以下の記事にもあるように、今後、日本では放射能汚染食品による内部被曝が最大の問題となってくる。そして、チェルノブイリがそうであるように、この問題が長く続くことを覚悟しなければならない。
こうした状況の中で「放射線に弱い子どもたちをどのように守るか」ということを日本人が皆で考え、協力して子どもたちを救いたい。特に、事故発生からこれまでの被ばく量が大きい福島の子どもたちに放射能汚染のない食べ物を提供することが今、最も重要な課題だと思う。
本来なら政府や県が率先して動くべきだが、それを待っているうちに子どもたちの被曝が進行してしまう。今、動ける人が動かなければならない。微力ながら私自身も、福島から避難してきた人たちと協力して、まずは、九州の農産物を福島の子どもたちに送る取り組みを始める。
また、農業や漁業などに携わる方々の被害補償を東京電力と政府に責任をもって実行させることも忘れてはならない。
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ダイヤモンド・オンライン 食はどうなる 【第7回】 2011年7月13日 足立直樹
ほんの少し前まで、食と安全と言えば、化学物質や農薬、重金属、病原菌などによる汚染の問題でした。しかし、今、多くの人が心配するのは、なんと言っても放射能による食品の汚染ではないでしょうか。
目に見えず、匂いもない放射能は、食品がそれによって汚染されていても、私たちには気がつきようもありません。しかも、食べてすぐに中毒になったり障害が出たりするのではなく、症状が出るのはかなり時間が経ってからです。そして何年か後でガンなどの病気になったとしても、その原因を特定することはおよそ不可能でしょう。しかも狂牛病などこれまでの汚染と異なるのは、ありとあらゆる食品が汚染されている可能性があることです。
基準値を超える食品など
流通していないと考えるのは甘い
放射性物質で汚染されたものを食べると、何が問題なのでしょうか?
一般に、体内の放射性物質から被曝する内部被曝は、空気中に存在する放射性物質により身体の外側から被曝する外部被曝に比べて、遥かに影響が大きくなります。なぜなら、放射線の線量は線源からの距離の二乗に反比例するので、距離が圧倒的に短い内部被曝は影響も非常に大きいのです。
また、非常に怖いことに内部被曝の場合、放射線物質は長期間体内に溜まり続けます。このため特定の細胞などが長期にわたって被曝され、たとえ線量が少なくても癌などを誘発する危険性を高めるのです。
最近は、食品に含まれる放射性物質の量も測定されているので、規制値以下の食品を食べている分には問題はないだろう、そもそも、規制値を超えるような食品は市場には流通していないはず、そう考える方がいるとしたら、残念ながらそれは甘い考えと言わざるを得ません。
今、検査されている食品は全体のほんの一部に過ぎないからです。膨大な量の食品を一つひとつ測定できるわけもなく、あなたが手に取る食品が規制値以下であるという根拠はきわめて希薄です。
日本の「暫定規制値」は
国際的に見れば甘すぎる値
また、原発から放射され拡散した放射性物質はそのときの風向きや雨などによって、ごく局所的に降り積もることもあります。いわゆるホットスポットを作るのです。ですから、ある畑の作物で問題がなかったとしても、その地域の畑の作物が安心である保障はまったくありません。
いえ、同じ畑の中でだって、かなり大きな変動があるはずです。つまり、県単位、市町村単位で「安全」という理屈は成り立たないわけです。
そしてさらに重大な問題は、現在の日本の「暫定規制値」は、国際的に見れば甘すぎる値だということです。
たとえば現在、厚生労働省が定める食品の暫定規制値は、成人の場合、野菜類・穀類・肉・魚・卵などに含まれる放射性セシウムは500ベクレル/kgとなっています。一方、チェルノブイリ原発事故で被害を受けたベラルーシの野菜の規制値は100ベクレル/kg、ウクライナでは40ベクレル/kgとなっています。これらの基準に比べてみると、日本の基準がいかに緩いかがわかるでしょう。
いや、これは非常事態の暫定的な値だからしかたないのだという声も聞こえてきそうです。たしかに、WHOが設定した非常事態の基準値は1,000ベクレル/kgです。しかしこれは本当にそれ以外に食べるものがなく、餓死を避けるための、背に腹は代えられないという場合の値です。
事故からはもう4ヵ月も経ったわけですし、今の日本は餓死を起こすような食料不足の状態ではありません。一体いつまでこんな「暫定」規制値を使うつもりなのでしょうか。
また飲み物については、現在、日本の暫定規制値は、大人はヨウ素が1リットルあたり300ベクレル、乳児は同100ベクレルとなっています。しかし、WHOの基準はヨウ素、セシウムともに10ベクレルですし、原発排水の国際的基準はセシウムで90ベクレル、ヨウ素で40ベクレルです。
すなわち、現在の日本では、原発排水以上に放射能汚染のひどい水を乳児が飲んでよいことになっているのです。ちなみにこの日本の「暫定基準値」が決められたのは3月17日、つまり福島原発の一連の爆発が起きた後です。現状を追認するための後付けの「基準値」であると批判されても、しかたないでしょう。
自分なりの安全基準を持ち
納得できる食品のみ購入する
このように、残念ながら放射線による食品の汚染に関して、今私たちは大変厳しい状況に直面しています。国や自治体から提供される情報が、必ずしも「安全を保証する」ものではないことがこれまでの話でお分かりいただけたと思います。
では、私たちは何を選び、何を食べたらいいのでしょうか。これまでは環境負荷を低減するために、地産地消が推奨されてきましたが、今後しばらくは、海外産のものを食べた方が安全ということが「常識」になるかもしれません。
いずれにしても、自分や子どもの命と健康は自分で守るしかないということではないでしょうか。食品の安全性に対する基準を自分の中で持ち、自分が納得できる許容範囲内で購入することが重要となってきています。私たちは今まで以上に、食品の安全性を意識しなければいけない時代に突入したのです。
これからは消費者として、子どもを守る親として、食の安全に関する情報開示を行っている企業や生産者により積極的に耳を傾け、自らの行動に繋げていく必要があるでしょう。