原発のあり方について「やめる」としたのは、2人の女性知事。吉村美栄子・山形県知事は「想定を超えた危険性が内在する限り、将来的にはやめるべきだ」、嘉田由紀子・滋賀県知事は「原発から再生可能な自然エネルギーへのかじを切るような、孫子のために歴史的な判断を国や電力会社に求めていきたい」と脱原発を明確に表明。
静岡県知事は「(福島の事故は)原発の安全性を揺るがしたばかりでなく、我が国のエネルギー政策の根本的な見直しを迫っている」 15基を抱える福井県知事が国の安全基準は不十分として検査停止中の原発の再稼働を認めていないことについては、25人が支持。
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「将来の脱原発」2人 「削減」9人 知事アンケート
2011年6月16日1時50分
朝日新聞社は47都道府県の知事に原発のあり方や今後のエネルギー施策についてアンケートした。11人の知事が将来的に原発を「やめる」または「減らす」と回答する一方、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、「増やす」と答えた知事はゼロだった。「どれでもない」もしくは無回答で態度を明示しなかったのは計31人だった。
アンケートは原則として選択方式で、5月末から始め、6月10日までに文書で全員から回答があった。
原発がある13道県では、東海地震の想定震源域に中部電力浜岡原発を抱える静岡が「減らす」とし、9道県が「どれでもない」、福島、福井、鹿児島が選択肢を選ばない無回答だった。
原発のあり方について「やめる」としたのは、山形、滋賀県。原発のある福島、福井県といずれも接している。吉村美栄子・山形県知事は「想定を超えた危険性が内在する限り、将来的にはやめるべきだ」、嘉田由紀子・滋賀県知事は「原発から再生可能な自然エネルギーへのかじを切るような、孫子のために歴史的な判断を国や電力会社に求めていきたい」と、脱原発を明確に表明した。
「減らす」と答えたのは9人で、静岡のほかは、栃木、埼玉、神奈川、長野、大阪、鳥取、岡山、高知。静岡県の川勝平太知事は「(福島の事故は)原発の安全性を揺るがしたばかりでなく、我が国のエネルギー政策の根本的な見直しを迫っている」とした。
「現状維持」としたのは山梨、奈良、長崎、大分の4人だった。「地球温暖化を考慮すると、原発は不可欠で、安全性を確保した上で今後も依存せざるを得ない」(山梨)、「再生可能エネルギーの導入は必要だが、短期的には困難」(大分)などと説明している。
全国最多の15基(1基は解体中)を抱える福井県の西川一誠知事が、国の安全基準は不十分として検査で停止中の原発の再稼働を認めていないことについては、25人が支持した。福井以外の原発立地道県のうち半分の6道県が含まれており、原発の今後の運転に影響を及ぼす可能性がある。
東日本大震災で津波被害が起き、停止中の東北電力女川原発がある宮城県の村井嘉浩知事は、「国が各事業者に指示した緊急安全対策は津波対策のみ」と福井県知事と同様の指摘をしたうえで、「極限下での危機マネジメントの強化を含めた抜本的な対策を講じる必要があるが、含まれていない」と国の対策に不満をぶつけている。
定期検査中の九州電力玄海原発2、3号機の再稼働をめぐり判断が注目される佐賀県の古川康知事は「他の立地県のことについてコメントできない」としてこの質問を無回答とした。
福井の原発に消費電力の約半分を頼ってきた関西圏の6府県の知事も西川知事の姿勢を支持した。夏の電力供給に大きな影響が出かねないが、「津波だけでなく地震の揺れによる影響も考えられるため、可能な限り原因を解明し、安全に係る基準を示すことが必要」(奈良)などとしている。
原発事故の被災県である福島県の佐藤雄平知事は、「事故の収束が第一」として、この二つの質問への回答を避けた。原発のあり方について明確な回答をしなかった福井県の西川知事は「原子力に過度に依存することがないよう、エネルギーの多角化を推進することは重要」と記した。(山田理恵、荻原千明)