給されるなど様々な補償があり、移住をする人には、移住先での雇用を探し、住居も提供、引越し費用や移住によって失う財産補償なども行われています。

ところが、福島原発事故から4年になる日本では、1ミリシーベルト以上の汚染地に「移住の権利」がないだけでなく、「20ミリシーベルトまで安全」だとして、避難していた住民を汚染地に戻す政策をとっています。(具体的には、避難者への慰謝料が打ち切られるため、家計の負担が大きくなって避難の継続が難しくなります)

福島県で、甲状腺がんや心臓病などが明らかに増加している
通常、子どもの甲状腺がんは、100万人に1人。未成年の甲状腺がん年間発生率も100万人に2~3人とされていました。2006年の統計で、甲状腺がんと診断された20歳未満の人は、【全国で46人】でした。これは【未成年2250万人に46人】であり 【100万人に2.0人】ということになりますが、2014年の福島県では【37万人に58人】も甲状腺がんと診断されています。

福島 子どもの甲状腺がん

日本の人口の1.5%ほどの福島県で、通常の全国の発生数よりも多い58人が甲状腺がんになっているという異常な増加です。原発事故当時 0歳から18歳までの子どもたちは、この3年間で84人が甲状腺がんとなり、「がんの疑い」の28人を加えると112人になっています。

甲状腺検査 112人(今回4人含む)がんやがんの疑い 対象38万人中30万人受診 

3年間の子どもの甲状腺検査結果を見て心配なのは、福島原発事故の後、甲状腺がんが増えただけではなく、がんになる可能性がある結節やのう胞が年ごとに急増していることです。

罫線入り表 甲状腺 結節のう胞 H26年6月30日現在

5ミリ以上の結節(しこり)がある人が、0.5% → 0.7% → 0.9% と1.8倍に急増し、のう胞がある人も、36.2% → 44.7% → 55.9%に増加。精密検査が必要な子どもも1.8倍になっています。

子どもの甲状腺がんで特に心配なことは、転移が早いということです。
福島県の県民健康調査「甲状腺検査評価部会」(平成26年11月11日)の資料によると、福島県立医大で手術した甲状腺がん54例のうちリンパ節転移は74%(40例)甲状腺外浸潤が37%(20例)低分化がん4%(2例)と報告されています。また、鈴木真一教授が日本癌治療学会で、「8割超の45人は腫瘍の大きさが10ミリ超かリンパ節や他の臓器への転移などがあり、2人が肺にがんが転移していた」と報告しています。

チェルノブイリ原発事故で大きな被害を受けたベラルーシの国立甲状腺がんセンターの統計では、15歳未満は3人に2人がリンパ節に転移し、6人に1人が肺に転移しています。

ベラルーシの統計 甲状腺がんの転移 リンパ節67.5% 肺16.5%
(菅谷昭著『原発事故と甲状腺がん』より)

医療支援でベラルーシを何度も訪問する中で私は、原発事故の被害者などが孤立せずに働くための「福祉工房」をつくったナターシャさんという女性に出会いました。彼女は、2人の子どもをガンで亡くしていますが、息子さんは9歳で被ばくし、甲状腺がんが肺に転移して21歳で亡くなっています。娘さんも胃ガンが全身に転移して亡くなっています

こうした事実を踏まえるなら、放射能汚染地の未成年の甲状腺検査は2年に1回ではなく、ベラルーシのように年に2回以上か、少なくとも毎年健診を行う必要があります。また、原発事故当時19歳以上の人たちと福島県外の汚染地での健診も早急に開始する必要があります。(チェルノブイリ法では、年1ミリシーベルトを超える地域は補償の対象となり、年齢に関係なく誰もが無料で検診を受けられます)

こうした健診の拡充について、国連人権理事会の特別報告者、アナンド・グローバー氏の報告書が重要な指摘をしています。
(以下、2013年5月24日 毎日新聞から抜粋)

報告書は、県民健康管理調査で子供の甲状腺検査以外に内部被ばく検査をしていない点を問題視。白血病などの発症も想定して尿検査血液検査を実施するよう求めた。甲状腺検査についても、画像データやリポートを保護者に渡さず、煩雑な情報開示請求を要求している現状を改めるよう求めている。また、一般住民の被ばく基準について、現在の法令が定める年間1ミリシーベルトの限度を守り、それ以上の被ばくをする可能性がある地域では住民の健康調査をするよう政府に要求。国が年間20ミリシーベルトを避難基準としている点に触れ、「人権に基づき1ミリシーベルト以下に抑えるべきだ」と指摘した。

しかし、これらの重要な指摘に日本政府は、ほとんど応えていません。
そして、この人命を左右する重大なことが一部のメディアでしか報道されず、国民の大半は知らないままです。

福島で増えている病気は、甲状腺がんだけではありません。
チェルノブイリで増えた病気が、福島県でも増えてきています。

セシウムは、さまざまな臓器に蓄積する
ベラルーシのデータ でセシウムがたくさん蓄積している甲状腺、心臓、脳、腎臓の病気は、福島でも増えてきています。(甲状腺に影響を与えるのは放射性ヨウ素だけでありません。セシウムは、さまざまな臓器に蓄積して放射線を浴びせ続けます)

心筋や甲状腺にセシウムが蓄積する

福島県と全国平均との比較
【福島の死亡率が全国平均より1.4倍以上高い病気】

2013年の人口動態統計で、全国平均より福島の死亡率が1.4倍以上高い病気は、内分泌・栄養及び代謝疾患(1.40倍) 皮膚がん(1.42倍 ) 脳血管疾患(1.44倍) 糖尿病(1.46倍) 脳梗塞(1.60倍)、そして、チェルノブイリと同様に最も急増しているのが、セシウムが蓄積しやすい心臓の病気で、急性心筋梗塞の死亡率が全国平均の2.40倍、慢性リウマチ性心疾患の死亡率が全国平均の2.53倍、どちらも全国1位になっています。(これらの数字は、病気の発生率ではなく死亡率です)データソース 

