子どもに20ミリシーベルト問題、関連報道

子どもに20ミリシーベルト問題、関連報道

東日本大震災:小佐古・内閣官房参与の辞任表明文要旨 (毎日新聞)

・官邸と行政機関は、法律などに沿って原子力災害対策を進めるという基本を軽視し、その場限りの対応をして収束を遅らせているように見える。

・「緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)」が、法令などに定められた手順通りに運用されていない。

・甲状腺の被ばく、特に小児が受ける放射線量を関東、東北地方全域にわたって迅速に公開すべきである。

・放射線業務従事者の緊急時被ばく限度の引き上げで、官邸と行政機関が場当たり的な政策決定をとっているように見える。放射線審議会での決定事項を無視している。

・年間20ミリシーベルト近い被ばく者は約8万4000人いる原発の放射線業務従事者でも極めて少ない。年間20ミリシーベルトとした校庭での利用基準に強く抗議する。

毎日新聞 2011年4月30日 東京朝刊


小佐古内閣参与が辞任 政府の原発対応「場当たり的」 (日本経済新聞)

2011/4/29 20:23 (2011/4/29 23:08更新)

 福島原発事故への対応に当たるため、3月16日に内閣官房参与に就任した小佐古敏荘(こさこ・としそう)東大大学院教授は29日、菅直人首相宛てに辞表を提出した。小佐古氏は衆院議員会館で記者会見し、政府の原発事故への対応を「場当たり的な対応で事態収束を遅らせている」と批判した。小佐古氏は放射線安全学などが専門で、3月16日に事故の対応に当たるため参与に就任した。

 特に緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の運用に関して「計算結果が使用できる環境にありながら、きちんと活用されなかった。データを隠さず開示すべきだ」と主張した。そのうえで「法令に定められている手順通りに運用されておらず、結果も迅速に公表されていない」と抗議した。

 小学校などの校庭利用を制限する限界放射線量を年間20ミリシーベルトに決めたことについては「20ミリシーベルト近い被曝(ひばく)をする人は約8万4000人の放射線業務に従事する人でも極めて少ない」と疑問を投げかけた。同時に「容認したと言われたら学者生命が終わりだ。自分の子どもにそうすることはできない」と見直しを求めた。

 記者会見には小佐古氏と協力して、原発への対応を首相官邸に助言してきた民主党の空本誠喜衆院議員が同席した。


小佐古内閣参与が抗議の辞任 政権の原発対応遅れ批判 (共同通信)

 首相官邸に参与を辞任する意向を伝え、記者会見で涙ぐむ小佐古敏荘・内閣官房参与=29日夕、衆院第1議員会館

 内閣官房参与の小佐古敏荘東大大学院教授(放射線安全学)は29日、福島第1原発事故をめぐり「政府は法律などを軽視し、その場限りの対応で事態収束を遅らせている」と批判し、首相官邸に参与を辞任1 件する意向を伝えた。小佐古氏は3月16日に就任。原発施設と放射線に関して首相への助言を求められていた。

 政府の原発事故対応への不満が顕在化した。首相が「知恵袋」として活用するため起用した参与が抗議の辞任1 件をするのは、極めて異例だ。

 小佐古氏は29日夕、国会内で記者会見し、放射性物質の拡散を予測する緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による測定結果の公表遅れを問題視。原発作業員の緊急時被ばく線量限度を年100ミリシーベルトから年250ミリシーベルトに急きょ引き上げたことに触れ「もぐらたたき的、場当たり的な政策決定を官邸と行政機関が取り、手続きを無視している」と指摘した。

 同時に、福島県内の小学校校庭などに累積した放射性物質に関し、文部科学省が示した被ばく線量基準は「国際的な常識ではなく、行政の都合で決めている」と述べ、厳格化するよう求めた。


身内の乱首相窮地 小佐古内閣参与が辞任 (東京新聞)

2011年4月30日 06時58分

(写真)参与を辞任する意向を伝え、記者会見で涙ぐむ小佐古敏荘・内閣官房参与=29日夕、衆院第1議員会館で

 菅直人首相に新たな痛手が二十九日、加わった。自身が内閣官房参与として起用した小佐古敏荘・東大大学院教授が首相の原発事故対応を批判して辞任。休日を返上しての衆院予算委員会での答弁でも、首相は野党の追及に対し、反省の言葉をしきりに口にするなど、力がなく、首相の苦しい立場を示した。 (城島建治)

 小佐古氏の辞任は首相への抗議の意味が強く、これによって、首相のメンツは大きく傷ついたほか、ただでさえ批判が強い首相の原発対応は信頼をさらに失うことになった。

 小佐古氏は放射線の専門家。専門家が政府内で見ていた結果として、放射性物質の拡散予測のデータ公表の遅れなど、政府の対応はおかしいと認定したことになり、首相への打撃は極めて大きいといえる。小佐古氏は記者会見で「何を提言しても無意味だ」と首相をなじった。

 一方、衆院予算委員会でも首相は一連の対応などで厳しく批判された。首相を支えるはずの渡部恒三・民主党最高顧問は、首相が自民党の谷垣禎一総裁に電話で入閣要請したことに対し、「政治経験が浅い。手をついて頼めば、谷垣氏も断らなかった」と苦言。

 首相は「謙虚さに欠けるとみられがちで、おわびする」と非を認めるしかなかった。

 自民党の石破茂政調会長が首相の唐突な大連立模索を批判すると、首相は「思慮に欠けるものだったと反省している」と頭を下げた。

 被災地で首相への不満が高まっているとの指摘に対しても「被災者に心が見えないと指摘される。首相という立場の大きさに対し、十分な形で気持ちを伝えることができていない」と首相としての苦悩を口にした。

 与野党内で高まる退陣論に対し、首相は「神経質になっている」(政府関係者)という。この日の腰の低い答弁ぶりは与野党をいたずらに刺激したくないとの判断だが、震災復興、原発事故にどう対応するのか首相の思いきった考えや流動的な政局にどう対応するのかはまったく見えなかった。

(東京新聞)

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