これまで政府は、「原発のコストは、他の発電方法より安いから推進する」と言ってきました。しかし、原発のコストは本当は高いので、本当に電力自由化してしまうと淘汰されます。そこで、原発を続けたい政府は、「原発を持たない新規参入の電力小売会社」から電気を買う消費者にも「原発の廃炉費用」や「使用済み核燃料再処理費用」を負担させようとしています。具体的には、送電線使用料(託送料金)に原発関連費用が上乗せされます。このような原発を優遇するやり方は、本当の電力自由化とは言えません。原発を利用しない消費者から廃炉費用や再処理費用の徴収はやめるべきです。
※2014年12月18日 西日本新聞
◆廃炉費全利用者が負担 有識者会議決定
(2015年1月14日 東京新聞夕刊)
原発の廃炉会計制度見直しに関する経済産業省の有識者会議は14日、報告書案をまとめ、2016年の電力小売り全面自由化後も、原発の廃炉費用を電気料金に転嫁することを決めた。14年度内に関連省令を改正する方針。新規参入の電力小売会社からの購入も含め、原則として全ての利用者が負担する方向となる。全利用者に負担を求めることには反対意見もあったことから、例外規定を設けるなどの詳細は今後検討する。
大手電力が抱える老朽原発の廃炉を円滑に進めるため、費用を確実に回収する。利用者は原発に頼らない新規参入事業者から電力を購入しても、負担を迫られることが想定される。
現在の制度は、原発を持つ大手電力が廃炉費用を電気料金の原価に算入し、利用者から徴収している。電力小売り全面自由化により、原価を基に料金を決める「総括原価方式」がなくなるため、新しい仕組みにする。
具体的には、大手電力から分離してできる送配電会社が、送電線の利用料(託送料)に廃炉費用を織り込む。大手電力と新規参入の電力小売会社のいずれも送電線を使うため、利用者は原則として、どの事業者を選んでも廃炉費用を支払うことになる。
一方、有識者会議の委員からは、原発に批判的な電力小売会社や利用者から廃炉費用を徴収することに異論も出ていた。
また、原発のタービンなど廃炉になると役割がなくなる設備を資産にできるよう、会計ルールを改める。十年で減価償却できるため、大手電力の負担が軽くなる。
◆原発の電気価格、国が保証? 自由化後も優遇策
(2014年8月22日 東京新聞 朝刊)
経済産業省は21日、電力の完全自由化後も、原発を持つ電力会社に損失が出ないよう支援する制度を検討していることを明らかにした。電力会社をつぶさないための現在の総括原価方式は自由化で撤廃されるが、新制度案は原発を特別扱いした「第二の総括原価」となりかねない。 (岸本拓也、吉田通夫)
家庭用の電気料金は現状では、国の認可制度の下、電力会社が原発などの発電費用をすべて回収できるように設定できる総括原価方式で決まっている。だが、2016年4月に始まる電力の完全自由化策の一環として、総括原価方式は18~20年をめどに廃止され、料金は電力会社が自由に決められるようになり、競争による企業努力で消費者にとっては安くなることが期待されている。
しかし、経産省がこの日の有識者会議で示した案では、原発で発電した電気の基準価格については、完全自由化後も国と電力会社が決定し、市場価格が基準価格を下回った場合は、差額を電気料金などで穴埋めする。基準価格は総括原価方式と同様に、原発の建設費や使用済み核燃料の処分費用などの投資額を基に決めるため、大手電力は損をしない。
原発にはこれまでも手厚い優遇策が取られており、会議では九州大の吉岡斉教授が「原発は極端な優遇策を講ずるに値しない」とする意見書を提出。原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「国や電力会社が繰り返してきた『原発は安い電源』との主張に矛盾する」と批判した。
◆「原発のコストが一番安い、うそだった」小泉元首相
(2014年10月22日 朝日新聞)から抜粋
小泉純一郎元首相
ほかの国に比べて日本は地震、津波、火山の噴火が多い。原発をやってはいけない国だと確信した。政府は『日本の原発は世界一、安全基準が厳しい』と言うが、米国やフランス、アイルランドと比べてどこが厳しいのか、全然示していない。廃炉の費用、賠償費用、安全対策の費用。最終処分場なんて千年万年作らない。これを入れてないんだから、原発のコストが一番安いというのは、とんでもないうそだった。
◆そもそも原発は“安いから使う”ということではなかったのか 電力自由化で売れなくなったら「消費者が差額負担」(2014年9月11日 そもそも総研)
政府や原子力ムラは、原子力発電は安いから使うと言い続け、だから九州電力の川内原発も再稼働させるとしている。ところが、経済産業省の総合資源エネルギー調査会・原子力小委員会は「原発は高くつく」という前提で議論が行われていた。
論点は「原発の価格保証」だ。電力自由化の方向は決まったが、そのなかで原子力だけに価格保証を考えるという議論だ。政府・経産省が心配する「このままでは自然淘汰で原発ゼロ」
伴委員「原子力は電力自由化と合わないですよ。コストが高い。原子力を生き残らせるためには支援が必要だということで支援策の議論をしています」
電力の小売りを全面自由化する「改正電気事業法」が6月(2014年)に成立した。これが電力自由化だ。従来はコストに利益を上乗せする総括原価方式で電気料金を決めてきたが、自由化によって市場が決めることになる。ただ、原発だけは特別扱いしようというのだ。
伴「基本的には高いことが明らかになっています。放っておくと淘汰されるので守ろうと?いうことです。『差額決裁契約』といいます。市場の価格との差額を補填しましょうとい?うことですね」
玉川「だれが補填するんですか」
伴「第3者機関を作って消費者から電気料金から資金を集めるわけです」
玉川「結局、消費者が負担するということですね」
伴「消費者が負担する」
・・・以下は、後日掲載した参考記事・・・
◆電力自由化 電力会社 「原発はコスト面で不利だ」(2002年12月27日 毎日新聞)
◆原発ゼロへ再考を 原子力は高くつく(2015年11月19日 中日・東京新聞【社説】)
◆送電料の1割が原発費用 九電などが上乗せ申請 再生エネ業者も負担
(2015年11月28日 西日本新聞)
電力小売り全面自由化に向け大手電力9社が経済産業省に申請した送電線使用料(託送料金)に、使用済み核燃料再処理など送電と無関係な原発関連費用が上乗せされ、原価の1割近くを占めていることが分かった。