慢性リウマチ性心疾患のグラフ
(慢性リウマチ性心疾患のグラフ 赤は全国平均、青は福島県)

下の表は、原発事故の後に死者が急増した病気が分かりやすくまとめられています。
2012年福島県の死因ワーストランキング
(データは宝島から拝借 クリックすると画像が拡大できます)

死亡数でもこのように増加していますが、病院での治療数や手術数が急増しています。

福島県立医大で治療数・手術数が増えている病気
様々な病気が増えていますが、2倍以上に増えている 病気を一部紹介します。(グラフ) これらの病気のほとんどは、福島県全体で増えており、周辺の県でも増えています。
※倍率は、2010年(H22年)と2012年(H24年)の比較
<福島県立医大での治療数と増加倍率>
*非外傷性頭蓋内血腫 (13→33→39)3倍    
*白内障、水晶体の疾患 (150→344→340)2.3倍 
*膀胱腫瘍(66→79→138)2.1倍        
*前立腺の悪性腫瘍(77→156→231)3倍   
*弁膜症(35→54→103)2.9倍 ※心臓弁膜症  
*静脈・リンパ管疾患(11→43→55)5倍   
*閉塞性動脈疾患(16→47)2.9倍    
*小腸の悪性腫瘍、腹膜の悪性腫瘍(13→36→52)4倍 
*直腸肛門(直腸・S状結腸から肛門)の悪性腫瘍(31→60→92)3倍
*胆のう、肝外胆管の悪性腫瘍 (32→94→115)3.6倍
*骨軟部の悪性腫瘍(脊髄を除く)(13→41→77)5.9倍 
*扁桃周囲膿瘍、急性扁桃炎、急性咽頭喉頭炎(11→11→52)4.7倍
      ↑
甲状腺に近い「扁桃周囲膿瘍、急性扁桃炎、急性咽頭喉頭炎」という病気は福島県全体で急増しています。(周辺県でも増えています)
この病気の治療数・手術数の合計で、福島県の病院が全国ランキングの15位までに3つも入っています。(DPC対象病院)
福島・太田総合病院付属西ノ内病院(59→81→189)3.2倍 全国3位
福島・白河厚生総合病院 (28→48→155)5.5倍 全国8位
福島・大原綜合病院 (29→43→138)4.8倍 全国14位

栃木県でも急増しています。(倍率は、2010年と2012年の比較)
栃木県・獨協医大(10→22→75)7.5倍
栃木県・済生会宇都宮病院(10→12→81)8.1倍
栃木県・栃木医療センター(14→84→132)9.4倍

     *      *      *

日本もできるだけ早く 「日本版のチェルノブイリ法」をつくって、被ばく量を軽減させる必要があります。 ところが、原発の輸出や再稼働に熱心な安倍首相は、健康影響を無視するだけでなく、東京オリンピック 招致に当たり、福島原発事故による健康への影響は、「今までも、現在も、将来も、問題ないと約束する」と信じられない発言をしました。

安倍首相「健康問題については、今までも現在も将来も問題ないと約束する」

そして、安倍首相に同調するかのように原子力規制委員会も「年20ミリシーベルト以下は健康影響なし」と発表。被ばく対策が進むどころか、逆に、避難した住民を20ミリシーベルト以下の放射能汚染地に戻す政策を進めています。なんという倫理観のない人命軽視の国なのでしょうか。

福島民報:20ミリ以下、健康影響なし

福島原発事故の前から存在している法律
*法律で定められた一般市民の被ばく限度は「年1ミリシーベルト」
(放射線障害防止法)
*病院のレントゲン室などの放射線管理区域は「年5.2ミリシーベルト」
(放射線障害防止法)放射線管理区域では、18歳未満の就労が禁止され、飲食も禁止されている。
*原発等の労働者がガンや白血病で亡くなった場合の労災認定基準は年5ミリシーベルト以上
累計5.2ミリシーベルトで労災が認定されている

日本赤十字社は、原子力災害時の医療救護の活動指針として、「累積被ばく線量が1ミリシーベルトを超える恐れがあれば、退避する」としています。

ロシア科学アカデミー会員で、報告書『チェルノブイリ―大惨事が人びとと環境におよぼした影響』(日本語訳書『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』岩波書店 2013年発行)をまとめたアレクセイ・ヤブロコフ博士はこう言っています。「偽りのないデータというのは、1キュリー/平方キロメートル(年約1ミリシーベルト)以上に住むすべての人々に何らかの健康被害が出ていることです。5キュリー(5ミリシーベルト)に住む人は、さらに被害が増大します。健康被害は汚染レベルが高くなるにつれ明確に増大します」

調査報告 チェルノブイリ被害の全貌

そして、2011年4月に内閣官房参与の小佐古敏荘・東大教授(放射線安全学)は、年間20ミリシーベルトを基準に決めたことに、「容認すれば私の学者生命は終わり。自分の子どもをそういう目に遭わせたくない」と抗議の辞任をした会見で、「年間20ミリシーベルト近い被ばくをする人は原子力発電所の放射線業務従事者でも極めて少ない。この数値を乳児、幼児、小学生に求めることは学問上の見地からのみならず、私のヒューマニズムからしても受け入れがたい」 と発言しています。

全文) 

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