原発再開「白紙」に 玄海町長が同意撤回 (7月7日 西日本新聞夕刊)
九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)2、3号機の運転再開問題で、同町の岸本英雄町長は7日午前会見し、九電に対する再稼働同意の撤回を表明した。同日中に九電に伝える。新たなストレステスト(安全検査)実施を突然表明した国への不信感に加え、経済産業省主催の「佐賀県民説明番組」をめぐる「やらせメール」問題発覚で九電との信頼関係が崩れたことが理由。同県の古川康知事が今月中旬にも同意する姿勢を示していた原発再稼働は白紙に戻った。
2、3号機の再稼働について、九電は原子力安全協定を結んでいる同町と佐賀県の「同意」を前提としている。古川知事は(1)安全性の確認(2)立地町の意向(3)県議会の議論?を踏まえて判断する意向を示しているが、安全確認はストレステストの結果待ちとなり、県議会の議論は継続中。岸本町長の同意撤回で3条件がすべて満たされなくなった。
同日午前10時から町役場で記者会見に臨んだ岸本町長は「これまで国は『安全』と繰り返してきたのに、突然ストレステストを前提として再稼働すると言い出した。熟考を重ねて下した私の同意判断は無駄だったことになる」と憤り、「同意は撤回する」と言い切った。今後については「テストの結果を待って、あらためて判断したい」と述べた。
岸本町長は「やらせメール」問題にも言及。「町と九電とは今まで、一定の信頼を築いてきた」とした上で、「福島第1原発の事故後、真摯(しんし)な態度で説明してきたと思っていたのに、大事な時期に何をやっているんだ」と不信感と不満をあらわにした。「原発の安全対策で人為的ミスをなくすために人事管理の徹底を要請してきたが、これはそれ以前の問題。九電との信頼関係に亀裂が入った」と語った。
町議会は同日午前11時から原子力対策特別委員会を開き、岸本町長が同意撤回を報告した。
玄海町議会は6月17日、原発の早期運転再開を国に求める意見書を全会一致で可決。岸本町長は同月29日に海江田万里経産相が「国が責任を持って安全性を確保する」と発言したことを受けて同意を決め、7月4日に九電に伝えた。
=2011/07/07付 西日本新聞夕刊=