核燃再処理工場:完成、2年延び12年に 社長「延期は最後」

六ケ所村の核燃再処理工場:完成、2年延び12年に 相次ぐトラブルで /青森
(2010年9月11日 毎日新聞)

社長「延期は最後」と表明

 日本原燃(六ケ所村)は10日、使用済み核燃料再処理工場の完成時期を、予定の10月から12年10月に延期すると発表した。2年という過去最長の延期は国が進める核燃料サイクル政策や税収を期待する地元自治体に大きく影響を与えかねない。川井吉彦社長は県民におわびした上で「延期は今回で最後との覚悟で全身全霊で取り組む」と決意を述べた。【矢澤秀範】

 原燃が発表した新しい工事計画によると、11年度内をめどにガラス溶融炉の温度計追加設置工事や茨城県東海村の実規模試験施設と実機の比較検証などを進める。検証はトラブルの起きた炉とは別の系統も含めた2系統で行い、確実なデータを取れるよう「裕度を持たせた」工程にした。ガラス固化試験も11年度内中に始めたい考えで、2系統で性能を確認し、12年10月の完成を目指す。

 原燃は昨年8月、完成時期を1年2カ月延期した際、「ゆとりある」工程表を作成したが、相次ぐトラブルで計画が崩れ、来月の完成が間に合わなくなった。この間に得られた知識などを反映させた上で試験を確実に成功させたい考えで、川井社長は新工程を「不退転の覚悟で取り組む」と強調した。

 また、原燃は延期に伴い、4000億円の増資を決めた。得られた資金は、工場完成後の製品貯蔵庫や廃棄物などの関連施設のほか、10月着工予定のMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料加工工場や新型遠心分離機を導入するウラン濃縮工場などの設備投資に充当する。主要株主で原発を抱える電力10社を中心に出資を要請する。

 報告を受けた三村申吾知事は厳しい表情で「安全を第一に当面の課題を解決し、安定運転をすることが求められる」と述べた。この後、先月受け入れを表明した海外から返還される放射性廃棄物に絡む最終処分地の選定問題と合わせ、国の政策方針を確認するため、政府と県で作る「核燃料サイクル協議会」の開催を直嶋正行経済産業相に要請した。

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 ■解説

 ◇国は不退転の決意で

 六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場は、全国の原発から出る使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出し、再利用する核燃料サイクル政策の中核を担う施設。2年という過去最大幅の延期は計画全体に影響を与えるだけでなく、政策に対する国民の懸念や不信を増幅しかねない。

 度重なる延期は、高レベル放射性廃液をガラス固化する試験でトラブルが相次いだのが原因だ。再処理工場の当初の完成予定は97年12月。既に10年以上が経過し、事業指定を受けてからの延期は15回にも上る。地元自治体の税収が先送りとなる一方、増え続けるのは当初予定の3倍近い建設費と「核のごみ」と指摘される使用済み核燃料だけだ。

 国内の原発からは年間約1000トンの使用済み核燃料が発生しており、11年度には工場の貯蔵プールがほぼ満杯に達する。原発敷地内での保管長期化も進んでおり、第2再処理工場用として建設中のむつ市の中間貯蔵施設(12年7月操業予定)に一部を運び込まざるを得ない状況だ。再処理工場の遅れが計画に影響するのは避けられない。海外から廃棄物の返還も進む中、最終処分地選定も前進しておらず、核燃料サイクルの課題は山積みだ。

 原燃は12年10月の完成に向け「不退転の決意」で取り組むとした。原燃の増資に応じる電力各社を含め、核燃料サイクルの実現に国が不退転の決意で取り組む必要がある。【矢澤秀範】

再処理工場完工延期
(2010年9月11日 読売新聞)

確実性重視「2年」に 原燃社長 「工程変更、最後の覚悟」

 日本原燃は10日、使用済み核燃料再処理工場(六ヶ所村)の完工時期を2012年10月まで大幅延期することを発表し、会見した川井吉彦社長は、「多少時間がかかってもしっかり取り組むことにした」と、小刻みに延期を繰り返してきたこれまでの方針とは一転、確実なスケジュールのもとで慎重に最終試運転を進める考えを示した。一方、報告を受けた三村知事は、大幅延期が核燃料サイクルに与える影響を懸念。直嶋経済産業相を訪ねて国の方針に変わりがないことを確認するとともに、国と県による「核燃料サイクル協議会」の開催を要請した。

 日本原燃は同日午前、完工時期を2年延期する工事計画変更届を国に提出し、県や県議会に報告。川井社長はその後、青森市内で記者会見に臨み、「県民には心配をかけることになったが、最後の工程変更という覚悟で取り組んでいきたい」と、決意を表明した。

 原燃は2006年3月に最終試運転を開始し、07年11月には、試運転の最終段階となるガラス固化体の製造試験に取りかかった。しかし、当初は1か月余りで終えるはずだった試験は難航。溶融炉内のレンガが落下するトラブルなども追い打ちを掛け、試運転が始まって以降、2か月~1年2か月の幅で8回の完工延期を繰り返してきた。再処理事業指定申請を国に提出してから数えると、延期は17回に及んでいた。

 川井社長は会見で、「これまでの検証でやるべきことがはっきりし、多少時間がかかってもしっかりと取り組むことにした結果」と、今回の延期が過去と比べて長期にわたる理由を説明。関係者によると、一度は1年10か月の延期も検討したものの、さらに余裕のあるスケジュールを見込んで2年とした。

 原燃は今後のスケジュールとして、年度内に最終試運転を再開し、その後、ガラス固化体の製造試験のトラブルを解消するための工程を加えるとした。具体的には、放射性廃液中の金属物質が溶融炉内にたまる不具合が再び起きないか模擬廃液を使って5~6か月検証し、実際の廃液による製造試験は12年4月以降に実施する。その上で、同年10月には安定した運転ができるとした。

 一方、三村知事は10日午後、急きょ上京して直嶋経産相と面会。「今回の延期が核燃料サイクルに影響してはならない。政府一体としての対応方針について確認したい」と、核燃料サイクル協議会の開催を要請した。直嶋経産相は「要請を重く受け止め関係者と相談をしていく」と、前向きに検討する意向を示した。核燃料サイクルの推進も「着実に取り組みたい」と確約した。

 また、原燃は同日、財務基盤強化のため、4000億円を増資する方針も発表した。MOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料工場や海外から返還される低レベル放射性廃棄物の貯蔵建屋を建設する費用などにあてる。
(2010年9月11日 読売新聞)

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